研究課題/領域番号 |
23K19597
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0902:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
池永 寛子 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (40980644)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 肝線維化 / 脂肪酸代謝 / ミクロ ゾームエポキシドヒドロラーゼ / NAFLD / C型肝炎 |
研究開始時の研究の概要 |
研究者は、非アルコール性脂肪性肝疾患およびC型慢性肝炎患者において、線維化の進行した肝臓ではミクロゾームエポキシドヒドロラーゼ(mEH)の発現が増加していることを発見した。また、複数の線維化モデルマウスでも肝臓中のmEHタンパク発現が上昇することを発見した。肝臓の線維化とmEHの関連性は知られておらず、動物実験や細胞実験を通してmEHによる機能解析や発現機序解析を行い、新たな肝線維化病態の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
研究者はC型慢性肝炎及び非アルコール性脂肪性肝疾患患者の肝臓中のミクロゾームエポキシドヒドロラーゼ(mEH)の発現が線維化肝で増加していることを発見した。更に、複数の線維化モデルマウス(高脂肪高コレステロール食、メチオニン・コリン欠乏食やチオアセタミド誘発による)の肝臓中のミクロゾームエポキシドヒドロラーゼ(mEH)も線維化肝で増加することを発見した。mEHはエポキシエイコサトリエン酸(EET)を加水分解する酵素である。EETが加水分解されてできるジヒドロキシエイコサトリエン酸(DHET)は、線維化が進行した患者血清中でで有意に上昇していた。 そこで、本研究ではmEHの発現が上昇するメカニズム、及び脂肪酸代謝物EET、DHETが肝線維化に与える影響について検討することとした。 本年度は、線維化モデルマウスにおけるmEHの発現機序解析を中心に行った。高脂肪高コレステロール食による肝線維化モデルマウスの肝臓では、mEHのmRNA(Ephx1)の発現が線維化進行群で1.65倍に上昇し、メチオニン・コリン欠乏食による肝線維化モデルマウスの肝臓では、mRNA(Ephx1)の発現が2.2倍に上昇した。一方、Ephx1の調節因子として報告されているGATA4、HNF3、CEBPα、HNF4αについて検討したが、有意な検討結果は得られなかった。加えて、翻訳語修飾として報告のあるPI3K-AKT-mTOR経路やmEHユビキチン化の発現についても検討し、高脂肪高コレステロール食モデルではmEHのK-48ユビキチン化蛋白の蓄積がみられることを同定した。以上から、高脂肪高コレステロール食とメチオニン・コリン欠乏食による線維化モデルマウスでのmEHの発現上昇はmRNAのregulationが影響していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
線維化モデルマウスにおけるmEHの発現機序解析を行った。高脂肪高コレステロール食とメチオニン・コリン欠乏食による線維化モデルマウスで検討した。高脂肪高コレステロール食モデルでは、介入群でmEHのmRNA(Ephx1)が1.65倍に上昇した。メチオニン・コリン欠乏食による肝線維化モデルマウスの肝臓では、Ephx1の発現が2.2倍に上昇した。次に、Ephx1の調節因子として報告のあるGATA4、HNF3、CEBPα、HNF4α蛋白量の測定を試みたが、いずれも安定した結果が得られず、確定的な結果には至らなかった。次に、mEHの翻訳語修飾として報告のあるPI3K-AKT-mTOR経路の検討を行った。ウエスタンブロットによりPI3K、AKTのリン酸化、mTORのリン酸化を確認した。高脂肪高コレステロール食とメチオニン・コリン欠乏食モデルいずれも、対照群と介入群で差はみられなかった。次に、免疫沈降法によりmEHのK-48ユビキチン化蛋白の発現を検討した。メチオニン・コリン欠乏食ではmEHのK-48ユビキチン化蛋白に差はみられなかったが、高脂肪高コレステロール食では介入群でmEHのK-48ユビキチン化蛋白の蓄積がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
mEH遺伝子欠損マウスを使用した線維化モデルマウスを作成し、mEHの作用をin vivoで解析する。現在mEH遺伝子欠損マウスを繁殖させており、高脂肪高コレステロール食による線維化モデルマウスを作成する予定である。これにより、mEHの線維化治療標的としての可能性をin vivoで証明することができる。更に、mEH欠損線維化肝でのEETやDHETの測定を行い、mEHのEET代謝への影響をvivoでも解析する。 また、ヒト肝星細胞株を用いて、EETやDHETがコラーゲン産生に与える影響を検討する予定である。
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