研究課題/領域番号 |
23K19588
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0902:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢野 直子 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (20985949)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ロングリードシーケンス / レトロトランスポゾン / Occipital Horn症候群 |
研究開始時の研究の概要 |
Occipital Horn症候群(OHS)日本人男性において、責任遺伝子ATP7Aに挿入された新規レトロトランスポゾン配列が、スプライス異常を誘導していることを証明した。同じ配列を公開ゲノムデータ内に発見し、家系解析から、この配列が3世代前に新規に転移したことが判明した。 本研究では、OHS家系でロングリードシーケンスを実施し、この配列の転移頻度を解析する。次に、申請者らが保有する200以上の未診断の遺伝性疾患患者のゲノム解析データを用いて、レトロトランスポゾン配列との関連を評価する。最終的には、レトロトランスポゾン配列を標的とするアンチセンスオリゴ核酸を用いた治療開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究において、従来の遺伝子解析では原因不明であったX連鎖性遺伝性銅代謝疾患のOccipital Horn症候群(OHS)日本人男性において発見した、責任遺伝子ATP7Aのイントロン16の深部に挿入された約3kbの新規レトロトランスポゾン配列について知見を深めるべく、さらなる解析を行った。ヒトゲノム配列に挿入されたレトロトランスポゾン配列の多型データベースであるdbRIP(https://dbrip.brocku.ca/index.html)を用いて系統解析を行ったところ、SVA_Dとして分類されている多型のうちの一つに類似していることが判明した。このレトロトランスポゾン配列は、一般人口の60%に挿入しているとされている。今回同定した約3kbの新規レトロトランスポゾン配列と、この多型とは非常に類似しているが、いくつかの異なる塩基配列を含むことから、同一のレトロトランスポゾン配列を起源にもっている、もしくは、約3kbの新規レトロトランスポゾン配列がこの多型から派生した可能性が考えられる。今回、系統解析により、一般人口の60%が有するレトロトランスポゾン多型に類似したSVA_Dレトロトランスポゾンが、現代もなお、転移能力を有することが示唆され、この配列が他疾患の原因となり得る可能性があると考えられた。これまで報告されてきたヒト疾患を引き起こすレトロトランスポゾンは、SVA_EもしくはSVA_Fであり、今回の研究で進化的に古いSVA_Dが転移能を有することを示すことができた。OHS患者の皮膚線維芽細胞を用いて、異常なスプライスを誘導する配列に対して設計したアンチセンスオリゴヌクレオチド核酸が、他疾患においても治療ターゲットになる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗はおおむね当初の計画範囲内と考えられる。OHS患者において同定した新規レトロトランスポゾン配列に類似したレトロトランスポゾン多型を発見することができた。また、そこまでの成果を論文としてまとめ、投稿する予定である。まず、OHS患者において同定した新規レトロトランスポゾン配列の特徴や起源を明らかにすることができたという点で、今後の実験解析の準備が整い、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今回新たに同定した新規レトロトランスポゾン配列およびそれに類似した配列が、申請者らが保有するショートリード全エクソーム解析および全ゲノム解析データの中において、どの程度の頻度で保有されているかを確認する。また、これらの家系のトリオデータを解析することで、レトロトランスポゾン配列の転移頻度の解析も予定している。ショートリード全エクソーム解析および全ゲノム解析データは、各々、約300家系、約140家系まで増えており、より大規模に解析が可能になると考える。一方で、繰り返し配の多いレトロトランスポゾン配列は、ショートリードシーケンスデータでは正確に解析できない可能性もあり、ロングリードシーケンスでの解析も予定している。
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