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優れた保存安定性とmRNA導入効率を両立するLNP製剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K19418
研究種目

研究活動スタート支援

配分区分基金
審査区分 0801:薬学およびその関連分野
研究機関北海道大学

研究代表者

佐藤 みな  北海道大学, 薬学研究院, 博士研究員 (00986234)

研究期間 (年度) 2023-08-31 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードLipid nanoparticle(LNP) / 保存安定性 / イオン化脂質 / mRNA / Lipid nanoparticle
研究開始時の研究の概要

mRNAは、近年注目される創薬モダリティであり、Lipid nanoparticle(LNP)は化学的に不安定なmRNAを製剤化する技術の一つであるが、冷凍保存が必須であり安定性に課題が残る。これまで、LNPはmRNA導入効率の向上を指向し分子設計されてきたが、保存安定性に寄与する設計上のベンチマークは未だ存在しない。
そこで、本研究では冷蔵や室温で保存可能な優れた保存安定性とmRNA導入効率を両立するLNP製剤の開発を目指し、LNP機能に大きく寄与するイオン化脂質の構造や、mRNAが存在するLNP内部環境に影響する緩衝液の種類、pH等と安定性との相関を明らかにする。

研究実績の概要

当初計画に従い、①新規イオン化脂質の創出と②LNP調製法の検討を実施しつつ、③保存安定性の評価を行った。
①新規イオン化脂質の創出:これまでに、保存安定性に優れたイオン化脂質の開発に向け、頭部構造に環状アミン構造を採用した。また、遺伝子発現効率を考慮し、pKaを調節するための置換基を導入した構造を設計した。足場構造はmRNAの保持、導入能を考慮し、mRNAや脂質同士が疎水性相互作用や水素結合可能な構造を設計した。さらに、両者をリンカーでつなぐ方法を確立した。足場構造のみを変えた4種類の脂質を用いてmRNA-LNPを調製し、4℃と25℃で2ヵ月間保存安定性を評価した。その結果、上記脂質を用いたLNPは、COVID-19に対するワクチンにも用いられた脂質からなるLNPよりも、in vivoにおいて長期保存後の遺伝子発現活性が低下しにくいことがわかった。一方、頭部構造に導入した置換基が保存中に加水分解を受けること、足場構造が異なると分解を受ける割合が異なることが判明し、足場構造がLNPを構成する脂質周囲の環境に影響する可能性が示唆された。足場構造に疎水性相互作用や水素結合可能な構造を有する場合、イオン化脂質とmRNAの相互作用が強まる傾向もみられた。
②LNP調製法の検討:①で合成した脂質のうちベンチマークとなる足場構造を持つ脂質を用い、保存時緩衝液のpHが安定性に与える影響を4℃と25℃で2ヵ月間評価した。その結果、25℃ではmRNAの完全性や遺伝子発現効率はpHが低いと低下する傾向がみられた。一方、4℃ではみられないことから、LNP構造は保存中の温度により異なる経過をたどり変化する可能性が示唆された。
③保存安定性の評価は、mRNA-LNP内部のmRNAの完全性をキャピラリー電気泳動、LNPを構成するイオン化脂質の完全性をLC/ELSDで評価する系を新たに確立した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①新規イオン化脂質の創出:当初計画では、2023年度内にイオン化脂質の頭部構造の最適化の完了と足場構造の最適化の開始を予定していた。これまでに、4種の脂質を設計、合成、評価した。その結果、上記脂質を用いたLNPはin vivoにおいて長期保存後の遺伝子発現活性が低下しにくいことがわかり、コンセプトが機能していることを確認できた。さらに、頭部構造に導入した置換基が保存中に加水分解を受けることが判明し、脂質構造設計上の重要な知見が得られた。また足場構造について、今回検討した疎水性相互作用や水素結合を可能とする構造はmRNAを保持する能力が高い可能性が示唆された。一方、足場構造の違いにより置換基の分解度合が異なることから、足場構造がLNPを構成するイオン化脂質周囲の環境に影響を与える可能性が示唆され、脂質構造設計上の重要な知見が得られた。両者をリンカーでつなぐ合成方法は2023年度内に確立している。従って、頭部構造、足場構造の決定には至らなかったものの、今後の新たなイオン化脂質設計に重要な知見が得られたため、おおむね順調に進行進展していると判断した。
②LNP調製法の検討:2023年度内の検討では、①で合成した頭部構造とベンチマークとなる足場構造を持つイオン化脂質を用いた。計画通り、保存時緩衝液のpHの影響を4℃と25℃において最長2か月間評価した。2024年度は保存中の分解にも配慮した新規イオン化脂質を用いてmRNA-LNPを調製し、引き続き評価する。
③保存安定性の評価:mRNA-LNP内のmRNAの完全性をキャピラリー電気泳動、LNPを構成するカチオン性脂質の完全性をLC/ELSDで評価する系を立ち上げた。2024年度は蛍光法による微小粘度の測定や脂質周囲の親水性環境の測定、高次構造をCDスペクトルやDSCにより解析する予定であり、おおむね順調に進行進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

①新規イオン化脂質の創出:2023年度の研究実績から、イオン化脂質の頭部構造に導入した置換基が保存中に分解することが明らかとなった。保存中にイオン化脂質の構造が変化する問題を回避する対応策として、置換基を導入せずにpKaを調節可能な頭部構造を設計する必要がある。既に候補となる頭部構造の設計に着手し、今後は合成方法の確立、新たに設計した頭部構造とベンチマークとなる足場構造をもつ脂質の合成を2024年度前半の計画に組み込む。足場構造に関しては、2023年度内に足場構造がイオン化脂質とmRNA間の相互作用だけでなく、LNPを構成するイオン化脂質の周囲環境にも影響を与える可能性を示唆する重要な知見が得られた。まずは、頭部構造の有用性を評価するため、ベンチマークとなる足場構造に固定し、足場構造に関しては上記知見を詳細に分析した後、2024年度内に頭部構造と足場構造の組み合わせの最適化を目指す計画に変更する。
②LNP調製法の検討:①で合成したイオン化脂質を用いLNP調製時や保存時の緩衝液が保存安定性に与える影響を調べる。
③保存安定性の評価:2023年度の研究実績から、足場構造がLNPを構成するイオン化脂質の周囲環境に影響を与える可能性が示唆されたため、mRNA-LNPの高次構造の解明に関する評価系の確立を主軸に計画を進めていく。2024年度は蛍光法によるmRNA-LNP膜の微小粘度の測定や脂質膜周囲の親水性環境の測定、高次構造をCDスペクトルやDSCで評価する系を確立する。さらに、①で合成した新規イオン化脂質を用いたLNPについて、4℃、25℃における保存安定性を評価する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-09-11   更新日: 2024-12-25  

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