研究課題/領域番号 |
23K19620
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0903:器官システム内科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
畑山 一貴 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期・母性診療センター, 専門修練医 (40976403)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 超低出生体重児 / 慢性肺疾患 / 成長因子代替ペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
新生児医療の進歩により、多くの超低出生体重児(Extremely low body weight infants: ELBWI)が生存できるようになったが、それに伴い慢性肺疾患(CLD)の発症が問題となっている。CLDへの有効な治療薬は未だに見つかっていないが、Transforming growth factor beta 1(TGFb1)はCLDへの関与が確認されており、TGFb1 inhibitory peptide(TGFb1 IP)を用いた動物実験によって改善が報告されている。本研究では、ペプチドリーム株式会社から提供を受けるTGFb1 IPを使用し、CLDに対する治療効果をin vitroとin vivo両面から検証することを計画している。
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研究実績の概要 |
新生児医療の進歩に伴い多くの超低出生体重児(Extremely low body weight infants: ELBWI)が生存することができるようになったが、慢性肺疾患(Chronic lung disease: CLD)という慢性的な肺の機能不全を生じることが問題となっている。CLDの病態は、未熟肺に高濃度酸素や感染、人工呼吸管理による容量損傷などが加わり、肺に炎症を引き起こし、肺胞の発達障害や繊維化を引き起こし、慢性的な呼吸障害につながるというものである。しかし、現在までに予後を改善させる有効な治療薬は見つかっていない。Transforming growth factor beta 1 (TGFb1) は細胞分化と肺の初期発達に重要な調整因子であり、そのレベルは新生児肺障害で上昇し、肺線維化に深く関わっていることが知られている。高濃度酸素によりIL-1b/TGFb1/Smad2,3リン酸化の経路が活性化し肺胞形成障害や繊維化がおこることが報告されており、TGFb1を阻害することでCLDの改善を認めた動物実験での報告がなされている。今研究ではTGFb1 阻害ペプチドを用い、in vitroおよびin vivoでの効果確認を行っている。これまでのところ、In vitroおよびin vivoにおいていずれも高濃度酸素投与によりIL-1bの上昇を認めており、In vivoにおいてはTGFb1阻害ペプチド経鼻投与により、IL-1bの有意な低下を認めている。これまで、CLDモデル動物に抗TGFb1阻害抗体を腹腔内投与し、CLDの病態を改善したという報告があるが、本研究では鼻腔への局所投与でもCLDの病態を改善できる可能性を示しており、新規性が認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroに関して、MLE12 (Murine Lung Epithelial-12) cellsをチャンバー内で85%酸素に48時間曝露する(95%O2/5%CO2)ことでCLDモデル細胞を作成し(高濃度酸素投与群)、21%酸素に同時間暴露した群(control群)とTGFb1等の各種サイトカインレベル(mRNA定量)を比較した。細胞mRNAにおいてTGFb1、Smad2/3に関してはcontrol群と高濃度酸素投与群で有意差を認めなかったが、IL-1bは高濃度酸素投与群で上昇傾向を認めた。 In vivoに関して、出生直後の雌親と新生児マウスに95%の高濃度酸素を3日間投与することでCLDモデルマウスを作成した。連日体重を評価し、高濃度酸素群と対照群で日齢7の時点で肺組織を採取して、肺組織の病理像、TGFb1等の各種サイトカインの発現(mRNA定量、免疫染色など)を比較予定である。また、新生児マウスに日齢0-2までTGFb1 IPの鼻腔内投与を連日行い、日齢7の時点で肺組織を採取して、同様の比較を行う予定である。 これまでに、高濃度酸素投与群で肺組織mRNAにおいてIL-1bの上昇を認め、TGFb1阻害ペプチド経鼻投与によりIL-1bが低下することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroに関しては、高濃度酸素投与によりIL-1bが上昇することが明らかになったため、TGFb1阻害ペプチドを投与してIL-1bが低下するかを確認する。また、高濃度酸素によるCLDモデルだけではなく、IL-1b投与によるCLDモデルも作成し、そのモデルにおいてCLDの重要な線維化カスケードである、IL-1b/TGFb1/Smad2,3リン酸化の経路をTGFb1阻害ペプチド投与により阻害ができるかを細胞mRNA測定で証明する。また、Smad2,3はリン酸化して細胞内のcytoplasmからnucleusへトランスロケーションすることが報告されているため、免疫染色でこれを証明し、TGFb1阻害ペプチド投与によりこのトランスロケーションが阻害されるかを証明する。さらに、CLDの病態として、肺胞上皮細胞が間葉系細胞に形質転換することが知られているため、IL-1b刺激によるCLDモデルにおいて、この形質転換を免疫染色で証明する。TGFb1阻害ペプチドをこの系に投与し、形質転換を抑制できるかを証明する。 In vivoに関しても、高濃度酸素投与によりIL-1bが上昇することが明らかになり、さらにTGFb1阻害ペプチド経鼻投与によりこれが抑制されることが明らかになった。細胞実験と同様に、IL-1b/TGFb1/Smad2,3リン酸化の経路が阻害されるかを、肺組織のmRNA測定と免疫染色を行い証明する。さらに、肺胞上皮細胞と間葉系細胞のマーカーで肺組織を免疫染色し、TGFb1阻害ペプチド投与により形質転換が阻害されるかを証明する予定である。
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