研究課題/領域番号 |
23K19724
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0907:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
鬼塚 理 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (10779317)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 歯周炎 / 糖尿病 / ミトコンドリアダイナミクス |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病と歯周炎とは密接に関わり合っており、2つの疾患は双方向性の関係性にあると考えられている。昨今、ミトコンドリア機能異常が様々な疾患の原因と考えられ、細胞の老化や細胞死につながることから、ミトコンドリアダイナミクス制御に多くの注目が集まっており、糖尿病を原因とした各種合併症もミトコンドリア機能異常により引き起こされることが報告されている。しかし、歯周炎との関連性については未だ不明な点も多い。そこで、本研究ではミトコンドリア機能と糖尿病を誘因とした歯周炎増悪との関連性を明らかにすることで、ペリオドンタルメディシンへの新たな知見を得ることが目的となる。
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研究実績の概要 |
1型糖尿病(T1DM)モデルとして、ストレプトゾトシン投与を行い、投与後3か月で血糖グルコース濃度を測定し、350 mg/dl以上をT1DMマウスとして用いた。対照群として、同じ週齢の非糖尿病(NDM)マウスを用いた。各群の左側臼歯部に7-0絹糸を結紮し、右側はコントロールとして結紮は行わず、結紮14日後に第2臼歯口蓋歯肉を採取し、ミトコンドリア機能として酸素消費速度(OCR)と酸化的リン酸化(OXPHOS)のタンパク発現を調査した。 NDMの非結紮群と比較して、NDMの結紮群とDMの非結紮群とでOCRの低下を認めた。また、DMの結紮群でさらなるOCRの低下を認めた。歯肉組織における、OXPHOSのComplex1であるNDUFA5とComplex2であるSDHBのタンパク発現は、NDMの非結紮群と比較して、NDMの結紮群とDMの非結紮群で低下を認め、DMの結紮群ではさらなる低下を認めた。 さらに、歯肉組織における炎症性サイトカイン発現量として、Il-1bとIl-6については先行研究で調査済みであり、両遺伝子ともqRT-PCRによりDMの結紮群で著しい上昇を認めている。今回はさらにIl-17aについても調査し、Il-1bと同様にDMの結紮群で著しい発現上昇を認めた。 上記の結果より、糖尿病による高血糖状態だけでなく結紮による歯周炎は、歯肉組織のミトコンドリア機能を低下させ、炎症性サイトカインの発現が上昇することで、破骨細胞を活性化させ、歯槽骨破壊を増悪させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、糖尿病モデルと結紮による歯周炎モデルを確立しており、歯肉組織を用いた遺伝子およびタンパク発現解析技術も確立している。さらに、新鮮な歯肉組織を用いたOCRの測定も安定して実施することが可能となっており、糖尿病モデルと歯周炎モデルで著しい低下を認めている。 研究の開始時期が昨年度の秋からであり、半年ほどしか経過していないため、まだ十分なデータは得られていないものの、今後はN数を増やし、得られたデータをさらに検証する。 また、現在歯肉組織由来の線維芽細胞単離技術を確立すべく、in vitroの実験系を行っており。現在までに安定した培養系が確立している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vitroの実験として、各群から採取した歯肉組織から線維芽細胞を単離し、LPS刺激により培養皿上で歯周炎状態を想定した実験系を行う。NDMとDMから細胞を単離し、LPS刺激によるミトコンドリア機能の評価と炎症性サイトカインの発現量の測定、さらにはインフラマソームシグナルを測定し、破骨細胞活性を評価する。 2年目の研究計画でもある、ミトコンドリアを活性化させる薬剤を投与することにより、歯周炎の治療、および予防が可能かについても検討する予定となっている。in vitroでは細胞に添加し、各実験を行うとともに、in vivoでマウスに投与し、骨吸収度の測定、炎症性サイトカインの発現量、さらにはOCRを測定し、ミトコンドリア機能が改善するかについても検討する。
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