研究課題/領域番号 |
23K19433
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0801:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
種田 靖久 岐阜薬科大学, 薬物動態学, 講師 (80985044)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ECMO / 麻薬性鎮痛薬 / 動態 / せん妄 |
研究開始時の研究の概要 |
体外膜型人工肺(ECMO)回路を用いた一時的な機械的心肺補助は、重症患者の転帰改善に寄与する医療行為であるが、薬物動態が正常時と比較し大きく変動することが報告されている。ECMOは侵襲を伴う管理方法であるため、麻薬性鎮痛薬の投与が必要となるが、薬物動態が変動した結果、過少投与となった場合には疼痛管理に問題が生じることが懸念される。不十分な疼痛管理が要因となり誘発される代表的な合併症にはせん妄がある。 本研究では、ECMO患者における麻薬性鎮痛薬の動態を明らかにし、せん妄との関連性を評価するためのパイロット研究として単施設研究を実施する。
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研究実績の概要 |
本助成の研究実施計画に示した流れに基づき、本年度は、①ECMO患者における麻薬性鎮痛薬の動態評価、②麻薬性鎮痛薬の血中濃度とせん妄との関連、を行った。 ①麻薬性鎮痛薬としてフェンタニルを第一に選択し、ECMO回路が血中濃度に与える影響の差異を検討した。すなわち、ECMO開始1および4日後にフェンタニル血中濃度を測定し、予測血中濃度との差異を比較した。予測血中濃度の算出には生理学的薬物速度論モデルを用い、フェンタニルの物性データおよび既報よりモデルの妥当性を評価した後に使用した。結果として、本研究における採血時点においてはECMO回路による影響はすでに認められないことが示された。ECMO患者におけるフェンタニル血中濃度は、ECMO回路による吸着の影響よりも肝血流低下の影響を強く受けることが明らかになった。最終的に影響因子を生理学的薬物速度論モデルに組み込むことでフェンタニル濃度予測モデルを確立した。ECMO患者へは麻薬性鎮痛薬としてフェンタニルの他にモルヒネが使用されることがある。フェンタニルと同様にモルヒネの生理学的薬物速度論モデルを作成した。ECMO患者におけるモルヒネ血中濃度におよぼす影響については現在検討中である。 ②得られたフェンタニル血中濃度とせん妄発現に因果関係が認められるか否かを確認した。しかしながら、現時点では目標とする症例数が得られておらず、有効な解析結果を得ることができていない。 その成果については、日本薬学会第144年会において「急性重症循環不全患者における血漿中フェンタニル濃度予測モデルの確立(小梶友菜、種田靖久、戸﨑快登、田中裕也、曽田翠、宇佐美英績、北市清幸)」という演題で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のとおり、①ECMO患者における麻薬性鎮痛薬の動態評価に着手できた。しかしながら、②麻薬性鎮痛薬の血中濃度とせん妄との関連については目標とする症例数が得られなかったことから有効な解析結果を得ることができなかった。そのため、麻薬性鎮痛薬の投与量と想定濃度との差異がせん妄との関連に与える影響の傾向について検討できていない。結果として、本年度は③基礎研究によるメカニズムの確認にいたることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度も当初の研究実施計画に従い、フェンタニルのみならずモルヒネについてもECMO患者における麻薬性鎮痛薬の動態評価を実施し、血中濃度の予測モデルの確立を行う。臨床研究は継続して実施し、症例数を蓄積し麻薬性鎮痛薬の血中濃度とせん妄との関連性について解析を実施する。有効な解析を実施するための十分な症例数が蓄積されなかった場合は、後方視的な症例集積も追加することで対応する予定である。 麻薬性鎮痛薬の投与量の過少による疼痛管理状況が脳内神経伝達物質の不均衡に与える影響については臨床結果を待つことなく同時並行で実施する予定である。
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