研究課題/領域番号 |
23K19446
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0802:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 昇也 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10981079)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 骨格筋 / リン脂質 / ホスホリパーゼA2 / ミトコンドリア / リン脂質代謝 / サルコペニア |
研究開始時の研究の概要 |
リン脂質分解酵素のひとつであるPNPLA7が欠損したマウスは、ミトコンドリア変性を伴う筋障害を発症するとの予備知見を得ている。本研究ではPNPLA7が欠損した骨格筋組織や細胞を用いて、PNPLA7が関わる骨格筋代謝のフロー、およびPNPLA7とエネルギー代謝との関連を調べる。これによって、骨格筋の恒常性維持におけるPNPLA7の役割を解明し、さらには骨格筋におけるリン脂質の合成・分解サイクルの全体像を解明する。
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研究実績の概要 |
6か月齢オスのPnpla7筋特異的欠損マウス骨格筋のリン脂質、ホスファチジルコリン(PC)やホスファチジルエタノールアミンを測定して、全身欠損マウスと同様の変化が起こることを確認した。さらに、Pnpla7全身欠損と筋特異的欠損マウスの骨格筋で、コントロールマウスよりもカルジオリピンが減少している、特にDHAを含むカルジオリピンが大きく減少していることを見出した。また、Pnpla8全身欠損マウスの骨格筋のリン脂質を解析したが、Pnpla7欠損マウスと類似した結果はみられなかった。 Pnpla7欠損マウスの大腿四頭筋ではDHAを含むPC分子種が減少することを見出している。そこでDHAなどのω-3脂肪酸を多く含むエサを、Pnpla7筋特異的欠損マウスに6週齢から6か月齢まで与えたが、組織学的な異常(中心核をもつ筋線維の出現)は抑制されなかった。 PNPLA7とエネルギー代謝との関連について、マウスの骨格筋から採取した初代培養筋細胞(primary myoblasts)にmTOR阻害剤であるTorin1を最終濃度 250 nMで添加することで、Pnpla7のmRNA発現が増加した。 PNPLA7の局在について、3か月齢のコントロールマウスで骨格筋部位ごとにPnpla7のmRNA発現をqPCRで調べると、遅筋線維の割合が多いヒラメ筋では大腿四頭筋、腓腹筋、前脛骨筋よりもPnpla7の発現が低い傾向がみられた。筋線維ごとの局在については、Type I, Type IIA, Type IIB線維の抗体を購入して、骨格筋の組織切片の染色を行うところである。 また、初代培養による方法では大量の細胞を準備するのは難しいため、CRISPR-Cas9システムによるPnpla7欠損C2C12細胞株を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フラックスアナライザーによる代謝解析についてはマウス骨格筋から採取した初代培養細胞での解析を試みているが、コントロールの細胞の間でも測定結果が安定していない。細胞のプレートへの接着が悪いことが原因と考えており、安定した結果が得られるように培地にFBSを加えるなど条件検討を行う。 PNPLA7の免疫染色については、市販の抗体でマウス骨格筋切片の染色を試みているが、Western Blottingで使用できている抗体を用いているものの免疫染色ではうまく染色されていない。
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今後の研究の推進方策 |
初代培養細胞だけでなくPnpla7欠損C2C12細胞を用いて、in vitroの解析を行う。重水素標識体を用いたリン脂質代謝フローの解析や、ミトコンドリア呼吸の評価、Torin1やAICARを投与した際のPnpla7のタンパク発現変化や機能評価などを行う。Pnpla7欠損細胞とコントロールでミトコンドリア呼吸などに差が見られれば、Pnpla7の代謝産物(GPC、コリン、G3Pなど)を補うことでレスキューされるかの検討を行う。
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