研究課題/領域番号 |
23K19638
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0905:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
井口 雅史 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20981533)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 神経芽腫 / 免疫療法 / 骨髄転移 / 間葉系幹細胞 / 抗GD2抗体 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は,腫瘍に特異的に集積する特徴をもつ間葉系幹細胞(MSC)に,高リスク神経芽腫の新規免疫治療である抗GD2抗体を組み合わせた細胞「Anti-GD2-MSC」を開発した.これにより腫瘍特異的に抗体を作用させることができ, 全身投与の副作用低減及び抗腫瘍効果増強が見込める. 臨床病態により近いモデルである神経芽腫骨髄転移マウスモデルを作成し,Anti-GD2-MSCの抗腫瘍効果を検証する。初代培養マウス腫瘍細胞を生体内で観察可能な細胞へと遺伝子導入した上で同種同系マウスに移植し,骨髄転移モデルを作成,全身投与による転移巣への抗腫瘍効果を生存率,組織免疫学的面から検証する.
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研究実績の概要 |
Syngeneicでの神経芽腫骨髄転移モデルマウスの報告はまだないため,現在モデル作成に取り組んでいる.同モデルを使用し,当科の新規細胞免疫療法の治療効果判定を行うことを目標としている. ①Syngeneic神経芽腫骨髄転移モデルマウスの作成:5-7週のMYCN-Tg Homozygousマウスから腫瘍を摘出し,primary cultureを行い,細胞株を樹立(以後,MYCN).6-8週のMYCN-Tg Wildマウスに,MYCN 1×10E6個を静脈注射しモデルマウスを作成した.腫瘍静注後28日目に同モデルをsacrificeし脊椎を摘出,切片を作成してHE染色・免疫染色(Tyrosine Hydroxylase染色)で転移の有無を評価したところ,40%の確率で骨髄転移していることが確認出来た. ②神経芽腫骨髄転移細胞株の樹立:より骨髄転移しやすい神経芽腫細胞のみをセレクションするために,神経芽腫骨髄転移細胞株を樹立した.上記方法で神経芽腫骨髄転移モデルマウスを作成,腫瘍静注後28日目に同モデルをsacrificeし,両大腿骨より骨髄細胞を採取し培養した.神経芽腫細胞の培養に適した培地(PrimNeus培地)を使用し継代を重ねることで,経時的に血球細胞は死滅し,神経芽腫細胞のみがセレクションされ,神経芽腫骨髄転移細胞株(以後,BM-MYCN)を樹立することに成功した.さらにこのBM-MYCNをMYCN-Tg Wildマウスに静脈注射し,骨髄転移モデルを作成することで,Vivo Passageできる手法を確立した. ③ホタルルシフェラーゼ発現MYCN-Tg腫瘍細胞株の作成:上記のように樹立したMYCNの細胞株に,レトロウイルスを用いてホタルルシフェラーゼ発現遺伝子を遺伝子導入することで,ホタルルシフェラーゼ発現MYCN-Tg腫瘍細胞株(以後,luc-MYCN)の作成に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ⅰ.Syngeneic神経芽腫骨髄転移モデルマウスの作成:骨髄転移モデルマウスに関しては,まだ確率こそ高くないものの一定の割合で作成することに成功している.今後はluc-MYCNを使用した骨髄転移モデルマウスを作成し,生体内イメージングシステム(IVIS)を使用して転移巣を評価することで,より正確に転移場所・転移時期に関して評価することが可能となる.これまでの方法と異なり脊椎以外への骨髄転移も評価可能となるため,実際の転移率は40%より更に高い値を示す可能性も考えられる.また骨髄転移率向上のために骨髄転移細胞株をVivo Passageする手法も確立した.モデルマウス作成に関しては順調であると言える.
Ⅱ.mMSCの骨髄転移巣へのhomingの確認 / Ⅲ.神経芽腫骨髄転移モデルマウスにおけるAnti-GD2-MSCの抗腫瘍効果の検証:現在,モデルマウスの作成に成功したところであり,Ⅱ / Ⅲで予定している投与実験に関してはまだ行っていない.元の実験計画においても令和5年度にモデル作成を行い,令和6年度に同モデルを使用し投与実験を行う予定であったため,概ね予定通りである.
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今後の研究の推進方策 |
Ⅰ.Syngeneic神経芽腫骨髄転移モデルマウス作成 ①luc-MYCNを使用した骨髄転移モデルマウスでの転移巣評価:luc-MYCNを使用して,骨髄転移モデルマウスを作成する.腫瘍静注後28日目まで,数日毎にIVISで骨髄転移巣の腫瘍細胞の局在を確認する.その後同モデルをsacrificeし,IVIS で転移が疑われた病変の骨切片を作成,HE染色・免疫染色で骨髄転移を評価する.②Vivo passage:より骨髄転移しやすい神経芽腫細胞株を樹立するためにVivo Passageを繰り返し行う.まずluc-MYCNを使用し神経芽腫骨髄転移モデル・骨髄転移細胞株を作成する.さらに3-4世代に渡って骨髄転移細胞株のVivo Passageを繰り返すことにより,神経芽腫骨髄転移特化細胞株の樹立を目指す. Ⅱ.mMSCの骨髄転移巣へのhomingの確認 ①上記で作成した骨髄転移モデルに対し,MSC細胞膜をDiRで蛍光染色した上で腹腔内投与し,IVISで生体内でのMSCの局在を可視化する.②同様にGFP発現遺伝子導入MSCを腹腔内投与し1日目,7日目で骨切片を作成して組織学的に転移部へのMSC集積を確認する.MSCは骨髄内に生理的に存在するため,抗GFP抗体を用いて,移植MSCを検出する. Ⅲ.神経芽腫骨髄転移モデルマウスにおけるAnti-GD2-MSCの抗腫瘍効果の検証 ①骨髄転移モデルマウスをAnti-GD2-MSC+IL-2,MSC+IL-2,IL-2,PBS投与群の4群に分け,投与開始から4週間にわたってIVISを用いて転移巣の発光強度を確認する.②同様にAnti-GD2-MSC+IL-2,MSC+IL-2,IL-2,PBS投与群の割り付けで骨髄転移モデルマウスを治療し生存曲線を確認する.
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