研究課題/領域番号 |
23K20024
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1101:環境解析評価、環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ファイトレメディエーション / バイオリーチング / 根圏細菌 / 成長促進 / Cd蓄積 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、根圏細菌のバイオリーチング能力と成長促進能力を利用し、ハクサンハタザオによる効率的なCd除去システムを開発することを目指す。微生物によりCdの可溶化を促進し、植物に吸収させることで、Cd除去力を強化する。そのため、Cd汚染土壌から根圏細菌を採取し、有機酸の生産、植物の成長促進、Cd耐性やバイオリーチング能力を評価し潜在的な微生物を選択し、コンソーシアムを構築する。加えて、コンソーシアム接種による環境要因と遺伝子の変化を調べることで相互作用のメカニズムを明らかにする。その上で、本技術をCd汚染土壌に適用し、ファイトレメディエーションによる可溶性・不溶性Cdの迅速な除去技術を確立する。
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研究実績の概要 |
本年度では① カドミウム(Cd)汚染土壌からの潜在的な根圏細菌の探索、②根圏細菌の有機酸生産とバイオリーチング能力の解析、および③Cd吸収に対する高蓄積植物ハクサンハタザオのストレス応答やメカニズムについて研究を行った。 ①宮城県登米市のCd汚染サイトで育成されたハクサンハタザオから根圏細菌を分離し、Cdを含む培地に播種しコロニーサイズおよび形態の異なる20株を取得した。これらの株は、次の植物成長ホルモン(IAA) 生産量や有機酸生産量の測定に用いた。IAA 生産量では3株が高い生産量を示すことが確認された。②有機酸生成を推定するためにリン酸溶解実験を行った。2株が有機酸を分泌し、土壌中のCdを可溶化することに応用できる可能性が示された。①と②の結果に基づき、5つの分離株はPseudomonas属、Chryseobacterium属、Arthrobacter属、およびEnterobacter属に同定された。今回分離に成功したCd耐性を有するIAA・有機酸生産細菌は、Cd汚染土壌における植物の成長やCd蓄積を支えるキーストーン種であることが示唆された。これらの成果は国内学会(2024年度)で発表予定である。 ③Cd高蓄積植物ハクサンハタザオ、並びに非蓄積のシロイヌナズナをさまざまなCd濃度で水耕栽培し、細胞壁の厚みの亢進と抗酸化物質の生成を評価した。RNA-seqを用いた以前の研究結果と比較した結果、ハクサンハタザオはペルオキシダーゼなどの抗酸化物質生成を通じて、Cdストレスを緩和していることが分かった。又、ペルオキシダーゼはフェニルプロパノイド合成経路を介して細胞壁合成の亢進に寄与することから、Cdの細胞への侵入を阻害していることが示唆された。これらの研究成果について、国際学会での発表(2024年度)ならびに論文投稿の準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では、研究は予定通りに順調に進展しました。根圏細菌の分離および選抜が適切に行われ、今後ではバイオリーチングの応用実験に向けて準備を進めています。選抜した潜在的なバクテリアは、水耕栽培および土壌を用いたパイロットスケール実験を行う予定である。また、2023年度ではまだ業績は積めなかったが、これらの研究成果は2024年度に国内・国際学会や学術論文を通じて研究成果の発表および投稿を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の結果を踏まえて、2024年度では以下の推進方策を行う予定である。 ①水耕栽培による根圏細菌コンソーシアムと植物根との相互作用機構の解明。 水耕栽培を通じて、ハクサンハタザオに潜在的な細菌の組み合わせ(コンソーシアム)を接種し、微生物の競争や相互作用を調査し、それぞれの比率の変化を検討することで、根圏細菌の安定かつ最適な組み合わせを改善する。同時に、植物の根とコンソーシアムの相互作用について、根の成長、植物バイオマス、抗酸化物質の生成、および細胞壁の生成の変化を評価する。 ②Cd汚染土壌のパイロット実験 (根圏細菌の有効性を評価)。 ハクサンハタザオのCd蓄積を抑制するコンソーシアムの有効性を栽培実験で評価する。コンソーシアムをハクサンハタザオの苗の根に接種し、Cd汚染土壌に植え変える。Cdのバイオアベイラビリティ、土壌pH、養分吸収・摂取量、および植物バイオマス重量を、微生物を接種していない対照植物と比較して評価する。最後に、土壌およびハクサンハタザオにおけるCdの除去率および蓄積率を測定し、根圏細菌の適用によるCd浄化の有効性を結論付ける。
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