研究課題/領域番号 |
23K19421
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0801:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
栗原 崇人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 特任助教 (20982151)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | アンテナリガンド / 光反応 / 可視光 / サマリウム / ラジカル / ピナコールカップリング / 一電子還元 / リガンド |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は光エネルギーによるサマリウムの一電子還元を達成することで、サマリウム触媒による光還元反応を開発することを目的とする。2価サマリウムとして代表的なヨウ化サマリウムは穏和な一電子還元剤として汎用されているが、反応には一般に化学量論量以上のサマリウムを必要とする。そこで本研究では光吸収特性を有するサマリウム錯体をデザインすることで、光エネルギーによるサマリウム還元剤の触媒化とそれを利用した新規反応開発を行う。
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研究実績の概要 |
サマリウム触媒光還元反応を開発するため、可視光吸収部位と配位性官能基を兼ね備えた可視光吸収性アンテナリガンドをデザインし、化学合成した。合成したアンテナリガンドは可視光領域に強い吸収帯を有することを吸収スペクトルから確認している。そこでまずモデル反応としてピナコールカップリング反応を検討した。三価サマリウム塩とアンテナリガンドを触媒量添加し、種々の条件検討を行った結果、1 mol%の三価サマリウム塩とアンテナリガンド、また一当量の穏和な還元剤を添加することで、アセトフェノンのピナコールカップリング反応が円滑に進行することを見出した。そこで基質一般性を検討したところ、本反応系は種々の官能基を有するアリールケトンやアルデヒドのピナコールカップリング反応に適応可能であることを見出した。分光学的解析により、開発したアンテナリガンドがサマリウムに対して配位していること、また励起状態のリガンドと穏和な還元剤との間に一電子移動が生じていることが示唆された。さらに電気化学的解析により、開発したアンテナリガンドが穏和な還元剤存在下で三価サマリウムを還元可能な還元電位を有することを確認している。続いて本触媒系をピナコールカップリング反応以外の還元反応にも応用した。その結果、還元的な化学変換を含むいくつかの反応にも適応可能であることを見出しており、開発した可視光吸収性のアンテナリガンドとサマリウム塩が様々な還元反応を触媒する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね研究計画に基づき研究を遂行しているため。 これまでにサマリウム触媒光還元反応を達成するために必要な可視光吸収性のアンテナリガンド一種の開発に成功している。また開発したアンテナリガンドを利用したサマリウム触媒ピナコールカップリング反応を開発することにも成功している。分光学的解析や電気化学的解析を含む反応機構解析から、開発したアンテナリガンドが当初の想定通り可視光吸収性と一電子移動触媒能を有しており、サマリウム触媒光還元反応に寄与していることが示唆された。ピナコールカップリング反応の基質一般性の検討から本触媒系が幅広い官能基やアリールカルボニル基に対して適応可能であることが分かっているほか、ピナコールカップリング反応以外のいくつかの還元的変換反応の開発にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で一定の成果が得られた一方で、脂肪族カルボニル化合物や配位性官能基を含む基質に対しては適応範囲に制限が見られた。またこれまでの解析では未解明の反応機構が存在する。したがって、今後は更なるリガンドデザインや反応条件の検討による基質適応範囲の拡大や、追加の反応機構解析を行なっていく。また開発したリガンドがサマリウムに対して配位していることは分光学的解析により観測されているものの、現時点でサマリウム錯体の単離には至っていないため、溶媒やリガンドの更なる検討を行う。さらに、これまでの検討で可視光吸収性アンテナリガンドがサマリウム触媒光還元反応に有効に機能することが示唆されたため、今後開発した触媒系を様々な基質や異なるタイプの還元反応に適応していく。
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