研究課題/領域番号 |
23K19609
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0903:器官システム内科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松沢 優 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (30733844)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | パネート細胞 / クローン病 / API5 |
研究開始時の研究の概要 |
クローン病は小腸や大腸などの粘膜に慢性的な炎症が生じる疾患であり、根治療法はない。クローン病では小腸のパネート細胞に異常が多く認められる。パネート細胞を細胞死から保護するAPI5は、米国人検体を用いた解析ではクローン病の新規治療法となる可能性が示されたが、日本人においては不明である。本研究では、API5を本邦のクローン病患者に臨床応用するため、日本人の臨床検体を用いた大規模な解析を行う。
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研究実績の概要 |
本年度は研究代表者が所属機関に着任した初年度であり、かつ半年間という短期間での研究活動であったため、前半は研究のセットアップが主体となり、後半に予定していた臨床サンプルの解析を順調に進めることができた。 東京医科歯科大学消化器病態学講座、および人体病理学講座の協力を得て、同大学の炎症性腸疾患(IBD)センターに通院するクローン病および非クローン病症例あわせて68症例から内視鏡的に採取され病理部に保存されている既存の病理サンプルを用いた組織学的解析を行った。まず、通常の病理診断で使用されているヘマトキシリン・エオジン (HE)染色標本を用いて回腸末端のパネート細胞の数および分泌顆粒の評価を行なったところ、日本人のクローン病症例においても欧米人の症例と同様、パネート細胞数の減少や分泌顆粒異常が認められる症例が有意に多いことが判明した。一方、腸上皮の中でも粘液に富む杯細胞を解析するため、PAS Alcian Blue染色標本を解析したところ、杯細胞に関してはクローン病症例において減少していなかった。これら結果をさらに詳細に解析するため、パネート細胞顆粒を特異的に染色するLysozyme染色法と、粘液を特異的に染色するMUC2染色法によって詳細な観察と結果の確認を行った。 上記の結果は、日本人クローン病症例においてもパネート細胞保護を目的とした新規治療法が有効である可能性を示唆しており、本研究の重要性がより明らかとなった。本年度の順調な研究セットアップにより、2024年度は更なる成果が期待できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究代表者の着任初年度であり、新しい研究室のセットアップを0からスタートすることが最大の目標であった。本研究支援によって研究機器や試薬の購入が進み、研究室のセットアップは予定通り完了した。その後の既存サンプル解析においては、東京医科歯科大学消化器病態学講座と人体病理学講座から協力を得られたことで、上記の通り順調な解析を開始することができた。本研究成果は日本人のクローン病治療においてもパネート細胞をターゲットとした新規治療が有効であること、およびパネート細胞異常をクローン病のバイオマーカーとし得ることを示しており、極めて重要な研究成果を得たと言える。なお、本研究の概要と研究成果の一部は、下記に示す学会で報告している。 以上より、次年度も順調な研究遂行と更なる成果が期待できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、既存の病理サンプルの解析を進める。総計目標はクローン病100症例および非クローン病100症例(うち潰瘍性大腸炎50症例、非炎症性腸疾患50症例)とし、パネート細胞に加えて杯細胞の解析も並行して進める。未染色標本を用いた特殊免疫染色(Lysozyme, Muc2, TUNEL, 細胞死マーカーなど)も同時に進めていく。また臨床情報の収集を行い、クローン病の活動性を病理組織学的評価、内視鏡的活動性スコア、さらに臨床的疾患活動性スコアを用いて評価し、上記の組織学的な解析結果との関連を調べる。 一方、日本人におけるパネート細胞保護因子Apoptosis inhibitor 5 (API5)とクローン病との関連は不明なままであり、上記の未染色スライドを用いてTCRg/d陽性T細胞とAPI5の多重染色を予定する。日本人クローン病患者の小腸上皮に対する組み換えAPI5タンパク質(rAPI5)の効果を、ヒト腸管オルガノイドを用いてin vitro解析する。 さらに、患者の小腸生検組織を無血清培地で培養し、培養上清のWestern blotを行うことで、クローン病および非クローン病においてAPI5分泌に差異があるか検証する。またヒトにおいてAPI5遺伝子の異常は知られておらず、ヒトサンプル間のAPI5分泌の差は何らかの環境要因(治療法、微生物感染など)によるものと推定されるため、gd T細胞からのAPI5分泌に影響する疫学因子の同定を試みる。
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