研究課題/領域番号 |
23K19576
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0902:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
葛西 真梨子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (60980753)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 急性脳症 / SARS-CoV-2 / 出血性ショック脳症症候群 / 劇症脳浮腫型脳症 / micoRNA / 劇症脳浮腫を伴う脳症 / microRNA |
研究開始時の研究の概要 |
SARS-CoV-2感染症に続発する急性脳症は、最重度の神経学的後遺症または死亡に至る劇症脳浮腫を伴う脳症と出血性ショック脳症症候群の発症が多い。本研究ではSARS-CoV-2に関連する最重症型急性脳症を対象に、臨床経過を分析し、血液・髄液中の炎症関連分子を測定することで、その病態と早期診断や予後の改善に結び付く要因を解明する。また急性脳症は発症早期に正確に診断することができず、有効な治療が不明であり予後改善につながらない。本研究では、小児急性脳症患者における急性期の血清中cell-free microRNAの発現を解析し、急性脳症の病態を制御する分子機構や発症早期のバイオマーカーを探索する。
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研究実績の概要 |
SARS-CoV-2に関連する最重症型急性脳症を対象とした臨床研究では、オミクロン株BA.1/BA.2系統およびBA.5系統の流行期におけるSARS-CoV-2関連脳症の全国疫学調査と既往調査結果を再解析し、論文として公表した。結果は、2020年1月から2022年11月までにSARS-CoV-2関連脳症と診断された患者は103人で、その内14人が最重症の急性脳症、すなわち出血性ショック脳症症候群と劇症脳浮腫型脳症というタイプの急性脳症であった。また、SARS-CoV-2関連脳症の患者は他のウイルス関連脳症の患者よりも有意に神経学的予後が不良で、SARS-CoV-2関連脳症患者103人のうち28人は、重篤な神経学的後遺症または死亡という不良な転帰であった。SARS-CoV-2関連脳症の発症年齢は他のウイルス関連脳症よりも有意に高かった。オミクロン株BA.1/BA.2系統流行期とBA.5系統流行期でSARS-CoV-2関連脳症の臨床症状に有意な差はなかったが、BA.5系統流行期はSARS-CoV-2関連脳症の発症時にけいれん発作を起こす患者が多く、68人中50人において、発症時にけいれん発作を認めた。 さらに、SARS-CoV-2に関連する最重症型急性脳症の臨床的特徴と病態を明らかにするため、多機関共同研究を実施し、SARS-CoV-2関連の出血性ショック脳症症候群および劇症脳浮腫型脳症に限定して臨床情報と検体を収集した。その結果、1年間で患者21名の臨床経過と9名の急性期の血清、髄液検体を集積し、血清・髄液中のサイトカイン測定とcell-free microRNA定量の実験系を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SARS-CoV-2関連脳症の全国疫学調査から103名の臨床症状の特徴をまとめ、SARS-CoV-2関連脳症は、出血性ショック脳症症候群と劇症脳浮腫型脳症が占める割合が多いため、他のウイルス関連脳症よりも神経学的予後が不良であることを論文として公表した。また、当初研究計画で予定していた、けいれん重積型急性脳症の血清検体は集積できなかったが、SARS-CoV-2感染症に続発した出血性ショック脳症症候群と劇症脳浮腫型脳症の臨床情報と血清・髄液検体を集積することができ、臨床情報の解析と検体のサイトカイン測定・cell-free microRNA定量を行う実験系を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
集積した血清・髄液のサイトカイン測定とcell-free micro RNA定量を完了させ、出血性ショック脳症症候群および劇症脳浮腫型脳症の神経症状発症時に関連して上昇するサイトカインやmicroRNAを同定する。今後も継続的に症例を集積し、国際共同研究も目指す。
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