研究課題/領域番号 |
23K19451
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0802:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金 春奐 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (40981600)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | トランスポーター / 阻害薬 / リガンド結合構造 / 結合滞留時間 / PK-PD |
研究開始時の研究の概要 |
アミノ酸輸送体(トランスポーター)は、細胞代謝のリプログラミングに寄与する。トランスポーターとリガンドの新たに見出した相互作用に最適化した化合物群を創製したところ、結合滞留時間が長く、化合物洗浄後も強い抑制効果が持続する阻害薬となった。さらに、この持続抑制効果が薬効の強さと相関し薬効に寄与することが明らかになった。本研究は、異なる特性を示す化合物間の比較に基づき、持続抑制効果の背景にある結合ポケットとの相互作用の構造基盤を明らかにする。同時に持続抑制効果の薬効発現における意義を、細胞内情報伝達系およびin vivoでの保持時間と薬物効果との関連から明らかにする。
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研究実績の概要 |
アミノ酸輸送体(トランスポーター)LAT1(SLC7A5)へのリガンド結合構造に基づいて新たに見出した化合物結合ポケットに結合する化合物をデザインし最適化した化合物を創製したが、その化合物は、化合物暴露・洗浄後も阻害活性が長時間に渡り持続するという性質を有していた。この「持続抑制効果」は、抗腫瘍薬としては、有用な性質である。持続抑制効果の背景にある構造基盤を明らかにし、さらに持続抑制効果の薬効発現における意義を明らかにするため、令和5年度は以下の検討を行った。 持続抑制効果を担うリガントと結合ポケットの相互作用の構造基盤の解析に関しては、すでにクライオ電顕解析で得られている最適化阻害薬の結合ポケットへの結合構造を用いて、新規阻害薬と結合ポケットとの個々の相互作用を詳細に検討しつつ、同時にドッキングシミュレーションを行い、持続抑制効果を担うアミノ酸残基を洗い出した。新規阻害薬の側鎖と相互作用するアミノ酸残基のうち、持続抑制効果と関わると想定される重要な相互作用を見出し、その部位特異的変異体をデザインして、作製している。 持続抑制効果の細胞機能への影響の検討については、化合物群の持続抑制効果と細胞増殖抑制効果の相関解析を行い、有意な相関をもって持続抑制効果が細胞増殖抑制効果に寄与することを実証した。また、これまで同定してきたアミノ酸シグナル経路について検討を行い、持続抑制効果の強い化合物は、シグナル経路への作用も持続することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、研究の立ち上げの年度にあたり、探索的な検討を中心に行った。強い持続抑制効果を示す新規阻害薬とLAT1に新たに見出した化合物結合ポケットとの結合について、すでにクライオ電顕解析で得られている結合構造において個々の相互作用を詳細に検討し、同時にドッキングシミュレーションを行い、持続抑制効果を担うアミノ酸残基を洗い出すことができた。その意義の実証のための部位特異的変異体も作製している。また、持続抑制効果の細胞機能への影響の検討についても、化合物群の持続抑制効果と細胞増殖抑制効果の相関解析を行い、有意な相関をもって持続抑制効果が細胞増殖抑制効果に寄与することを実証できている。これまで同定してきたアミノ酸シグナル経路について、持続抑制効果は、シグナル経路への持続的な作用の背景となることも明らかにできており、持続抑制効果の背景にある構造基盤を明らかにし、持続抑制効果の薬効発現における意義を明らかにするために、おおむね順調に研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の探索的検討のあとを受けて、令和6年度は、以下の検討を行う。 持続抑制効果を担うリガントと結合ポケットの相互作用の構造基盤の解析については、令和5年度にすでに最適化阻害薬のLAT1結合構造をもとに持続抑制効果に関わるアミノ酸残基を特定しているが、令和6年度は、同一の結合ポケットに結合しつつ、わずかな構造上の違いで持続抑制効果が大きく異なる化合物群について、クライオ電顕解析によりこれらの標的トランスポーターへの結合構造を取得し、これらの結合構造の比較に基づき、両者で異なる相互作用に関わると予想されるアミノ酸残基を特定し、令和5年度の結果を検証する。さらに、当該アミノ酸残基の部位特異的変異体の解析を行い、その持続抑制効果における意義を検証する。変異導入により、持続抑制効果の高い化合物の持続抑制効果を低下させ、持続抑制効果の低い化合物には影響しないことを確認し、これに基づき、持続抑制効果を担う相互作用を結論する。 持続抑制効果の細胞機能への影響の検討については、持続抑制効果の違いが細胞機能への影響においてどのような差異となって現れてくるかを明らかにするために、網羅的シグナル解析により、持続抑制効果の異なる化合物の効果を比較する。 さらに、in vivoでの持続抑制効果の意義の検討については、持続抑制効果の高い化合物と低い化合物を単回静注し、標的に結合する化合物量と血中濃度の時間推移を比較することで、血中濃度が低下しても標的に化合物が残存するための結合滞留時間/持続抑制効果の重要性を検証する。また、前記の病態モデルにおいて、持続抑制効果の高い化合物と低い化合物を2週間連日静注して抗腫瘍効果を比較し、血中濃度推移を参照しながら、薬効発現における持続抑制効果の重要性を検証する。
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