研究課題/領域番号 |
23K19502
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0901:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中野 重治 京都大学, 医学研究科, 医員 (50980439)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 肝発癌 / ミスマッチ修復異常 / MSH2 / トランスクリプトーム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、DNAミスマッチ修復タンパクの一つであるMSH2が肝癌組織で発現変動していることに着目し、炎症性肝発癌過程におけるMSH2の役割を明らかにすることを目的とする。Msh2を肝細胞特異的に欠損させた遺伝子改変マウスに慢性肝炎刺激を加えることにより、DNAミスマッチ修復機能を欠損(dMMR)した肝腫瘍を発生する独自のモデルを樹立し、網羅的なゲノム・トランスクリプトーム解析を通じてDNAミスマッチ修復機構の異常が肝発癌過程に及ぼす影響について解析する。さらにヒト肝癌細胞を用いた実験により機能解析を行うことで、肝癌のバイオマーカーの同定や新規治療法の開発を目指していく。
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研究実績の概要 |
我々は、DNAミスマッチ修復系の欠損(dMMR)によって起こる、マイクロサテライト不安定性は肝細胞癌(HCC)では稀であるが、dMMR関連の変異シグネチャーがHCCの進行とともに増加することを見出した。一方、TCGAデータベースの遺伝子発現データから、DNAミスマッチ修復遺伝子、特にMSH2がHCC組織で発現上昇していることが明らかになった。本研究では、炎症関連肝発癌におけるMSH2の役割を明らかにするため、肝細胞特異的Msh2欠損(Msh2 KO)モデルマウスを作製し、0.02%チオアセトアミドで炎症刺激を行った。Msh2 KOマウスはコントロールよりも高い割合で肝腫瘍を発症した(60%対24%)。Msh2 KO腫瘍ではdMMRに関連するシグネチャーを持つ変異がコントロールよりも多く検出されたが、共通のドライバー変異は同定されなかった。肝組織と肝癌細胞株を用いたトランスクリプトーム解析により、MSH2の欠損/減少がE2F2のアップレギュレーションとCPT1Aのダウンレギュレーションを引き起こすことが明らかになった。さらに、MSH2をサイレンシングすると、細胞周期のS期にある細胞の割合が増加した。さらに、MSH2サイレンシングによるDNA損傷応答関連分子について免疫染色で探索したところ、DNA二重鎖切断マーカーであるγH2AXの発現が増加した。また、肝癌細胞株にUV照射してDNA二重鎖切断を誘導しMSH2をサイレンシングすると、DNA損傷応答であるATM/CHK2経路が抑制された。これらのデータから、MSH2はDNA修復だけでなく、DNA損傷応答を通じて細胞周期の制御をおこなって肝細胞癌の進行を抑制することが示唆された。今後、細胞周期の脂質代謝の制御を切り口とした新たな治療法の開発につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験動物(マウス)はすでに保有していたことから、すみやかに実験開始できた。慢性炎症刺激の方法・条件についてもすでに当グループで確立しており、滞りなくマウス実験を進めることができた。サンプル回収からDNA、RNA抽出後のシーケンスは検査会社へ依頼して行ったため、少し時間がかかったが、問題なく進めることができた。ドランスクリプトームの結果の解釈に難渋したが、比較統合解析を行うことで、MSH2が制御し得る遺伝子群、分子の同定を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更なく、計画通りに進めていく予定である。新しく抗体の購入が必要であるが、問題なく使用できれば予定通りに遂行することは可能と考える。
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