研究課題/領域番号 |
23K19767
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0908:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲田 晴彦 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (60633146)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 交通外傷 / 子ども / 外傷予防 / 記述疫学 / 政策評価 / 通学 / 地域格差 |
研究開始時の研究の概要 |
子どもの通学中の交通外傷が後を絶たない。2012年以降、複数の小学生が通学中に死傷する事故が発生するたびに、国レベルで予防対策の強化が繰り返されてきているが、それにより交通外傷を予防できているのか明らかになっていない。本研究では、全国の警察が収集した交通外傷の全数データを分析して、子どもの通学中の交通外傷を疫学的に記述するとともに、対策が取られた後に子どもの通学中の交通外傷が減少したのか明らかにすることで、対策の定量的な評価を提供する。また、通学中の交通外傷発生率の地域格差の原因も探索することで、外傷の予防に加えて地域格差の是正のために今後取るべき対策を提案する。
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研究実績の概要 |
2023年度には、3つの研究目的のうち、小中高生の通学中の交通外傷の疫学的記述と、2012年以降の国レベルの予防対策の定量的評価の2つの達成に向けて研究を進めた。 小中高生の通学中の交通外傷の記述について、2013年から2022年に全国で発生し警察に報告された小中高生の通学中の交通外傷のデータを、(公財)交通事故総合分析センターを通して入手し、文部科学省の学校基本調査による児童・生徒数のデータと組み合わせて分析した。この交通外傷データは、年、性、学年(小学1・2年生、小学3・4年生、小学5・6年生、中学生、高校生)、交通手段(徒歩、自転車、二輪車、その他)、重傷度(死亡、重傷、軽傷)などの変数で層別された、集計データである。 分析の結果、10年間の通学中の交通事故で、死者129人、重傷者8,250人、軽傷者115,464人が発生したことが明らかになった。死者の内訳は、小学生39人、中学生24人、高校生66人で、男子84人、女子45人であった。交通手段別の分析では、死亡・重傷者の大半は、小学生では徒歩で、中高生では自転車であった。学年と性で層別した児童・生徒数10万人当たりの年間の死亡・重傷者の数(死亡・重傷率)は、高い順に、高校生男子16.1、高校生女子10.8、中学生男子6.4であった。10年間に小中高生全体の死亡・重傷率はおよそ半減していた。 また、2012年以降に行われている国レベルの予防対策の評価に必要なデータを、同様に入手した。このデータは、年(2006年から2020年)、月、学年(小学1・2年生、小学3・4年生、小学5・6年生、中学生)、交通手段(徒歩、自転車、その他)、重傷度(死亡、重傷、軽傷)の変数で層別されている、集計データである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年8月31日に研究開始後、申請者が1か月半育児休業を取得したことと、2024年4月になると2023年までの交通外傷データをあわせて入手できるためあえて一部のデータ購入時期を遅らせたことを主な理由として、2023年度内に交通事故データ購入を完了し論文を1本出版するという当初の予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度中に研究を完了すべく、3つの研究目的のうち、既に研究を開始した上記の2つを進めるとともに、もう1つの通学中の交通外傷発生の地域格差についても同様にデータを入手し、分析する。それぞれの研究目的を少なくとも1本ずつの学術論文にまとめ出版する予定である。さらに、通学中の交通外傷の発生に地域格差が見られた場合には、その原因を明らかにするために、公開データや文献などの調査を行うとともに、教育委員会や学校関係者等に聞き取りや質問紙調査を行い、特に通学時の交通手段に着目してデータ(スクールバスや自転車の利用、自転車乗用中のヘルメット着用に関するポリシー等)を収集し、分析する予定である。これらの研究の結果をもとに、外傷の予防に加えて地域格差の是正のために今後取るべき対策を提案する。
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