研究課題/領域番号 |
23K19527
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0901:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中橋 宏充 筑波大学, 附属病院, 病院助教 (30983259)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 膵癌 / オルガノイド / 低酸素 / 腫瘍内不均一性 |
研究開始時の研究の概要 |
膵臓癌は難治性癌の代表であり、5年生存率は依然として5-7%に留まり、社会問題化している。難治性の原因として手術や化学療法に対する耐性の結果おこる再発である。そのため、膵臓癌に対する新しい治療法や発見方法の確立が急務である。本研究の目的は膵癌におけるより悪性度の高い細胞の培養方法の確立、治療法の探索である。低酸素という特徴的な環境を用いた培養方法を用いることで、より効率的に悪性度の高い細胞を抽出し、解析することで新しい治療法の開発につながるものと考えている。ひいては患者由来の細胞を用いるため、より個人の性質に即した治療法の選別の一助になるものと信じている。
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研究実績の概要 |
難治性癌の代表である膵臓癌は、新生血管が少なく、間質組織の異常増生の結果、低酸素環境(O2 0.7%)にある。この低酸素微小環境に順応した細胞が膵癌の悪性形質の責任細胞だと考え、膵癌の生体内環境に近い低酸素環境(O2 1.0%)で膵癌オルガノイドを樹立した所、形態学的には充実性で、E-cadherin(±)、 Vimentin(++)、5-FUに耐性を示す高悪性度のクローンを得た。これは、同一膵癌患者からO2 20%環境下で樹立したクローンとは全く逆の性質であり、本来我々がターゲットとすべき膵癌の悪性形質の責任細胞を低酸素ニッチで選択的に得る事に成功した事を意味する。本研究では、複数の膵癌患者組織を高酸素ニッチと低酸素ニッチで3Dオルガノイド樹立したライブラリーを構築し、in vitro、in vivo研究における、網羅的な遺伝子、タンパク、細胞表面糖鎖発現の違いを把握し、低酸素環境に順応した膵癌の悪性形質の責任細胞の本質に迫ることを目的としている。 研究開始後から、膵癌患者計12症例から低酸素、通常酸素下でオルガノイドをそれぞれ樹立し、計24種類のオルガノイド樹立に成功し、タンパク、RNAの抽出を終えている。 さらにそれぞれのオルガノイドに対してゲムシタビンや5-FUを用いた薬剤感受性試験を行い、現在結果を解析中である。 まだ計24種類のオルガノイドのうち、12種類のオルガノイドのみをRNA解析を行っているが、残りのサンプルに関しては今後解析する予定である。 その結果から低酸素耐性を持つ膵癌細胞の分子メカニズム、ひいては早期発見、治療ターゲットとなる分子の同定を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ヒト膵臓癌の3Dオルガノイド技術を用いて膵癌の真の悪性形質となる細胞の培養、解析を行うことである。そのために、ヒト膵癌3Dオルガノイドを低酸素、通常酸素下で樹立、培養し、低酸素下で得られたヒト膵癌3Dオルガノイドライブラリーを作成し、これを解析することで悪性形質を担う細胞特異的な遺伝子発現、糖鎖の解析を行う。低酸素、通常酸素の樹立、培養の症例数が集まれば、同一腫瘍内における悪性度に関わる因子、ならびに効果的な治療法の発見にとどまらず、今後のオルガノイド技術における革新的なプラットフォームとしてすべての研究につながる可能性を秘めている。その中で、我々はすでに低酸素、通常酸素いずれの環境下においてもオルガノイドを安定的に樹立できており、その解析にすすめており、技術的に安定している状況である。 まだRNA解析を終えていない症例はあるが、今後すべての症例の解析が進めば、低酸素における膵癌の悪性形質の本質に迫ることができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらなる症例の蓄積とともに、まだ未解析のサンプルに対するRNA解析を施行する。 得られた結果を統合し、低酸素下オルガノイド、通常酸素下オルガノイドのそれぞれに特異的な分子メカニズムの解明、低酸素が及ぼす影響の解析を行う。 また昨今普及している空間トランスクリプトーム解析を併用することで、オルガノイドのoriginである細胞、組織の同定、低酸素状態における組織とオルガノイドとの整合性を評価する予定である。
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