研究課題/領域番号 |
23K19800
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0908:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田野 翔 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (80975566)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 体重管理 / 性差医療 / 予防医学 / 心血管疾患 / ヘルスケア |
研究開始時の研究の概要 |
女性の心血管疾患(CVD)リスク軽減に妊娠高血圧症候群(HDP)発症予防は極めて重要であり、HDPとCVDの共通のリスクに肥満がある。体重管理が発症予防に重要であるが、体重管理の方法についてはエビデンスがなかった。本研究の目的は、周産期データと健診データのビッグデータを連結し、得られた詳細なデータについて機械学習を用いて解析し、我々の先行研究で新たに提唱した体重変化量に基づく体重管理によってハイリスク女性の数を減らすポピュレーションアプローチに、中間因子である血糖変動に着目したハイリスクアプローチを組み合わせた多角的な疾病予防モデルを構築し、最終的に女性の生涯を通じた健康支援を行うことである。
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研究実績の概要 |
本研究は、体重変化を軸に、女性の将来の心血管疾患の発症予防のため、リスクとなる肥満、妊娠高血圧症候群を一連のデータとして包括的に解析し、多角的なアプローチのための基盤を構築することを目的としている。 まず始めに、体重変化と妊娠高血圧症候群発症との関連については、2つの周産期母子医療センターのハイリスク妊婦(年間約1,000例)と、12の産科一次施設のローリスク妊婦(年間約9,000件)の2009-2022年の13年間のデータを活用して、初回妊娠後の介入で次回妊娠での妊娠高血圧症候群の発症予防を目指したインターコンセプションケアでの体重管理に特化した予測モデルの作成が完了した。予測モデルの精度は、高い識別能力と、優れた較正を示した。現在、論文を投稿中である。 つぎに、体重変化と動脈硬化との関連についての研究では、体重を変化(ある時点までの体重変化)と状態(ある時点でのBMI)で捉えた時、それぞれが動脈硬化に与える影響が異なることが判明した。従来は、肥満であるほど動脈硬化の程度が軽くなることが知られており、心血管疾患を発症した患者の中では肥満患者ほど重症度が低い、というObesity paradoxの要因と考えられていた一方で、なぜ肥満が心血管疾患のリスクであるのかについては明らかではなかった。しかし、我々の検討で、肥満になるまでの体重増加が動脈硬化を促進する、という結果を得ており、体重を「変化」と「状態」で捉える必要がある、という結果を得た。現在、論文を投稿中である。 最後に、妊娠中の血糖変動が妊娠高血圧症候群の発症との関連についての解析では、周産期領域では周知されていない血糖変動の臨床的意義について焦点をあて、肥満と妊娠高血圧症候群の中間因子として血糖変動があることを示した。この内容は第42回周産期学シンポジウムでシンポジストとして発表し、論文投稿に向けて作業を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①2回の妊娠間の介入によって、後続妊娠での頻新高血圧症候群のリスク軽減を図ることを目的とした研究では、解析が完了し、現在論文の投稿を行っている段階である。この研究では、今後の研究を元に社会実装を目指すための協力企業とも共同研究契約を締結した。②健診データと周産期データを連結した、妊娠前~分娩後の時系列解析では、データは集約したものの、当初計画していたデータの連結方法では、連結できたデータが500例と少数であり、連結方法の改善を行い、連結データの症例数の増加を図っている。この連結作業が完了すると、従来では解析が非常に困難であった、妊娠前から妊娠後まで連続したデータでの解析が実現し、予防医学において非常に重要な知見の発見の礎となることが期待される。③肥満と妊娠高血圧症候群の中間因子として血糖変動が存在している、という解析結果を得て、先般行われた第42回周産期学シンポジウムでシンポジストとして発表を行い、論文投稿に向けて作業を進めている。また、妊娠中の血糖変動を評価可能なバイオマーカーの探索では、いくつかの候補が抽出され、現在で150例の測定が完了しており、目標症例数に向けて症例を集積中である。この発見により、肥満女性において、妊娠前から妊娠後までのシームレスな妊娠高血圧症候群の発症予防策の構築に向けて基盤となるエビデンスの創出が実現する。④血糖変動と血管内皮障害についての解析では、上記のバイオマーカーの測定について協力を得られている症例が非常に少なく、症例数の確保に苦戦をしているが、体重変化と血管内皮障害との関連についての解析は完了しており、論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
①2回の妊娠間の介入によって、後続妊娠での頻新高血圧症候群のリスク軽減を図ることを目的とした研究について、前向きの介入研究に向けて倫理審査を行っている。②健診データと周産期データを連結した、妊娠前~分娩後の時系列解析では、予定していたのはユニークIDに基づく連結方法であったが、それでは500例程度しか連結できなかったので、問診で具体的に過去の分娩歴・分娩施設のデータを取得し、連結する方法を進めている。③血糖変動と妊娠高血圧症候群との関連についての解析では、第42回周産期学シンポジウムで発表した内容については論文化を進めている。また、バイオマーカーの探索ではいくつかの候補が抽出できたが、共同研究頂いていた研究員が異動となり、異動先でも共同研究ができるよう手配した。また、候補となったバイオマーカーの測定は妊婦では順調に症例数が蓄積できているが、健診施設での非妊婦では同意を得られている症例数が少なく、苦戦している。現在、どのように現場の負担を極力増やさずに、同意していただける方の数を増やすことができるか、健診施設の経営陣と協議を行っている。
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