研究課題/領域番号 |
23K19569
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0902:内科学一般およびその関連分野
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 正樹 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30985742)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 糖尿病性末梢神経障害 / 後根神経節 / 長鎖ノンコーディングRNA / 神経変性 / 神経再生 |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病性神経障害は、三大糖尿病合併症の一つで主に手足の感覚神経障害を呈する疾患であるが、治療は疼痛緩和の対症療法に限られ、神経自体を修復再生する根本的治療の開発は遅れている。糖尿病は、バリアシステムである血液神経関門の脆弱な後根神経節(DRG)を標的とし感覚神経の変性を起こす。本研究では、この変性過程にあるDRG感覚神経細胞の長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)の役割解明を通して神経保護再生を実現する遺伝子発現制御法の開発を目指し、糖尿病マウスDRGのlncRNAトランスクリプトーム解析と初代培養DRG神経細胞を用いた軸索伸長能解析からlncRNAの治療候補を選び、核酸医薬作製へ向かう。
|
研究実績の概要 |
糖尿病性末梢神経障害 (DPN) における後根神経節 (DRG) 内にある感覚神経細胞体の長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)の発現とその病態形成への役割を解明し、治療に向けてその制御法を開発するのための研究を行っている。現在、本研究において実施するin vivo及びin vitro実験のデータの正確性/再現性を保証するための予備実験を行っている。実験的末梢神経障害の表現型としてストレプトゾトシン誘導1型糖尿病マウスを作製し、慢性期DPNの感覚機能の行動評価と電気生理学的評価、DRG感覚神経細胞の遺伝子発現及び病理学的変化の評価する実験系の確立を行った。感覚機能評価ツールとしてhot plate テスト、von Frey テスト、神経伝導検査の実験設備の設置し、wild-typeとDPNマウスにおけるデータの比較することでDPN表現型の信頼性を確認した。病理学的評価に関しては、マウスから後根神経節を採取する正確な手術手技の確立、凍結切片作製及び採取されたDRGからの十分なRNA抽出量が得られているかなどを確認した。さらに、lncRNAの発現をqRT-PCRで定量し、wild typeとDPNマウスのデータを比較することにより正確性/再現性を確認した。加えて、ラットから採取する初代培養後根神経節細胞の神経突起伸長・分岐パターンを評価する in vitro実験系を確立するために、神経突起伸長・分岐の特性を適切な評価のために十分なDRG収量と培養条件の設定を行い、同時にターゲットlncRNAに対するsiRNAをトランスフェクションし、神経突起伸長に与える影響を評価する予備実験を遂行している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病性末梢神経障害 (DPN) の病態を評価するために必要な実験環境整備とデータの信頼性の確立を主に行ってきた。新規施設での実験系の立ち上げのため、実験設備の設置及び予備実験に時間を要している状況ではあるが、これらは今後の実験遂行の基礎となる重要なプロセスであり、進捗は概ね順調と考えられる。例えば、in vivo実験ではDPNマウスの末梢神経障害の感覚機能評価ツールといった設備設置に加え、wild-type及び糖尿病マウスでの感覚機能評価データ、採取された後根神経節サンプルからのRNA量とqRT-PCRなどの定量データをDPNマウスへの治療介入前の基礎データとして得ておく必要がある。これらは研究の信頼性を担保するための予備実験であり、今後の研究の円滑な進捗のために不可欠かつ重要な段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
糖尿病マウスのDRG感覚神経細胞の遺伝子発現変化が解析され、その病態のキーとなる様々な遺伝子発現をノックダウンすることで神経保護再生を促進できることが示されてきた。本研究では、多様な生理機能が解明されつつあるlncRNA と糖尿病合併症の関わりに注目しており、糖尿病マウスの末梢神経障害表現型の基礎データを確立後に、有望と考えられる長鎖ノンコーディングRNAをターゲットとしたsiRNAを投与して末梢神経障害の変化を評価する。感覚機能の評価にhot plate、von Frey テスト、神経伝導検査を用い、病理学的評価にDRGのRT-qPCRによるRNA定量、ウエスタンブロッティング、免疫組織学及び表皮内神経密度を用いる。並行してラット初代培養神経細胞を用いた in vitro実験系において、in vivo実験での介入と同様に有望と考えられるsiRNAのトランスフェクションによる神経突起伸長・分岐パターンへの影響を評価する。siRNAによる介入によって表現型の改善が得られた場合は、ターゲット遺伝子抑制の候補となるASOを設計し、培養細胞系を用いてノックダウン効率を算出し最大効率をもつ配列を選び、後根神経節への効率的な治療薬送達を可能とするヘテロ核酸の創薬可能性を検討する。
|