研究課題/領域番号 |
23K19505
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0901:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
孟 思昆 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教 (50977204)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | CAR-T細胞療法 / 固形がん / mRNAワクチン / CAR-T細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
上皮性悪性腫瘍・軟部組織腫瘍に対し、腫瘍微小環境で最も重要である腫瘍随伴線維芽細胞(Cancer associated fibroblast, CAF)を標的にする「FAP-CARを搭載したCD5/LNP」を用いて前臨床薬効薬理試験を行う。さらに安全性試験の実施とProof-of-Concept(POC)の取得を通じ、mRNAワクチンCAR-T細胞療法が固形腫瘍へ応用可能性であるか、明らかにする。
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研究実績の概要 |
近年の腫瘍免疫療法の進歩により、造血器腫瘍の一部ではキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法が奏功し、患者の予後が改善した。一方で、固形腫瘍に対しては、CAR-T細胞の増殖負荷と疲弊化によるオン/オフターゲット比が低く、治療効果が乏しい。本研究では、造血器腫瘍で劇的に奏功するキメラ受容体T(CAR-T)細胞療法をRNAワクチン技術の応用により固形がんで「初めて」の実用化を目指し、有効性と安全性を最適化する道を拓いた。この療法は特に、がん関連線維芽細胞(CAF)に高発現する線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的としている。FAPは、腫瘍微小環境(TME)の改造を促進し、免疫細胞の浸潤と機能を向上させることで、強力な抗腫瘍効果を発揮する。本研究により、mRNAワクチンを基くCAR-T細胞療法が、大腸がんおよび乳がんのマウスモデルにおいて顕著的な治療効果を示したことが確認された。さらに、化学療法剤および免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用により、腫瘍をエラディケーションし、70日以上無再発ことになった。その後、同じがん細胞株を再度皮下注射(再チャレンジ)しても腫瘍は生着せず、免疫記憶ができていた。今まで得られた証拠は、一過性のCAR-T細胞を生成する制御可能なmRNAワクチンベースの戦略でTMEを標的とすることが、満足のいく効率を示し、様々ながんにおいてCAR-T細胞療法の適用性と受容性を高める重要な可能性を持つことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、CAR-T細胞療法とmRNAワクチン複数の革新的な技術と戦略的なアプローチを用いて、がんのマウスモデルにおいて、試行錯誤の末に、腫瘍をエラディケーションすることを達成した。その後、再チャレンジ実験により、免疫記憶ができていることが示唆され、強くて長期的な抗腫瘍効果を示した。また、本研究でのCAR-T細胞は、mRNAを内包するLNPを通して作成され、その発現が一過性で核内にインテグレーションしないので、安全性を確保できる。さらに、mRNAワクチンの製造コストは非常に低く、複数の投与を行うことが可能であり、これまでの実験段階では、その実践が行われている。腫瘍を完全に除去することで、上記のすべての利点が実現するので、想像以上にうまく進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、実験の大きな方向性がすでに決まっており、将来的には既存の研究成果をもとにして、システム的に実験データを統合し、それに基づいて実験パラメータを調整し、治療メカニズムをさらに明らかにし、治療の詳細を最適化する。特に、その治療法の安全性と効果を詳細に評価し、長期免疫記憶の形成と維持メカニズムを分析する必要がある。また、その治療法の適用範囲を広げるために、他の固形がんタイプでの治癒可能性についてもさらに研究することが求められる。これは、異なる腫瘍特性を持つがんモデルを使用して実験することで効果的に達成できる。前臨床の薬効薬理試験や安全性試験の実施、およびProof-of-Concept(POC)の取得を通じて、この研究はさらに発展し、がん治療の新たな標準としての地位を確立する。
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