研究課題/領域番号 |
23K19532
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0901:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺村 茉利 京都大学, 医学研究科, 医員 (60980381)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 胃癌 / DNAメチル化解析 / トランスクリプトーム解析 / 腸上皮化生 / SPEM |
研究開始時の研究の概要 |
腸上皮化生に代表される化生性変化を有する胃粘膜は発癌リスクが高いことが知られているが、これらの化生が直接発癌するポテンシャルを有するものかは不明である。本研究では、腸上皮化生及び別の化生であるSPEMの発癌への直接的な関与をDNAメチル化異常の観点から明らかにすることを目的とする。早期胃癌の内視鏡切除症例の背景胃粘膜から、腺管分離法やLaser microdissection法を用いて腸上皮化生、SPEMそれぞれを単離し、DNAメチル化解析とトランスクリプトーム解析にオルガノイドによる機能解析を加えることで、特に発癌リスクの高い化生とそれに特徴的なDNAメチル化異常を同定する。
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研究実績の概要 |
本研究は、ゲノムワイドなDNAメチル化解析及びトランスクリプトーム解析を通じて、胃の化生腺管が発癌と直接的に関与しているか、どういった腺管が発癌の高リスクであるかを明らかにすることを目的として実施している。 胃腫瘍の内視鏡切除標本の背景胃粘膜から腸上皮化生(IM)と非腸上皮化生(NonIM)の腺管を取り分け、対象となる正常胃腺管とあわせ、これまでに合計62症例を集積し、DNAとRNAを抽出した。うち27サンプルについてゲノムワイドなDNAメチル化アレイ解析(Illumina社のInfinium HumanMethylationEPIC)を行い、DNAメチル化異常の全体像を解析した。IMではプロモーター領域・CpGアイランド領域でのDNAメチル化レベルが正常胃腺管やNonIMと比較して有意に高く、TCGAの胃癌データに匹敵するほど高いことが分かった。主成分分析ではIMはDNAメチル化レベルが極めて高いサブグループ(IM-high)と中等度にとどまるサブグループ(IM-intermediate)とに分類された。さらに、DNAメチル化状態の異なる領域 (differential methylated region: DMR) を同定し、プロモーター領域・CpGアイランド領域においてDMRが認められる多数の遺伝子の中から、癌関連遺伝子やゲノム異常の生成に関与する遺伝子等を抽出したところ、IM-highで検出されたDMRはTCGAの胃癌データ、とりわけMSIタイプの胃癌と共通するものが多いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNAメチル化アレイ解析で同定したDNAメチル化異常について多数サンプルでのvalidationを予定しており、解析手法の選定および条件検討に時間を要したが、最終的にはIllumina社のMiSeqシステムを用いたTargeted bisulfite amplicon sequencingによるlocus-specificなDNAメチル化解析を採用し、現在解析中である。 また、DNAメチル化異常と遺伝子発現との統合解析については、DNAメチル化異常(プロモーター領域・CpGアイランド領域が高メチル化)のある遺伝子で必ずしも下流の遺伝子の発現に変動があるわけではなく、転写因子の影響も考慮しつつさらなる解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
DNAメチル化アレイ解析で同定したDNAメチル化異常について、MiSeqシステムを用いたTargeted bisulfite amplicon sequencingで多数サンプルでのvalidationを行う。DNAメチル化状態の違いで分類したIMのサブグループの組織学的特徴の違いを評価し、内視鏡による胃粘膜の観察にてサブグループを抽出することが可能かどうかを検討していく。また、化生腺管を含む非癌組織及び早期胃癌におけるタンパク発現について多数例で免疫組織化学染色を用いて評価する。 さらに、DNAメチル化異常により発現が変動し得る候補遺伝子について、ヒト胃組織から樹立した正常胃粘膜上皮や腸上皮化生のオルガノイドにCRISPER-Cas9のゲノム編集技術を用いて改変を加え、細胞の形態変化や増殖能を解析することを計画している。形態変化を認めた遺伝子改変オルガノイドについてトランスクリプトーム解析を行い、遺伝子改変前のオルガノイドと比較してその機能を解析する予定である。
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