研究課題/領域番号 |
23K19636
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0905:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
新川 智彦 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40982319)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 膵癌 / 腫瘍抑制 / 癌関連繊維芽細胞 / CAF / 腫瘍微小環境 / 不均一性 / 癌関連線維芽細胞(CAF) / 腫瘍抑制性CAF / classical type / 腫瘍不均一性 |
研究開始時の研究の概要 |
膵癌は早期から浸潤・転移する特性と化学療法や放射線治療への抵抗性を持つ予後不良な疾患である。これは膵癌組織の高度な不均一性と豊富な間質、特に癌関連線維芽細胞(CAF)の存在によるものと報告されている。過去の研究ではCAFは腫瘍を促進するとされていたが、申請者の研究でCAFが腫瘍抑制性も持つこと、特にclassical typeと呼ばれるより良い予後の表現型を維持する役割があることが明らかにされた。しかし、この腫瘍抑制性CAFの具体的な特性や維持メカニズムは未解明であり、本研究ではその解明を目指す。この知見が膵癌の画期的な新規治療法の開発につながると考えられる。
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研究実績の概要 |
膵癌は腫瘍微小環境において、癌細胞・癌関連線維芽細胞(CAF)の双方において高度な不均一性を持ち、そのために予後不良となることが知られている。我々はこれまで癌細胞の可塑性に着目し、CAFの分泌するニッチ因子が比較的悪性度の低い高分化型、classical typeの表現型を維持することを明らかにしてきた。一方、近年CAFにも多様性があることが知られてきており、どのようなCAF(腫瘍抑制性CAF)がどのようにして癌の悪性度の低い形質を維持するのか、その機序を明らかにすることを目的とした。 今年度は、ヒト膵癌のパブリックデータのシングルセルRNA解析を行った。その結果、前回の検討で明らかにしたニッチ因子の発現が最も高いCAFクラスターは、ADH1Bという遺伝子の発現が高い、比較的正常に近いCAF群であることが明らかになった。このCAF群は、細胞外マトリクス産生や血管新生、細胞増殖に関与するパスウェイの上昇を認めた。このことから、細胞外マトリクス関連の遺伝子群の発現の詳細を検討したところ、FBLN、COL4、COL15などの線維産生の遺伝子やLTBP、IGFBP、OGNなどのTGFβと協調して細胞外マトリクス産生に関与する遺伝子群の上昇を認めた。続いて、ヒトの膵癌オルガノイドのうち中間型で可塑性を有するものをCAFと共移植した。その結果、高分化型の構造の維持には細胞外基質が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シングルセルRNA解析を用いて、網羅的検索により、腫瘍抑制性CAFの特徴を明らかにすることができた。また、高分化型の維持には細胞外基質が重要である可能性まで同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍抑制性CAFの特徴として一部の細胞外基質の産生が亢進していることを同定し、またvivoの結果からも高分化型の維持には細胞外気質が重要であることが示唆された。今後はこれらの結果をもとに、どのような細胞外気質が高分化型の維持に重要であるか具体的に同定するとともに、CAF、癌細胞と細胞外基質および先に同定していたニッチ因子との相互作用について検討していく。
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