研究課題/領域番号 |
23K19792
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0908:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
藤澤 岬 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 老年学・社会科学研究センター, 研究員 (20980006)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 向精神薬 / 高齢者 / 有害事象 / ポリファーマシー / NDB / メンタルヘルス |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者は慢性疾患を抱えがちであり、不眠やせん妄、うつなどの症状も併発しやすいことから、複数の薬剤を処方されやすい。しかし抗コリン作用のある向精神薬は、高齢者の転倒や認知機能障害などの有害事象を引き起こす可能性がある。加えて多剤処方は、薬剤費用に見合うだけの有効性がなければ、医療費適正化の観点からも無視することはできない。 そこで本研究ではレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、高齢者における有害事象頻度の高い向精神薬の処方パターンを特定し、減薬のための介入を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究課題は高齢者における向精神薬の処方傾向を明らかにし、多剤併用を削減するための介入についての仮説を得ることが目的である。厚生労働省が提供しているレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の抽出・解析を行い、有害事象に関連した向精神薬処方パターンを明らかにすることを計画している。 まず向精神薬の処方傾向を調べるために、厚生労働省が公表しているNDBデータの集計結果(NDBオープンデータ)を用いて、都道府県ごとのばらつきの評価を行った。その結果として、睡眠薬や抗不安薬は北海道・東北地方で多い傾向があった。また向精神薬処方が少ない要因として認知行動療法などの非薬物療法の普及が原因という仮説があったが、日本では保険診療としての認知行動療法の実施数は非常に限られ、関連性については確認できなかった。 ・Fujisawa M, Takashi N, Ohtera S. Exploring Factors for Regional Differences in Inappropriate Psychotropic Drug Prescribing: Ecological Study Using a Claims Database in Japan. ISPOR Europe 2023,POSTER SESSION, Nov 14 2023, Copenhagen K, Denmark. 次に高齢者における有害事象と関連がありそうな抗うつ薬に着目し、性年齢別の処方傾向を明らかにした。抗うつ薬の作用機序分類(三環系、四環系、SSRI、SNRI、その他)、薬効分類名称(パロキセチンなどその他を除いた計13の薬剤)を分析対象の薬剤とした。これら薬剤の処方数(錠剤・カプセル数)、処方量(mg)、薬剤医療費(米国ドル)を年度別・性年齢別に集計した。その結果として、高齢者で処方が増加している薬剤として、デュロキセチンが特定された。こちらの分析については現在論文執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NDBを扱う研究については研究計画を作成し、現在修正を行っている。本研究課題の倫理審査は承認されている。 またリサーチクエスチョンをより明確にするために、NDBオープンデータを用いた分析も同時に進めている。こちらについては解析が終わり、すでにInternational Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research(ISPOR)にて学会発表を行った。現在は追加で行った解析結果をもとに、論文執筆を進めている。こちらの分析により、抗うつ薬の処方傾向を明らかにし、どのような薬剤の処方が増えているか・医療費への負担の程度などを評価することができた。この結果をもとに、NDBデータを扱った研究計画に反映する作業を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
NDBデータの提供に想定より時間がかかっており、本格的にデータの抽出・解析を行う環境を整えるにはまだ時間がかかる。9月で解析を終える計画であり、それまでに終えるための準備を進めている。 研究計画については、専門家との意見交換を行っている段階であり、現在も修正を行っている段階である。現在優先すべき点は、対象薬剤の候補をより絞り込んでいくことである。当初の予定では抗コリン作用のある向精神薬を対象としていたが、それ以外の薬剤も高齢者の有害事象に関連している可能性があり、研究計画の修正が必要だと認識している。例えば、抗コリン作用の強い抗うつ薬の薬効分類名称としてパロキセチンが挙げられるが、近年処方は減少している。増加傾向にあるのは近年適応疾患が追加されているデュロキセチン、10年以内に販売されたベンラファキシン、などである。こうした薬剤は抗コリン作用は強くないが、めまいなどの副作用が出ることがある。またデュロキセチンについては、NDBオープンデータの解析により、高齢者での処方数増加傾向が確認できた(この解析結果については現在論文化している段階である)。その背景には、慢性腰痛症など疼痛への処方が増加しており、内科・整形外科での処方などが増えていることが考えられる。こうした背景を考慮し、抗うつ薬の中でも高齢者における不適切処方の可能性がある薬剤を現在ピックアップしている。このような疑問をより綿密に計画として練り、専門家と意見交換していく。
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