研究課題/領域番号 |
23K19626
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0904:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
藤田 進也 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所, 生体恒常性プロジェクト 特任研究員 (60984044)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 造血幹細胞 / ホーミング / 骨髄侵害受容神経 / ずり応力 / 機械受容イオンチャネル / 微小循環制御 / 生体イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
造血幹細胞移植は、造血器腫瘍等の根治療法である骨髄再生医療である。レシピエントに造血幹細胞を輸注し、骨髄にホーミングできた少数の造血幹細胞が生着し、血液細胞システム全体を再生・置換する。しかし、ホーミング制御機構には未だ不明な点が多く、ホーミングを改善する治療法は存在しない。本研究では、ホーミングに寄与する新規因子として骨髄侵害受容神経を見出しており、その分子機構をRNA-seqを行い検証する。次いで、ホーミングに寄与する分子を操作して、ホーミング効率の改善が移植後の生着や生存改善に寄与するか検証する。本研究を通じて、造血幹細胞ホーミング改善による生着向上技術が創出されることが予想される。
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研究実績の概要 |
造血幹細胞移植では骨髄に到着(ホーミング)できた少数の造血幹細胞(Hematopoietic stem cells, HSC)が、レシピエント骨髄に生着し血液細胞システム全体を再生・置換する。この過程には血管内皮細胞に発現するセレクチンやHSCに発現するインテグリン等の接着分子(Frenette et al., PNAS, 1998 ; Peled et al., Blood, 2000)および、主に間葉系幹細胞から放出される遊走性ケモカインCXCL12とその受容体CXCR4(Kollet et al., Blood. 2001)等が関与することが報告されている。しかし、骨髄固有のホーミング制御機構には未だ不明な点が多く、ホーミングを改善する治療法は存在しない。 本研究ではこれまで看過されてきた物理化学的因子である「ずり応力」に着目して、検討を進めてきた。これまでの研究結果から、ホーミングを促進する新規因子として骨髄侵害受容神経を見出した。骨髄侵害受容神はCalcitonin gene-related peptide(CGRP)を放出することが知られている。侵害受容神経の薬理学的障害マウス、遺伝学障害マウス、CGRP受容体のantagonistを用いることで、骨髄侵害受容神経に由来するCGRPが動脈を拡張することで、下流の類洞血管における血流・ずり応力が増加し、増加したずり応力が造血幹前駆細胞のホーミングを促進していることが分かった。 類洞血管内皮細胞におけるどのような分子が「ずり応力」を感知してHSCのホーミングを促進するか、RNA-seqやqPCR解析をすることで探索をしている。また、骨髄侵害受容神経を活性化してCGRPを増加させたり、上記の解析で同定した類洞血管の分子を活性化させることで、ホーミング効率、移植後の末梢血回復や生存という「生着」が改善するか、検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械受容イオンチャネルPiezo1は血流の増加を感知し活性化し、類洞血管内皮細胞間の結合が弱まることで、好中球の血管から腹腔内への遊走が促進されることが知られており(SP Wang et al., Blood. 2022)、HSCにも同様の機序が働いていることを予想した。まず、骨髄間質細胞および血液細胞の公共scRNA-seqデータ(GSE128423, GSE175702)を統合再解析して、マウスの全骨髄細胞分画を含むscRNA-seqデータを作成した。このデータを用いてPiezo1の発現を調べると、類洞血管内皮細胞で最も発現が高かった。また、qPCRでも同様の結果であることを確認した。さらに、CGRP受容体の構成成分であるRamp1の発現を調べると、免疫染色で確認した結果と同様に動脈平滑筋での発現が確認された。 Piezo1のアゴニストであるYoda1を投与すると、ホーミング効率が改善することを見出した。遺伝的侵害受容神経障害モデルマウスであるNav1.8-Cre+::DTA+マウスでは、移植後のホーミング効率および生着能が低下しているが、Yoda1を投与すると部分的にレスキューされることが分かった。また、wild typeマウスがYoda1投与後に移植を受けると、ホーミング効率が増加することが分かった。以上とこれまでの検討結果から、マウスモデルを用いて、1. 侵害受容神経がCGRPを産生し動脈を拡張し、2. 動脈の拡張が下流の類洞血管における血流・ずり応力を増加させ、3. 類洞血管内皮細胞に発現したPiezo1が活性化し、4. 類洞血管内皮細胞間のバリアーが弱まることで、移植されたHSCのホーミングが促進されることが見出された。また、Piezo1アゴニストを移植前に投与することでホーミング効率が増加することが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討から、マウスモデルを用いて、1. 侵害受容神経が動脈を拡張し、2. 動脈の拡張が下流の類洞血管における血流・ずり応力を増加させ、3. 類洞血管内皮細胞に発現した機械受容イオンチャネルPiezo1が活性化し、4. 類洞血管内皮細胞間のバリアーが弱まることで、造血幹前駆細胞のホーミングが促進されることが分かった。そして、Piezo1アゴニストを移植前に投与することでホーミング効率が増加することが分かった。今後、類洞血管内皮細胞におけるPiezo1の役割の検証を深めるために、血管内皮細胞特異的にPiezo1が欠失したマウス(Cdh5-CreERT::Piezo1fl/fl)に移植を行い、ホーミング効率や生着に影響があるか解析を予定している。また、ヒトへの応用を検討するため、ヒト臍帯血を免疫不全マウスに移植した際にもPiezo1アゴニストによりホーミング効率が増加するか、解析を予定している。さらに、公共データに蓄積されているヒト骨髄細胞のscRNA-seqデータを用いて、Piezo1およびRamp1がヒト骨髄細胞のいかなる分画に発現しているか解析を予定している。
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