研究課題/領域番号 |
23K19486
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0803:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
中村 浩之 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30832357)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | シェーグレン症候群 / インターフェロン / LAMP3 / TLR7 / TLR4 / 自己免疫疾患 / 唾液腺 / リソソーム |
研究開始時の研究の概要 |
シェーグレン症候群は唾液腺や涙腺などの外分泌腺を首座とした全身性の自己免疫性疾患である。この病気が発症する詳しいメカニズムは分かっておらず、現状では対症的な治療に限られている。近年の研究によって、唾液腺上皮細胞におけるLAMP3の異所性発現がシェーグレン症候群における唾液腺炎と自己免疫応答の一因になっていることが分かった。本研究では、シェーグレン症候群患者の臨床情報および唾液腺検体の解析と唾液腺上皮細胞株やモデルマウスを用いた基礎実験から、唾液腺上皮の異所性LAMP3発現が局所の唾液線炎を越えて全身性自己免疫疾患を引き起こす分子メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
先行研究において研究者らは、ウイルスに対する過剰な1型インターフェロン応答の結果、シェーグレン症候群患者の唾液腺上皮細胞にlysosome-associated membrane protein 3 (LAMP3) が異所性発現し、唾液腺上皮細胞のアポトーシスやダメージ関連分子パターンの放出を促進することが明らかとした。 本研究ではさらに、唾液腺上皮細胞にLAMP3を強制発現させたとき1型インターフェロンであるIFNαとIFNβの発現が亢進することを明らかにした。一方で、IL-1、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインやCCL3、CCL4、CCL5、CX3CL1などのケモカインの産生増加は認めなかった。またLAMP3を強制発現させた唾液腺上皮細胞では、TLR7の異所性発現が誘導されており、マウスの唾液腺にLAMP3を過剰発現させた動物実験においても同様のTLR7の異所性発現が確認された。またLAMP3を過剰発現させたマウスの唾液腺では1型インターフェロン応答が増強しているが、それはTLR7のノックアウトによって是正された。すなわちLAMP3はTLR7の発現誘導を介して唾液腺上皮細胞の1型インターフェロン産生を促進していると考えられた。 さらにLAMP3発現唾液腺上皮細胞の培養上清で単球系細胞株のTHP-1を刺激したとき、THP-1のIFNβ発現が亢進がした。一方でTHP-1をTLR4シグナルの阻害剤であるTAK-242で前処理したときIFNβの発現亢進は生じなかった。そのためLAMP3発現唾液腺上皮細胞は、TLR4アゴニストとなりうるダメージ関連分子パターンの放出を介して、単球のIFNβ産生を促進していると考えられた。 以上から唾液腺上皮の異所性LAMP3発現は1型インターフェロン産生を増幅し、全身性自己免疫疾患の発症に寄与していると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際共同研究機関である米国国立歯科・頭蓋顔面研究所との協力、業務分担によって研究が円滑に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト唾液腺のbulkおよびsingle cell RNA-sequencing dataにおいて、腺限局型のシェーグレン症候群、全身性シェーグレン患者、また他の自己免疫疾患を合併したシェーグレン症候群(二次性シェーグレン症候群)において、それぞれの遺伝子発現レベルを網羅的に比較し、LAMP3以外に全身性自己免疫疾患への進展に関連しうる分子の候補をスクリーニングする。その候補分子が病態に与える影響やLAMP3との相互作用などを解析し、唾液腺上皮の異常から免疫寛容の破綻が生じるメカニズムをさらに明らかにしていく。
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