研究課題/領域番号 |
23K19455
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0802:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
今戸 瑛二 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (90981176)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / バルプロ酸ナトリウム / アロディニア / TRPV1 / ミクログリア |
研究開始時の研究の概要 |
自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder: ASD)は、社会性やコミュニケーションの障害に加え、感覚刺激に対する感受性の増大がみられる。申請者はこれまでに周産期環境要因に基づくASDモデルマウスを作製し、本マウスの幼若期から痛覚過敏や非侵害性刺激に対する異痛(アロディニア)がみられること、これらの痛覚感受性変化に脊髄のミクログリアが関与することを明らかにした。またカプサイシン受容体として知られるTRPV1のアンタゴニストが、アロディニアと社会性行動をともに改善させることを発見した。 本研究では疼痛制御の面から、発達障害の分子病態基盤の解明と新たな治療法の探索を目指す。
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研究実績の概要 |
申請者は、疫学研究などにより明らかになった胎生期における抗てんかん薬バルプロ酸ナトリウム服用による発達障害の発症リスクに着目し、これまでにバルプロ酸ナトリウムを用いたASD様モデルマウスを作製し、その解析を進めてきた。その結果、胎生12.5日目にバルプロ酸を暴露した仔マウスが、痛覚過敏やアロディニアを示すことを見出し、痛覚感受性と環境要因との関連を示唆した。本研究では疼痛制御の面から、発達障害発症の分子基盤の解明と新たな治療法の開発を目指すことを目的とする。 ①痛覚異常のメカニズムに関する行動学的解析、痛覚伝導路・炎症性細胞の解析 胎仔期バルプロ酸投与マウスの痛覚感受性変化および社会性行動障害の発症時期、性差を関連付けて明らかにし、本モデルの疼痛異常の特徴付けを行うことで、発症メカニズムの解明と、候補薬物の処置の時期や期間などの介入方法についての知見を得る。胎仔期バルプロ酸投与マウスにおいて、社会性行動や疼痛制御に関わる脳領域(体性感覚皮質・側坐核・中脳 水道周囲灰白質など)と脊髄での神経細胞の成熟や、マクロファージ、ミクログリアといった炎症反応に関わる細胞の変容解析を進めている。 初年度の研究では胎生期のHDAC阻害による痛覚関連行動への影響とミクログリアの関与について検討を行った。その結果、胎生期のHDAC阻害が持続的なアロディニアを引き起こし、その発症には少なくとも脊髄ミクログリアの活性化が関与していることが示唆された。以上によりVPAによるASD様症状の病態分子基盤の一端を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎生期のHDAC阻害が持続的なアロディニアを引き起こすことを見いだし、VPAによるASD様症状の病態分子基盤の一端を解明したため。
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今後の研究の推進方策 |
痛覚異常のメカニズムに関する行動学的解析、痛覚伝導路・炎症性細胞の解析やTRPV1アンタゴニスト、プリン受容体アンタゴニスト、弱オピオイド化合物、セロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、イオンチャネル阻害薬の作用解析を行う予定である。
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