研究課題/領域番号 |
23K19957
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1001:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
七島 幹人 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (90855222)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 対話証明系 / 計算論的学習理論 / 一方向性関数 / 知識複雑さ / 証明系 / 計算複雑さ理論 |
研究開始時の研究の概要 |
暗号技術の核となる要素である一方向性関数をNP問題の困難性から構成するという重要未解決問題の解決に向けて,現在知られている課題解決に関する証明手法の障壁である,相対化の障壁の突破と回避を目指した研究を行う. 障壁の突破に関しては従来の研究に証明系の観点を加え,証明系にまつわる相対化しない手法を証明中に組み込むことを目指す.障壁の回避に関しては,多項式時間困難性仮定の代わりにNPの準指数時間困難性仮定を適用し,従来の相対化の障壁の構成が成立しない領域においての一方向性関数の構成アプローチを試みる.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は一方向性関数をNP問題の困難性から構成するという重要未解決問題の解決に向けて,現在知られている証明手法の障壁である,相対化の障壁の突破を目指した研究を行うことである.その目的の達成に向けて,従来の研究に証明系の観点を加えた研究を進めている.本年度の成果は大きく2つ,(i)一方向性関数の非存在下で成立する学習論的性質の改善と(ii)知識複雑さに基づく課題達成への新しいアプローチの提案である. (i)一方向性関数の非存在下で成立する学習論的性質の改善について,これまでに得られていた一方向性関数の非存在下で成立する学習論的アルゴリズム的性質を改善し,かつ従来のものよりクリアな理論を構築することに成功した.一方向性関数をNP問題の困難性から構成するという課題は,一方向性関数の非存在下で成立するアルゴリズム的性質をNP完全問題を効率的に解ける領域まで強化するという課題に他ならないため,この成果は課題解決に向けた1つの重要な進展となる結果である.当該研究は理論計算機科学のトップ国際会議であるFOCS2023に採択され,発表を行った. (ii)知識計算量に基づく課題達成への新しいアプローチの提案は研究提案書項目Cに関しての進展を与える成果である.これはGapMCSPと呼ばれる計算問題に対して知識複雑さゼロ(ゼロ知識)あるいは対数的知識複雑さの対話証明系を与えることが一方向性関数をNP問題の困難性から構成することを特徴付けることを証明したものであり,これに基づき問題に対する知識計算量を改善していくというアプローチを提案した.この方向は対話証明系に対して知られている相対化の障壁を突破する手法が組み込みやすいことが期待されるアプローチであるという点で重要な結果である.当該研究は理論計算機科学のトップ国際会議であるSTOC2024に採択済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り一方向性関数をNP問題の困難性から構成するという課題に向けて,仮定から従うアルゴリズム的側面の強化という本質的に重要な進展と,知識複雑さに基づく障壁の突破に向けた新しいアプローチを創出したという点.また,それぞれが理論計算機科学のトップ国際会議(STOC・FOCS)に採択されており国際的な評価を得ているという点から,本年度までの進捗は概ね順調であるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の展開として,初年度で得られた一方向性関数のアルゴリズム的性質への変換手法を応用・改良し,達成目標課題であるPessilandの除外(一方向性関数の非存在からNP問題に対する平均時アルゴリズムの導出)及びHeuristicaの除外(NP問題に対する最悪時-平均時帰着の開発)に対して現状得られている結果に見られるギャップを緩和し,アルゴリズム的側面の微少の改善が課題達成を導出するというタイトな領域まで研究を進展させることを狙う.加えて,初年度に新たに重要性が明らかになった,知識複雑さの観点から当該領域の現状の進展を見つめ直し,近年の分野におけるブレイクスルーの根幹にあると直感的に推測される「帰着がもつインスタンス及びNP問題に対する証拠の情報量」を形式的に議論することで,我々がおかれている現状の更に深い理解から課題を更に進展させることを狙う.また,今後本研究終了後に十年単位で我々が挑戦すべき課題やどのような部分にまだ知られていない暗黙的障壁が存在するか理論的に明らかにすることで,今後の分野全体としての研究の進め方について検討する.
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