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大規模ゲノムワイド関連解析による侵襲性肺炎球菌感染症の発症に関与する因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 23K19687
研究種目

研究活動スタート支援

配分区分基金
審査区分 0907:口腔科学およびその関連分野
研究機関大阪大学

研究代表者

大野 誠之  大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (90982869)

研究期間 (年度) 2023-08-31 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワード肺炎球菌 / 侵襲性肺炎球菌感染症 / ゲノムワイド関連解析 / パンゲノム解析 / 病原因子 / ワクチン抗原 / バイオインフォマティクス
研究開始時の研究の概要

肺炎球菌は髄膜炎や菌血症などの侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こす。血清型置換や薬剤耐性が問題となっており、新規の予防手段および治療手法の開発が急務である。本研究では、12,000株を超える規模の肺炎球菌臨床分離株の全ゲノム情報から、侵襲性感染症の発症に関与する因子の探索を行う。国内外の臨床分離株の全ゲノム情報の解読または全ゲノム情報の収集を行い、侵襲性と関連する変異をゲノムワイド関連解析によって検索する。実際の病原性との関連はマウスやヒト血液を用いた感染実験にて証明する。本研究は全世界の臨床分離株の遺伝疫学的情報を反映し、侵襲性感染症の病態解明および新規治療標的の同定に大きく貢献するものである。

研究実績の概要

肺炎球菌は髄膜炎や菌血症などの侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こす。血清型置換や薬剤耐性が問題となっており、新規の予防手段および治療手法の開発が急務である。本研究では、国内外の臨床分離株12,599株の全ゲノム情報の解読または全ゲノム情報の収集を行い、侵襲性と関連する変異をゲノムワイド関連解析によって検索する。実際の病原性との関連はマウスやヒト血液を用いた感染実験にて証明する。本研究は全世界の肺炎球菌感染症の遺伝疫学的情報を反映し、侵襲性感染症の病態解明および新規治療標的の同定に大きく貢献する。
解析は国立遺伝学研究所スーパーコンピュータシステムおよび大阪大学スーパーコンピュータSQUIDを利用して実施した。前処理ののち、パンゲノム解析を実施し、99%以上の株が共通して保有するコア遺伝子の配列から一塩基多型(SNP)の抽出を行った。得られたSNPと遺伝子のそれぞれに対して、プログラムPyseerを用いたゲノムワイド関連解析を実施したところ、14,228箇所のSNPと3,102遺伝子の存在が侵襲性感染症と関連することが示唆された。
得られた因子のうち、タンパク質をコードする領域に生じた変異がタンパク質の機能に与える影響を、AlphaFoldを用いた立体構造予測により評価したところ、PheT遺伝子のドメイン間をつなぐリンカー領域に生じた変異が分子の機能を大きく変化させる可能性が示された。
また、病態と相関した遺伝子のうち細胞表層に局在する分子をコードするものをSignalPを用いて予測したところ、group_3907遺伝子が検索された。この遺伝子の欠失株を作製したところ、マウス静脈感染モデルにおける病原性が低下し、group_3907が侵襲性感染症の発症に重要な因子であることを分子生物学的にも確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NCBIデータベース等から全世界で分離された肺炎球菌株の全ゲノム情報を収集し、当初予定していた12,000株を超える12,599株を収集し、全ゲノム解析を一旦完了することができ、当初の予定に沿う進捗状況であると考えている。解析の結果、侵襲性感染症の病態と相関することが示唆された14,228箇所のSNPと3,102遺伝子を得た。しかしながら、新規のワクチンや治療薬の開発に向けたさらなる実験に向けて、これらの因子はさらに絞り込むことが必要であり、課題の残る結果であった。浮上した問題点として、パンゲノム解析に用いるプログラムRoaryが株間で共通する遺伝子を算出する際に相同性の極めて高い遺伝子同士を別種として判定してしまうこと、これによってゲノムワイド関連解析の結果において偽陽性を増加させてしまっていることなどが挙げられる。そのため、これらの課題を解決した上で再計算を行う必要がある。
実際の新規予防手段や治療薬の開発に向けた分子生物学的解析については、グリコーゲン分解酵素をコードするgroup_3907遺伝子の欠失株を用いて一定の成果を得ることができた。しかしながら、本遺伝子は病態と相関する表層分子として抽出した複数因子のうちの一つに過ぎず、他の因子に関しては欠失株の作製を進めているところである。

今後の研究の推進方策

現時点での解析の結果、侵襲性感染症の病態と相関することが示唆された14,228箇所のSNPと3,102遺伝子を得た。しかしながら、新規のワクチンや治療薬の開発に向けたさらなる実験に向けて、これらの因子はさらに絞り込むことが必要である。より偽陽性が少なく信頼性の高い結果を得るために、パンゲノム解析やゲノムワイド関連解析自体の改良や、すでに実施したタンパク質の機能予測や表層分子の予測以外のスクリーニングの実施などが必要と考えている。以下に具体的な研究の推進方策を示す。
パンゲノム解析プログラムRoaryにおける相同遺伝子の判定を改善するため、相同性などのパラメータのカットオフをユーザが指定できるようにプログラムの改変を行う。これにより12,599株の集団において検出される総遺伝子数は大きく減少し、ゲノムワイド関連解析における真陽性率が高まることが期待される。
さらに、ゲノムワイド関連解析後のスクリーニングとして、階層的クラスタリングを応用した病態と相関する遺伝因子のセットを持つ菌株集団の抽出や、進化の過程で獲得・喪失し病態に影響したと考えられる遺伝因子の祖先推定による同定などを追加して進める予定である。
すでに病原性を確認したgroup_3907遺伝子についてはさらなる分子メカニズムの解明のため血液分画ごとの殺菌試験などを追加するほか、組換えタンパク質を抽出してマウスに免疫し、ワクチン抗原としての可能性を検討する。全ゲノム解析によって同定された病態と相関する他の遺伝因子群に関しても変異株を作製し、病原性の検討を実施する予定である。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] A genome-wide association study of emm89 Streptococcus pyogenes identifies genetic variations contributing to severe invasive infections2024

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi Masaya、Ono Masayuki、Motooka Daisuke、Hirose Yujiro、Higashi Kotaro、Sumitomo Tomoko、Miyoshi-Akiyama Tohru、Okuno Rumi、Yamaguchi Takahiro、Kawahara Ryuji、Otsuka Hitoshi、Nakanishi Noriko、Kazawa Yu、Nakagawa Chikara、Yamaguchi Ryo、Sakai Hiroo、Matsumoto Yuko、Ikebe Tadayoshi、Kawabata Shigetada
    • 雑誌名

      Research Square

      巻: -

    • DOI

      10.21203/rs.3.rs-3896691/v1

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] 大規模ゲノムワイド関連解析による侵襲性肺炎球菌感染症の発症因子の探索2023

    • 著者名/発表者名
      大野誠之,山口雅也,川端重忠
    • 学会等名
      チーム阪大リトリート2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 大規模ゲノム解析による侵襲性肺炎球菌感染症の発症機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      大野誠之,山口雅也,川端重忠
    • 学会等名
      第65回歯科基礎医学会学術大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Large-scale Genome-wide Association Study for Exploring Pneumococcal Factors Relating to Invasive Infections2023

    • 著者名/発表者名
      Ono M.
    • 学会等名
      The 4th Asian Pneumococcal Symposium
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-09-11   更新日: 2024-12-25  

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