研究課題/領域番号 |
23K19661
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0906:生体機能および感覚に関する外科学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
清水 伸彦 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (80979021)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | LSD1 / 難治性精巣腫瘍 / エピゲノム創薬 / オルガノイド |
研究開始時の研究の概要 |
精巣腫瘍においてLSD1の抑制により生じる細胞増殖抑制のメカニズムを明らかにするため、まずは精巣腫瘍細胞株にLSD1阻害剤を投与し、抗腫瘍効果や増殖に関わる蛋白質発現を評価する。続いて患者組織由来精巣腫瘍を用いて精巣腫瘍オルガノイドを作成し、それに対してLSD1阻害剤を投与することで細胞増殖抑制メカニズムのさらなる解明を目指す。その後雄ヌードマウスに精巣腫瘍オルガノイドを皮下移植し、精巣腫瘍動物モデルを作成する。そのモデルにLSD1阻害剤を投与して生体内での抗腫瘍効果と安全性の検討を行い至適濃度や投与回数を明らかにする。
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研究実績の概要 |
精巣腫瘍におけるLSD1を介した増殖メカニズムを解明するために研究を実施した。in vitroにおいては非セミノーマ細胞株であるNTERA2とTera1を使用した。まずはWST-8アッセイ、セルカウントを用いて抗腫瘍効果を検討し腫瘍増殖抑制に有効な投与濃度がNCL1では10μM、NCD38においては3μM程度であることがわかった。LSD1阻害剤の投与前後で蛋白を抽出し、cyclin B1やcyclin dependent kinase、p21、p27などの細胞周期関連蛋白、cleaved-caspaseなどのアポトーシス関連蛋白、精巣腫瘍のがん幹細胞マーカーとして注目されているOct4やSOX2の蛋白発現をウェスタンブロットで発現解析した。また、細胞死のメカニズムを調べるためにフローサイトメトリーを行った。Oct4やSOX2の遺伝子プロモーター部位のヒストンメチル化についてChIP-assayで評価した。結果、ウエスタンブロットではアポトーシス関連蛋白であるcleaved-caspase3とOct4、SOX2の蛋白発現の低下を認めた。フローサイトメトリーではLSD1阻害剤によりアポトーシスが誘導されていた。ChIP-assayではOct4、SOX2のプロモーター部位の脱メチル化が阻害されていることが判明しLSD1を介した増殖メカニズムが一部解明された。in vivoにおいては患者組織由来精巣腫瘍をヌードマウスに移植することで可移植腫瘍モデルを作成した。安定した継代を目指しており、今後はこのモデルに対してLSD1阻害剤を投与することで、安全性や生体内における抗腫瘍効果を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体としておおむね順調に進展していると考えている。NCL1とNCD38を実験に必要な量確保することができたため、当初の予定通り、in vitroにおいて、非セミノーマ細胞株であるNTERA2とTera1を使用してWST-8アッセイを行い抗腫瘍効果と腫瘍増殖抑制に有効な投与濃度を確認を最初の1か月で行うことができた。またLSD1阻害剤の投与前後で蛋白を抽出し、cyclin B1やcyclin dependent kinase、p21、p27などの細胞周期関連蛋白、cleaved-caspaseなどのアポトーシス関連蛋白、精巣腫瘍のがん幹細胞マーカーとして注目されているOct4やSOX2の蛋白発現をウェスタンブロットで発現解析した。手技が安定するまで何度か再試行が必要であったが、2か月程度で最終的には問題なく行うことができた。細胞死のメカニズムを調べるためにフローサイトメトリーを行い、Oct4やSOX2の遺伝子プロモーター部位のヒストンメチル化についてChIP-assayで評価することも大きな問題なく行うことができた。in vivoにおいては精巣腫瘍患者の検体を同意の上確保することができ、一部をヌードマウスの皮下に移植した。生着しなかった検体もあったが、生着する検体を見つけることができたため、可移植腫瘍モデルを作成することができた。現在は2代目の継代中であり、安定した樹立を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroに関して、ウェスタンブロットでは主にLSD1阻害剤の中でもNCD38による結果であるため、NCL1でも同様の結果が出せるかどうかを実験する。 可移植腫瘍モデルが安定して樹立できたのち、このモデルに対してLSD1阻害剤を投与することで安全性や生体内における抗腫瘍効果を検討する。コントロール、低濃度、高濃度、既存の非選択的LSD1阻害剤tranylcyplomineを投与する群を設ける。投与経路は週2回腹腔内投与とし、体重と腫瘍サイズ測定を行う。皮下腫瘍を採取し、解析に使用する。LSD1の免疫染色や、メチル化の基質であるH3K4me2、H3K9me2の免疫染色を行う。また、ウエスタンブロットで判明した細胞増殖に関わる蛋白発現を検証し、TUNEL染色でアポトーシスシグナルの有無を検討する。さらに、LSD1阻害剤が生体に及ぼす影響を、諸臓器を摘出し検証する。以上によりNCL1およびNCD38投与における生体への影響を調べ、至適濃度、投与回数を明らかにする。また可移植モデルの組織から精巣腫瘍オルガノイドの作成を行う。LSD1阻害剤を投与し腫瘍体積量を測定することで細胞株の実験で得られた有効な薬剤の投与濃度の変化や、腫瘍の部位による増殖抑制の差異を調べる。複数の患者由来の精巣腫瘍オルガノイドを作成できた場合には薬剤が効きやすい症例と薬剤が効きにくい症例を抽出し、感受性となるバイオマーカーを探索する。
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