研究課題/領域番号 |
23K19644
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0905:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
陳 ヨ 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (40838900)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 膵臓神経内分泌腫瘍 |
研究開始時の研究の概要 |
非機能性膵臓神経内分泌腫瘍(NF-PanNET)の最大の予後不良因子は肝転移であるが、肝転移PanNETに対する有効な治療法はない。このようなNF-PanNET治療の深刻なアンメットメディカルニーズを解消するため、本研究ではNF-PanNETの肝転移メカニズムを明らかにすることで、肝転移症例にも有効な治療法の開発につながる新規治療標的を同定する。
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研究実績の概要 |
膵臓神経内分泌腫瘍(PanNET)は膵臓の神経内分泌組織膵島に由来する腫瘍である。膵島細胞はホルモンやペプチドを分泌する機能がある。PanNETはホルモンなどの過剰分泌による内分泌症状のある機能性PanNETと内分泌症状のない非機能性PanNET(NF-PanNET)に分類される。これまでの研究により、欧米人では機能性PanNETが多く発症するのに対し、日本人ではNF-PanNETの発症率が高いことが明らかになっている。そのためNF-PanNETの詳細な発生機序および治療・診断法の確立は、本邦で進めるべき課題である。NF-PanNET治癒の可能性がある唯一の治療法は外科的切除である。しかし、NF-PanNETは肝臓やリンパ節に転移することが多く、肝転移病変を有する患者のほとんどは、複数の転移病変を有するため手術切除の候補とはならない。肝転移を伴った場合の5年生存率は約50%であり、予後不良であることが報告された。NF-PanNETの治療薬として承認されている薬剤の大半は、無増悪 生存期間や腫瘍縮小効果など客観的な効果がほとんどない。以上のことより、手術以外のNF-PanNETの有効な治療法の開発が急務である。しかし、NF-PanNETは患者由来の細胞株が欠如していること、適切な実験動物モデルがないことによって発生や肝転移の詳細なメカニズムは解明されていないため、転移のリスク因子の同定及び最適な治療法の開発が遅れている。本研究によって、今まで未解明であったNF-PanNETの肝転移に関わるメカニズムの解明に加え、治療法の限られている肝転移NF-PanNETの治療標的及び特効治療法の開発につながる成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はヒトNF-PanNETの細胞株を用いて異種同所移植することで肝転移モデルを樹立した。さらに、この肝転移マウスモデルを用いて原発巣及び肝転移巣の空間的トランスクリプトミクス解析を行い、それぞれの遺伝子発現地図を作成し、原発巣及び肝転移巣の各細胞における遺伝子発現の変動を解析しているところである。 また、ヒトNF-PanNET細胞株に既存の治療薬であるエベロリムスを処理して細胞の増殖について調べた結果、細胞の増殖が抑制されていることが明らかになった。現在、肝転移マウスモデルにエベロリムスを経口投与しており、in vivoの効果を検討しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
① ヒトNF-PanNET肝転移巣及び原発巣の空間的トランスクリプトミクス解析を行い、肝転移を促進する因子を同定する。 NF-PanNET同一患者の原発巣及び肝転移巣を全国から収集している。また、収集した一部の原発巣及び肝転移巣を用いて空間的トランスクリプトミクス解析を行う予定である。 ② NF-PanNET肝転移マウスモデルを用いて治療薬の奏功性を検討する。 ヒトNF-PanNET細胞株に既存の治療薬であるエベロリムスを処理して細胞の増殖について調べた。その結果、細胞の増殖が抑制されていることが明らかになった。今後、肝転移マウスモデルにエベロリムスを経口投与し、転移に対する抑制効果を検討する予定である。
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