研究課題/領域番号 |
23K19450
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0802:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒木 祥文 京都大学, 農学研究科, 特定研究員 (70986603)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | Structural coloration / Polymorphism / QTL analysis / RNA interference |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、砂浜の砂色に近似した白や黒の体色を持つ海浜性のゾウムシが有する、新たな体色調節制御機構の分子基盤を解明することを目的とする。申請者は独自の電子顕微鏡観察によって、ゾウムシ体表の鱗片内の構造色発色性の3次元結晶構造(フォトニック結晶)に脂質が浸潤することで体色調節がなされることを発見した。この発見の背景にある生理遺伝学的基盤を、遺伝学的交雑実験、ゲノム配列解析、RNA干渉による遺伝子機能阻害実験によって解明する。本研究によって、構造色に基づく体色を化学的な生理制御機構によって調節するという新たな体色制御の遺伝学的基盤とその進化機構を明らかとする。
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研究実績の概要 |
生物の体色は多様性に富んでおり、色素化合物による呈色と、微細立体構造による構造色の組み合わせによってもたらされている。しかし、色素化合物による着色の分子的基盤については多くの知見が蓄積しつつある一方、構造色発色制御の分子的基盤についてはほとんど明らかになっておらず、構造色に基づく体色の進化史や多様性の創出機構の解明は進んでいない。申請者らの研究グループは、海浜性ゾウムシの一種であるスナムグリヒョウタンゾウムシScepticus tigrinusの体色が、体表のフォトニック結晶構造が呈する構造色に由来する白色と、ワックスの浸潤による結晶内の屈折率の調節により生じる黒色の組合せによって制御されていることを見出した。そこで申請者は、量的遺伝子座解析および遺伝子発現量比較解析による構造色制御に関与している可能性の高い候補遺伝子の同定、およびRNA干渉法による遺伝子機能解析により、構造色による発色を操作しているワックスの分泌を制御する遺伝子を決定し、これまで未報告の構造色の制御機構の分子基盤を明らかにすることを目的に、本研究を開始した。 令和5年度は、野生集団より採集した個体から研究の基盤となる各色彩型の純系系統、および色彩型間の交雑系統の作出を行うため、研究グループが独自に開発した人工飼料による飼育系による累代飼育を行った。その結果、親世代となるG0世代、およびその交配による純系第1世代、交雑F1世代の作出に成功した。飼育系の詳細と課題については未公表であったため、当該年度の実施成績も合わせ、学会においてポスター発表形式で公表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度末から令和6年度初頭には交雑F2世代を確保し、ゲノム抽出および解析を開始できる見込みであったが、 ①幼虫期の成長速度や性成熟までの期間の個体差が非常に大きく、不安定であること ②24年1月から3月にかけて、純系第1世代と雑種F1世代が繁殖行動を中断し、当該期間の累代が停止したこと ③幼虫期の死亡率が想定を上回っており、成熟成虫の再生産が予想通り進んでいないこと などの諸条件が重複し、目標の世代の作出および必要十分な個体数の確保に至っていないため、ゲノム解析が予定通り開始できていない。
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今後の研究の推進方策 |
生植物を用いた従来型の飼育系による純系系統の累代および交雑F1・F2世代の作出を並行して試み、必要十分な数の検体を改めて確保する。令和6年度初頭に予定していたQTL解析および遺伝子発現量比較解析については、やや予定を遅らせて年度中頃を目途に実施する。また、未公表のままとなっていたスナムグリヒョウタンゾウムの参照ゲノムについて、新規に複数のライフステージよりRNA-seqによる転写産物の配列を決定して詳細な遺伝子アノテーションを行い、その結果を近縁種及び他の甲虫類との比較を行ったうえで年度内に論文化し、公表することを計画している。
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