研究課題/領域番号 |
23K19480
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0803:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
樋口 牧郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (10980451)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 低分子化合物 / ケミカルバイオロジー / アロステリック効果 / ATP競合阻害薬 / 逆説的活性化 / JAK |
研究開始時の研究の概要 |
近年、JAK(ヤヌスキナーゼ)の阻害薬が関節リウマチなどに対して画期的な治療効果を示すことが明らかになったが、阻害薬の免疫抑制効果以外に起因すると考えられる副作用が報告されている。JAK阻害薬と同様にATP競合的に作用するチロシンキナーゼ阻害薬が標的分子を逆説的に活性化することで起こる副作用が知られている。本研究では、事前解析でJAK阻害薬がJAKを逆説的に活性化する可能性が示唆されたことを受け、その活性制御機序を解明することを目的とする。 本研究の成果は、予期せぬ標的分子の活性化による副作用を回避するような既存のJAK阻害薬の適応と新たなJAK阻害薬の創出につながるものである。
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研究実績の概要 |
JAKの活性化は関節リウマチなどの自己免疫疾患から、骨髄増殖性腫瘍・白血病まで報告 されており、近年においては自己免疫疾患の治療にJAK阻害薬が用いられている。しかし、過去の研究において阻害薬は標的分子の構造を意図せず活性化させてしまうこと、特に薬剤抵抗性変異を有する標的分子であれば逆説的活性が顕著であることを明らかにしている。本研究では、JAK1阻害薬においても薬剤抵抗性変異を有するJAK1が逆説的に活性化するかどうか検証を行った。 本年度において、複数のJAK1点変異体がJAK1阻害薬により逆説的に活性化されること、下流のSTATシグナル伝達も活性化することが明らかになった。野生型JAK1ではJAK1阻害薬による逆説的活性化が起きないことから、逆説的活性化メカニズムを有している可能性を示唆した結果となった。また、JAK1阻害薬がJAK1の構造を変化させるかを検証するために、Alphafold2を利用してFRETプローブを作成した。JAK1の構造に関しては不明な点が多く、今回作成したFRETプローブによってJAK1阻害薬が及ぼすJAK1の構造に対する影響が彰機になることが期待される。 本研究で、今までの研究でキナーゼ阻害薬が標的分子を予期せず活性化することで、JAK阻害薬が引き起こすJAK1の逆説的活性化のメカニズムを解明することを目的とする。本研究の成果は自己免疫疾患におけるより効果的な阻害薬の運用方法と新規阻害薬・治療法の開発につながる点において大きな社会的意義を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既報のJAK1の薬剤抵抗性点変異体と、及び他のJAKファミリーの薬剤抵抗性点変異の相同的点変異を導入したJAK1点変異体を作成した。上記のJAK1点変異体をHEK293細胞株に導入し、JAK1阻害薬を投与した。JAK1点変異体群の中で、複数のF958の点変異体JAK1のリン酸化が阻害薬の投与により上昇することを発見した。また、JAK1-F958点変異体発現下では、JAK1阻害薬がSTAT1のリン酸化を増強させることも確認した。pan-JAK阻害薬の投与ではSTATのリン酸化が上昇しないことから、JAK阻害薬による逆説的STAT1活性化にはパートナーとなるJAKファミリーの活性が必要であること、選択的JAK阻害薬でなければ逆説的活性化が起きないことが明らかになった。また、HEK293細胞株にJAK1を発現させるとSTAT1のベースラインの活性が顕著に上昇することから、HEK293- JAK1ノックアウト細胞株を作成し、より詳細なJAK1-F958点変異体の評価を行う予定である。 JAK1阻害薬がJAK1の自己抑制を解除するかを検証するため、Alphafold2を用いてJAK1のPK-TKドメインを含んだFRETプローブを作成した。このFRETプローブは自己抑制状態でFRETを引き起こし、活性化状態ではFRETが発生しないデザインであり、FRETプローブを発現させたHEK293細胞溶解液でFRETが発生することを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
複数の薬剤抵抗性JAK1点変異体を発見しているが、点変異によって発現量やベースラインの活性が異なることがすでに報告されている。作成したHEK293-JAK1ノックアウト細胞株を用いて各薬剤抵抗性JAK1点変異体を内在性レベルで発現させ、発現量やベースラインの活性、JAK1阻害薬を投与した際のJAK及びSTATのリン酸化を検証し、最適な点変異をCrispr-Cas9ノックインによりHEK293細胞に導入する予定である。 また、薬剤抵抗性JAK1点変異体に関しては細胞発現時のEC50は報告されているが、in vitroにおける詳細なプロファイリングがされていない。JAK1のキナーゼドメインを用いたin vitro キナーゼアッセイにより、野生型と比較してどの程度の薬剤抵抗性を示すのか、点変異によるキナーゼ活性の差異は存在するかの比較検討を行う予定である。 作成したFRETプローブはサイトカインの刺激では構造変化を引き起こさないため、FRETプローブが正常に作動するかを確認するため、恒常活性型点変異を導入したFRETプローブがFRETを引き起こさないかを検証する。現在は細胞溶解液中での反応であるので、タンパク質精製を行い、JAK1阻害薬への反応性を検証する。
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