研究課題/領域番号 |
23K20025
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1101:環境解析評価、環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
磯谷 浩孝 早稲田大学, 理工学術院(環境・エネルギー研究科・環境総合研究センター), 次席研究員 (40980660)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 化学吸収法 / アミン水溶液 / 燃焼後二酸化炭素分離 / 柔軟運転 / 数理計画法 / 余剰電力 / エネルギー貯蔵 / 燃焼後CO2分離 / CCS |
研究開始時の研究の概要 |
アミン吸収液による燃焼後CO2分離回収を適用した火力発電システムは,低炭素かつ出力調整可能な電源として今後の電力の安定供給と脱炭素化への大きな貢献が期待されるが,コスト削減が主な課題である.本研究では,同システムにおいて,電力市場での価格変動を利用した新規操業方法として「電力価格高騰時に限定した発電および電力供給ピーク時の安価な外販電力による吸収液再生」を提案し,数理計画法とプロセスシミュレーションを組み合わせたモデルを用いて,その収益性を評価し,課題を明らかにする.
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研究実績の概要 |
まず,実際の電力価格データに合わせて,火力発電所とアミン吸収液による燃焼後CO2分離回収システム(Amine-based post-combustion CO2 capture:アミンPCC)の運転計画(起動停止,負荷変動)を最適化する数理計画法モデルをGeneral Algebraic Modeling Language(GAMS)を使って構築した.次に,発電所とアミンPCCシステムのプロセスシミュレーションモデルを汎用プロセスシミュレータAspen Plusを用いて構築し,プラントのプロセスデータを取得し,数理計画法モデルの計算に組み込んだ.その上で,年間(8760時間分)の電力価格や燃料価格などを収集しGAMSモデルへのインプットデータとして与え,システムの運転計画の最適化計算を実施した.また,別途実施したシステムの資本費と操業固定費の試算値と上記最適化計算で得られる売電収入等の結果から正味現在価値(Net present value:NPV)を計算し,収益性を評価した.その結果,アミンPCCを後付けした既存の天然ガス複合発電が現在の国内電力市場へ参入するケースを想定した場合,本研究で提案した外販電力を有効利用するシステム(Power-to-heatアミンPCC)は,従来のアミンPCCシステムと比較して,単位CO2回収量あたりの吸収液再生に要する熱エネルギー(再生熱量)とCO2圧縮動力のコストを顕著に削減し,NPVの増加につながることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の数理計画法モデルは,既往研究を参考に,1)CO2分離回収設備なしの火力,2)タービン蒸気の抽気により再生熱量を供給する従来のアミンPCC付き火力,3)発電ピーク時に送電網から調達した極めて安価な電力でヒートポンプを駆動させ吸収液を再生させるPower-to-heatアミンPCC,の3つのシステムを評価できる形で構築が完了している.また,文献データ収集により,システムの資本費と操業固定費の試算も実施した.現在の国内電力市場価格データを用いた場合においては,上記1)~3)の各ケースでのNPV試算およびNPVに対する経済的因子(カーボンプライシングや燃料価格など)の感度解析が一通り完了している.さらに,数理計画法モデルでの計算結果から,発電所の設備稼働率,年間CO2排出量・回収量等の運転特性や,NPVがCO2分離回収貯留(Carbon capture and storage:CCS)なしとありの場合で等価となる炭素価格すなわちブレークイーブンCO2プライスを取得し,CCSの早期実装に向けた課題を検討した.以上は当初の計画通りであり,概ね順調に研究が進められていると言える.
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今後の研究の推進方策 |
CCS付き火力は,カーボンニュートラルの達成に向けて,変動性再生可能エネルギー(Variable renewable energy:VRE)を今後大量導入する際に,電力の供給安定化および統合費用を含めたコスト削減の観点で重要となる技術である.また,CCS設備は火力発電設備と同様に数十年単位の寿命をもつ資本であり,投資意思決定には長期的な収益性の見通しが重要である.以上より,これまでのように現在の電力市場価格を用いるだけでなく,将来的にカーボンニュートラルを達成すべくVREを大量導入した電源構成シナリオでの電力市場価格を予測し,それを踏まえたCCS付き火力のNPV評価が重要である.そこで,既存の電力需給解析モデルを用いて推算されたVRE大量導入時の電力市場価格の利用を検討していく予定である.また,得られた結果から,CCS付き火力の収益性を高め社会実装を加速させていくために必要となる技術的課題やインセンティブ(炭素価格など)について考察する.加えて,高いCO2回収率での分離回収の運転や新たな吸収材料を用いた運転などについても,必要に応じてモデル内で検討を進める.
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