研究課題/領域番号 |
23K20030
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1101:環境解析評価、環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
神田 宗欣 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 研究員 (40982864)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 塩素化PAHs / 鳥類胚無卵殻培養 / ex ovo / 化学物質影響評価 / 発生毒性 / ハロゲン化PAHs / 生体影響評価 / 殻なし孵化システム / オミクス解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、殻なし孵化システムおよびオミクス解析を用いてハロゲン化多環芳香族炭化水素(HPAHs)の鳥類胚に対する毒性を評価することである。HPAHsは、大気・農作物・水生生物など世界各地のあらゆる環境・生物中から検出される環境化学物質である。HPAHsは生物濃縮性が高いため、動物に対する毒性影響が懸念されている。しかし、HPAHsの生物個体に対する毒性情報は非常に少ない。そこで本研究では、HPAHsを曝露したニワトリ胚の多様な表現型影響を経時的に観察・測定すると共に、トランスクリプトーム・プロテオーム解析を実施して各生体階層レベルの影響を調査し、有害性発現経路(AOP)の解明を試みる。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、ハロゲン化多環芳香族炭化水素(HPAHs)の一つである1-クロロピレン(1-ClPyr)のex ovoニワトリ胚に対する発生毒性の解明を目指し、研究を実施した。 まず、殻なし孵化システム用の全自動孵卵器およびニワトリ胚観察用ブラックボックスを設置し、ex ovo化学物質曝露試験の実施環境を整備した。化学物質を投与せずにニワトリ胚の無卵殻培養をおこない、孵卵9日目までに高い生存率(95.4%)を維持できていることを確認した。 次いで、1-ClPyrの曝露実験を実施した。対照群(0.1% DMSO)、0.001、0.01、および0.1 nmol 1-ClPyr/g eggを孵卵0日目のニワトリ有精卵に投与し、孵卵56時間後に割卵してニワトリ胚を無卵殻孵化装置に移動させた。孵卵3-9日目にex ovoニワトリ胚を観察し、画像・動画記録を用いて画像解析した。 孵卵7-9日目において、体長、頭+嘴長、眼直径、前肢長、および後肢長は1-ClPyr曝露群で減少を示した。生存率、胚体外血管長、および胚体外血管分枝数は、全ての1-ClPyr曝露群に有意な変化は確認されなかった。したがって、1-ClPyrは孵卵7日目以降のニワトリ胚を成長遅延させる可能性がある。また、9日目のニワトリ胚の体重は、0.1 nmol 1-ClPyr/g eggで有意に減少し、肝重量および肝重量/体重は曝露濃度依存的な減少傾向があった。一方で、心臓重量は影響を受けなかった。したがって、1-ClPyrがニワトリ胚の肝臓発達と肝機能に対して毒性作用を引き起こす可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題が採択されてから約半年間でex ovo化学物質曝露試験を実施するための実験環境を一から整備し、化学物質を投与しないニワトリ胚無卵殻培養で高い生存率を得られたことで、ハロゲン化多環芳香族炭化水素(HPAHs)のex ovoニワトリ胚に対する発生毒性を評価するための準備を完了させた。さらに、1-ClPyrの曝露実験を実施し、ニワトリ胚の表現型エンドポイントの測定に成功した。したがって、進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1-ClPyrのより高い濃度での曝露実験を実施し、生存率および表現型エンドポイントに対する毒性影響を調査する。また、今年度の実験で肝臓重量に影響が確認されたため、肝臓試料を用いたRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を実施し、mRNAの発現量を網羅的に測定する。1-ClPyrの曝露濃度依存的に発現変動する遺伝子を特定し、その作用機序および表現型との関連性について調査する。
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