研究課題/領域番号 |
23K19528
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0901:腫瘍学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 周 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40980454)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 腸上皮化生 / 胃腫瘍 / 病理 |
研究開始時の研究の概要 |
胃腫瘍発生過程において,腸上皮化生は腫瘍発生母地となる変化なのか,あるいは単なる傍腫瘍病変に過ぎないのか,コンセンサスは得られていない.本研究では,胃粘膜の腸型化自体が胃腫瘍発生に与える影響について,家族性大腸腺腫症の胃腫瘍をモデルとして検討する.ヒト病理組織検体の評価や,マウスモデルを用いた遺伝子発現解析,アクセシブルクロマチン領域の解析を行う.腸型化した胃粘膜からの腫瘍発生において亢進する経路や機能する分子の同定を目指す.
|
研究実績の概要 |
胃腫瘍発生過程において,腸上皮化生は腫瘍発生母地となる変化なのか,あるいは単なる傍腫瘍病変に過ぎないのか,コンセンサスは得られていない.本研究では,胃粘膜の腸型化自体が胃腫瘍発生に与える影響について検討する目的で行った. 令和5年度は,モデルマウスを用いたRNAシーケンスによる遺伝子発現解析を進めた.胃に腫瘍を形成するモデルとして,家族性大腸腺腫症モデルマウスを使用し,腸上皮化生モデルには,胃の上皮に腸上皮のマスターレギュレーターとなる転写因子を発現させるマウスを使用した.腸上皮化生の有無や胃腫瘍形成の有無の異なるマウスの胃組織から,凍結保存用の検体を採取し,RNAシーケンスを実施した.その結果,正常胃粘膜から腸上皮化生,腸型胃腫瘍と段階的に発現上昇する遺伝子のリストを取得した.また,取得した候補遺伝子リストに関し,遺伝子機能や遺伝子の存在するシグナル経路に関するアノテーションデータを公開データベース上で参照しつつ,エンリッチメント解析やパスウェイ解析を行った.解析結果を踏まえ,取得した候補遺伝子リストの中から,実際に腸型化胃粘膜において腫瘍促進的に機能する分子の選定作業を進めている.注目分子の選定に際し,腸型化胃粘膜における上流の転写制御に関するデータを加味する目的で,ATACシーケンスを試みている.一部のマウス検体ではアクセシブルクロマチン領域に関する網羅的なデータを取得している.データ未取得のサンプルについても現在取得を進めており,今後ATACシーケンスデータを踏まえた候補遺伝子の絞り込みを進めていく.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルマウスの組織検体を用いたRNAシーケンスデータにより,正常胃粘膜から,腸上皮化生,腸型胃腫瘍と段階的に発現上昇する遺伝子リストを取得した.これら候補となる遺伝子リストの中から注目すべき分子を現在選定している.候補遺伝子リストを対象に,既存のアノテーションデータベースを用いたエンリッチメント解析やパスウェイ解析を行ったが,特敵の機能を有する遺伝子や特定の経路上に存在する遺伝子には集中しておらず,候補分子の発現局在等のデータと併せて注目すべき分子を選定していく必要があることがわかった.取得したデータは,上皮や間質の細胞など様々な細胞分画を含む組織検体から取得したデータであるため,実際の粘膜における発現局在を踏まえた判断が難しく,腫瘍形成過程において上皮特異的に段階的に発現上昇する遺伝子の選定作業は現在も進行中である.少数の候補遺伝子については,FFPEブロックからの薄切切片を用いて免疫組織化学的染色を実施し,上皮において段階的に発現上昇の見られる分子かどうか検討を進めている.また,腸型化胃粘膜からの腫瘍形成における上流での転写制御に関するデータと併せて候補遺伝子を絞り込む目的でATACシーケンスを行っており,網羅的なアクセシブルクロマチン領域のデータを取得中である.ATACシーケンスのデータ取得が完了次第,その結果を踏まえた絞り込みも行っていく.
|
今後の研究の推進方策 |
腸型化胃粘膜において腫瘍促進的に機能する分子の選定作業をより効果的に進めていくため,公開データのさらなる活用,候補遺伝子の発現局在の確認方法の拡充,未取得データの取得を推進していく.まずは,遺伝子やタンパク発現に関する公開データアトラスや,細胞株での遺伝子発現データ等を積極的に活用し,上皮での発現が主体と考えられる分子を選定する.また,注目すべき遺伝子の発現局在の同定目的に,これまで組織検体のFFPEブロックを用いた免疫組織学的染色により検討を進めていたため,FFPEブロックでの免疫組織化学的染色に適応のある抗体を用いた検討に制約されていた.今後は凍結組織検体での蛍光免疫染色による検討も可能にすべく,凍結組織標本の作製が可能なブロック作成も進めていく.ATACシーケンスによる網羅的なアクセシブルクロマチン領域のデータが取得できていないサンプルに関しては,データ取得の完了を目指す. マウスの腸型化胃粘膜において腫瘍促進的に機能する分子として選定できた候補に関しては,実際にヒトにおいても同様に発現,機能するのか検証を行っていく.ヒト検体でのFFPEブロックを用いた免疫組織化学的染色による発現状態の確認を行い,さらには注目分子の機能に関して,ヒト胃癌細胞株を用いた実験的検証を行う.注目分子の発現や腸型化に関連する遺伝子の発現を活性化ないしは不活性化するベクターを設計し,細胞株における増殖能等への影響の評価を行いたい.
|