研究課題/領域番号 |
23K19436
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0801:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
唐木 文霞 北里大学, 薬学部, 助教 (80756057)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | グレリン受容体 / β-アレスチン経路 / 薬物依存症 / Gタンパク質共役受容体 / アロステリック部位 / バイアス作動薬 / β-アレスチン |
研究開始時の研究の概要 |
グレリン受容体が活性化されると, 複数のタンパク質を介したシグナルが細胞内に伝達される. このうちβ-アレスチンを介したシグナルを調節することができれば, 薬物依存症を治療できると考えられている. 本研究では, この仮説を検証するために必要なグレリン受容体のβ-アレスチン経路を選択的に調節する化合物を創製する. 具体的には, これまでに創製した化合物の各シグナル伝達経路に対する作用を評価し, ここで得たβ-アレスチン経路に対する選択性が高い化合物の構造を改変することで, 活性と選択性の向上を図る.
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研究実績の概要 |
グレリン受容体はGタンパク質共役受容体の一種であり, 作動薬が結合すると3種のGタンパク質経路とβ-アレスチン経路が活性化される. このうちβ-アレスチン経路が薬物依存症に関与する可能性が示唆されているが, 両者の関係は今のところ未解明である. その一因が, グレリン受容体のβ-アレスチン経路を選択的に調節する化合物がないことであるため, 本研究ではそのような化合物の創製を目的とした. 我々はこれまでの研究で, グレリン受容体のβ-アレスチン経路を優先的に活性化するとみられる化合物を発見している (Karaki, F. et al. ChemMedChem 2021, 16, 3463.). この化合物はグレリンの結合部位だけでなく, それとは異なるもうひとつの結合部位 (アロステリック部位)に結合する可能性がある. ここに結合する化合物を構造に基づいて設計できれば, β-アレスチン経路を選択的に調節する化合物を得られると期待できる. しかし, そのためにはアロステリック部位を特定する必要があり, 今年度はその特定に着手した. まず, 内因性作動薬であるグレリンの作用を増強・減弱する化合物を, 既に合成済みの化合物の中から探索した. この評価は, 既に構築済みの細胞内カルシウムイオン濃度を指標とする方法で行った. その結果, 単独ではカルシウムイオン濃度を変化させないものの, グレリンの応答を増強するポジティブアロステリックモジュレーターを複数見出した. 光親和性標識法 (受容体と化合物の間に光照射下で共有結合を形成する方法)でアロステリック部位を特定することを目標として, ここで見出した化合物に光反応性の部位を導入しようとした. その結果, この段階での光反応性基の導入は難しいことがわかったため, 今後は化合物の構造を最適化してから再度導入を試みる方針とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画書を提出した時点では, これまでに合成した約80種の化合物が「単独でβ-アレスチン経路を活性化するのか」および「グレリンによるβ-アレスチン経路の活性化を阻害するのか」の2点を最初に調べる予定であった. β-アレスチン経路に対する作用はTango-assay systemを用いて評価する予定であり, 細胞や蛍光試薬はこの申請課題の採択が決定して早々に購入した. しかし, この細胞を培養するのに必須で, かつ代替品を使用できないFBS (ウシ胎児血清)の入手に4ヶ月を要したため, Tango-assayはまだ実施できていない. したがって, 現在までの進捗状況を「やや遅れている」とした.
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今後の研究の推進方策 |
3月になってようやくFBSを入手できたので, これまでに合成した化合物が「単独でβ-アレスチン経路を活性化するのか」および「グレリンによるβ-アレスチン経路の活性化を阻害するのか」の2点を調べるためのTango-assayを早急に実施する. これらの化合物のGタンパク質経路への作用も評価し, β-アレスチン経路に選択性を示す化合物を選び出す. グレリン受容体が活性化されるとGq, Gi, G12/13の3種のGタンパク質経路が活性化され, 研究計画書を提出した時点ではこれらをまとめて[35S]GTPγS結合試験により評価する予定であった. しかし, 後に[35S]GTPγSが入手不可能になり, この評価は実施できなくなってしまった. したがって, 3種のGタンパク質経路のうちのGq経路しか評価できないが, Gタンパク質経路への作用は既に構築済みのカルシウムアッセイにより評価する (Karaki, F. et al. ChemMedChem 2021, 16, 3463.). ここで選択したβ-アレスチン経路に選択性を示す化合物を起点として構造活性相関研究を行い, β-アレスチン経路に対する活性および選択性の向上を図る.
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