研究課題/領域番号 |
23K20020
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1101:環境解析評価、環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩崎 晋弥 北海道大学, 地球環境科学研究院, 助教 (70751006)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 気候変動 / 炭酸塩溶解 / 浮遊性有孔虫 / 南大洋 / 炭素循環 |
研究開始時の研究の概要 |
氷期-間氷期スケールの大気二酸化炭素濃度変動メカニズムは、古気候研究の長年の課題である。近年、底生有孔虫のホウ素/カルシウム比(B/Ca)測定による深層水炭酸イオン濃度復元が実用化され、海洋炭素貯蔵量の定量的な議論が可能になったが、底生有孔虫化石試料が産出する海域・水深・時代には制限があるため、南大洋における深層水炭酸イオン濃度復元は進んでいなかった。本研究は、これらの課題に対し底生有孔虫よりも多くの化石採取が可能な浮遊性有孔虫を利用した新しい指標を活用し、従来の研究手法では明らかにできなかった海域・時代の海洋炭素貯蔵量変動に光をあてる研究である。
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研究実績の概要 |
大気中の二酸化炭素(CO2)濃度変動は気候変動の主要因であるが、その変動メカニズムは未解明な部分が多い。特に10万年周期で訪れる氷期の間、大気CO2濃度は間氷期に比べ100 ppmほど低く、その間炭素は海洋深層に貯蔵されていたと考えられている。しかし氷期の炭素が海洋深層のどこに・どれくらいの量(GtC: Gigatons of Carbon)・どのようなプロセスで貯蔵されていたのか?という問題は未だに解決に至っていない。本研究は氷期の炭素レザバーとして注目されている南大洋太平洋側の深層水が最終間氷期(13万年前)以降の大気CO2濃度低下にどのくらい寄与したのかを明らかにするため、深層水炭酸イオン濃度([CO32-])の定量的な復元により海洋に蓄えられた炭素量(GtC)を見積もる。その際、炭酸塩堆積物を形成する浮遊性有孔虫殻の溶解が深層水[CO32-]に支配されることに着目し、自身が開発・実用化したマイクロフォーカスX線CTスキャナー(以下MXCT)を用いた殻溶解度測定による定量的な深層水[CO32-]復元を南大洋太平洋側で採取された堆積物コア試料に適用することで、炭素貯蔵の重要海域における炭素貯蔵量(GtC)の復元と炭素貯蔵プロセスの理解を目指す。 研究初年度となる2023年度は、本研究課題で利用する2本の堆積物コア試料(MR16-09_PC03およびU1543)について浮遊性有孔虫化石のサンプリングを完了し、所属研究機関において、殻重量の測定を実施した。その後、海洋研究開発機構に設置されたMXCT装置を利用し、深層水[CO32-]を復元するために必要な有孔虫殻溶解度測定を実施した。さらにMR16-09_PC03コアについては、有孔虫殻の酸素安定同位体比に基づく同位体比層序により高解像度の年代モデルを構築した。この成果は原著論文として国際誌(PNAS: Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で予定していたサンプルの分析は完了しており、進捗状況はおおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本研究で分析を計画していた2本の堆積物コア試料ずべての、試料採集・前処理・有孔虫の殻重量測定・MXCTによる測定がおおよそ完了した。そこで2024年度は、引き続き分析を継続する他、取得したCTデータを用いて、深層水炭酸イオン濃度に換算するためのデータ解析を進める。また研究目的である 最終間氷期以降の南大洋太平洋側における深層水炭素貯蔵量の変遷を理解するための考察や議論を行う。得られた研究成果は学会における発表や国際誌への論文掲載を通して公表する。
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