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低分子量G蛋白質RAC1の遺伝子変異による巨脳症・小頭症の発症メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 23K19577
研究種目

研究活動スタート支援

配分区分基金
審査区分 0902:内科学一般およびその関連分野
研究機関愛知県医療療育総合センター発達障害研究所

研究代表者

菅原 涼太  愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 分子病態研究部, リサーチレジデント (80978726)

研究期間 (年度) 2023-08-31 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードRac1 / 巨脳症 / 小頭症 / 低分子量G蛋白質 / 神経発達障害
研究開始時の研究の概要

低分子量G蛋白質Rhoファミリーに含まれるRAC1は全身臓器に発現し、細胞増殖や細胞形態・運動制御を司る。最近、RAC1の遺伝子変異が知的障害(ID) を伴う巨脳症・小頭症の原因となることが報告され、RAC1は脳構造形成・発達に必須の役割を果たすことが確実視される。しかし、RAC1のKOマウスは胎生致死であり、中枢神経系特異的KOマウスの解析データも非常に断片的である。したがって、RAC1が神経発達で果たす役割のみならず、その遺伝子変異がID・神経発達障害を引き起こす分子機構も未解明である。そこで、RAC1の遺伝子変異による“脳サイズ異常”、および随伴するIDの分子病態メカニズム解明を目的として本研究を企画した。

研究実績の概要

知的障害を伴う神経発達障害の患者の遺伝子情報より見出されたRAC1変異の機能解析を進めていたところ、RAC1と90%以上の相同性を持つRAC3でも新たに変異が見出されたため、本年度はRAC1/3の機能解析を並行して行うこととした。神経発達にこれらRAC1/3の変異が悪影響を及ぼすと推測して、妊娠14日目の子宮内胎仔の神経幹細胞に当該変異を有するRAC1/3を過剰発現させ、その細胞の発達経過を特定のタイムポイントで観察した。結果、ほぼ全ての変異体において神経発達の顕著な阻害効果が認められた。しかしながら、タンパク質レベルでその発現が低下するような変異体も存在し、当然ながらこの変異体を神経細胞に導入しても発達に影響はなかった。当該変異においては遺伝子異常に起因するタンパク質レベルの低下が生体内で起きていることが考えられるので、ノックダウンベクターを用いて生体内の環境を模倣することで解析を進めることとした。すると、神経細胞移動に対する阻害効果がみられた。よって、これら全てのRAC1/3の遺伝子異常は神経発達障害の原因となりうることがわかった。生化学的解析として海馬由来の初代培養神経細胞に変異型RAC1/3を過剰発現させ、発達経過を観察した。培養細胞株を用いた転写活性測定や、精製タンパク質を用いた酵素活性測定を行った。ほぼ全ての変異型RAC1/3により、初代培養神経細胞株ではRACシグナル活性化の指標となる葉状仮足の過度な形成がみられた。また、その他実験からも遺伝子変異によりRAC1/3が活性化しているデータが得られた。
RACシグナルの過剰な惹起と抑制によって引き起こされる神経発達障害の形態を見出せた点については、病態の分子メカニズムが如何に多様であるかを示せた点で大変意義がある。今後は実際の病態との関係をより深く検討するために詳細な神経発達の経過をフォローできる実験を検討したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

共同研究先のグループによって神経発達障害の患者から見出された遺伝子変異の解析はその8割が終了している。具体的には複数のRAC1/3変異体を過剰発現させた神経細胞において移動障害、樹状突起形成異常、スパイン形成異常のいずれかが必ず観察された。RAC1においては全ての変異体において一貫性のある神経発達障害の様子がみられたのに対して、RAC3の変異体は発現レベルの低下や神経細胞により構築されるクラスター様構造の形成等、多様性に富んだ神経発達障害の形態をみせた。この事から、RAC1とは異なる新規の分子病態メカニズムの解明を目指し、現在はRAC3の分子病態機構について検討している。
研究の進捗状況としては、各遺伝子変異それぞれについて一つの研究としてまとめている所である。RAC1やRAC3の一部変異体のように、活性が上昇するような変異体については今までと同様に当研究室が運用する解析バッテリーに沿う形で研究を進めているので、論文執筆の段階まで進めることができている。一方で、発現レベルの低下を引き起こす変異体についてはノックダウンベクターを作成して、同様の解析バッテリーにて進行しているが、レスキュー効果の確認ができておらず一時的に中断している。クラスターの様な新しい形態を伴う病態を示す変異体については、この形態を説明する細胞内シグナル経路を探索しているため、少し時間を要している。
総括すると、当初はRAC1だけを原因として神経発達障害の分子病態機構の解明からRAC3も含めた広範囲スペクトルな病態の解析になったために時間を要している。しかしながら、1つの変異体についてはまとまったデータが揃っているケースもあるので、順次論文化していく見込みである。

今後の研究の推進方策

低分子量G蛋白質RAC1/3の分子病態解析として、当研究室は多くの実績を残しており、そのメソッドについても十分な蓄積があることから、スムーズに研究を進めることができている。今までの経験からRAC1/3の活性が上昇することにより細胞内における特定のシグナル経路が惹起されることに起因して神経発達障害に繋がることがわかっている。今後の展望としては、このシグナルを低分子化合物により異常に亢進されたシグナルを抑制することにより、その病態の改善を目指していきたい。そのためにも、遺伝子変異によりRAC1/3の立体構造がどの様に変化するのか、あるいはエフェクターとの相互作用がどの様に変化しているのかを具体的に検討する必要がある。アプリケーションによる立体構造予測や、タンパクの機能を司るホットスポットに結合できる低分子化合物のスクリーニングも視野に変異体解析を進めていく予定である。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Expression analysis of type I ARF small GTPases ARF1-3 during mouse brain development2024

    • 著者名/発表者名
      Matsuki Tohru、Hamada Nanako、Ito Hidenori、Sugawara Ryota、Iwamoto Ikuko、Nakayama Atsuo、Nagata Koh-ichi
    • 雑誌名

      Molecular Biology Reports

      巻: 51 号: 1 ページ: 106-106

    • DOI

      10.1007/s11033-023-09142-5

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり

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公開日: 2023-09-11   更新日: 2024-12-25  

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