研究課題/領域番号 |
23K19752
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0907:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小堤 涼平 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (00975609)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 薬剤関連顎骨壊死 / マクロファージ / クロドロネートリポソーム / 細胞移植 / ビスホスホネート製剤 |
研究開始時の研究の概要 |
病因不明の難治性疾患である薬剤関顎骨壊死(MRONJ)は,基礎・臨床研究の両方で病変部マクロファージ(MΦ)の細胞挙動がその病態形成に関与する可能性が報告されている.研究代表者らは,基礎実験レベルにおいて,病変部MΦの細胞挙動がMRONJの病態形成に与える影響を明らかにすることを目的に,開発済みの高頻度発現型BRONJモデルマウスにMΦ枯渇作用のあるクロドロネートリポソームシステムを応用したMΦ枯渇実験とマウス長管骨骨髄細胞から培養・樹立した炎症性M1 MΦの細胞移植実験を行って,MΦの枯渇とM1 MΦの移植がBRONJの病態形成メカニズムに直接与える影響を検索することにした.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,ビスホスホネート(BP)製剤関連顎骨壊死(BRONJ)の病態形成因子の一つであると考えられているマクロファージ(MΦ)に焦点を当て,MΦ枯渇作用のあるクロドロネートリポソームシステムとマウス長管骨骨髄細胞から培養・樹立したM1 MΦの細胞移植実験を行って,強制的に病変部MΦの極性変化を引き起こすことで,MΦとBRONJ病態の直接的な関係を明らかにし,BRONJの病態形成機構解明とM1 MΦを基軸とした新規治療法開発の基盤構築を行うことにある. まず,C57BL/6Jマウスを用いて,抗がん剤(CY)とBP製剤(ZA)の併用投与に抜歯を組み合わせて高頻度発現型BRONJ様病変モデルマウス(CY/ZA)を作製した.次に,MΦ枯渇作用のあるクロドロネートリポソームシステムとマウス長管骨骨髄細胞から樹立したM1 MΦを,CY/ZAに応用して,MΦ枯渇病態悪化モデルとM1 MΦ移植病態悪化モデルをそれぞれ開発した.MΦ枯渇実験はすでに完了しており,その実験結果から,病変部Pan-MΦ数を減少させながらその極性をM1へシフトし,BRONJの病態を悪化させることが明らかとなった.そして,本実験結果より得られたBRONJに関する新たな知見は海外学術雑誌にて(Kozutsumi R et al. Bone. 2023)報告した.また,M1 MΦ移植実験では,マウス長管骨骨髄細胞からのM1 MΦ樹立とM1 MΦ移植病態悪化モデルの作製を達成し,現在,口腔内写真による肉眼的創部解析とマイクロCT撮像による3次元的骨構造解析まで終了している.今後は各種染色による組織形態・病理学的解析および免疫病理学的解析ならびにマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行って,より詳細な病態解析を進め,最終的にはそれぞれのモデルから病態形成・悪化遺伝子を抽出し,それら遺伝子を同定するためにqPCRで確認する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度に計画していたクロドロネートリポソームを応用したマクロファージ(MΦ)の枯渇実験は終了し,MΦ枯渇BRONJ病態悪化モデルの作製とその病態解析を当初の予定通り行うことができた.実験結果から,MΦの時間選択的枯渇は病変部Pan-MΦ数を減少させながらその極性をM1へシフトさせて,BRONJの病態を悪化させることが明らかとなった.本実験にて確認した病変部MΦは,骨髄からの補充以外に組織常在性MΦの分化転換などにより補充されている可能性が考えられ,BRONJ病態に関する新たな知見を得ることができた.よって,本実験データを統合・論文化し,海外学術雑誌(Kozutsumi R et al.Bone 2023)へ報告した. R6年度に計画したM1 MΦ移植実験においても,M1 MΦの樹立とM1 MΦ移植病態悪化モデルの作製を完遂し,現在,開発したM1 MΦ移植病態悪化モデルの解析中であり,当初の実験計画通りに進行できている. 一方,マイクロアレイ(受託)による新規BRONJ病態悪化モデル病変部軟組織の網羅的遺伝子解析は実施していないため,R6年度に実施予定である. 以上の理由から,本実験計画の進捗状況はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,M1 MΦ移植BRONJ病態悪化モデルの組織形態・病理学的解析および免疫病理学的解析ならびに病変部軟組織の網羅的遺伝子解析を進めることである.現在,口腔内写真による肉眼的創部解析とマイクロCTによる3次元的骨構造解析から,M1 MΦ移植群の有意な病態悪化が認めれれている.今後は,各種組織染色により,実験群病変部硬軟組織の病態解析を進め,M1 MΦの移植がBRONJ病態に直接与える影響についてより詳細に検索していく. また,マイクロアレイ(受託)による網羅的遺伝子解析および病態形成・悪化遺伝子の選定と抽出を行い,選定した病態悪化遺伝子・分子をqPCRで確認した後,それら自身のタンパク質あるいは阻害薬を創薬し実際にBRONJの病態が悪化または治癒することを確認して本実験計画を完遂する. 最終的には,R5年度に実施したMΦ枯渇実験と同様,論文化し,MΦとBRONJ病態に関する新しい知見を海外学術雑誌にて報告する予定である.
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