研究課題/領域番号 |
23K20033
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際先導研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
人文社会系
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
浅野 豊美 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60308244)
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研究分担者 |
梅森 直之 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80213502)
小山 淑子 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (50800827)
黒田 一雄 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (70294600)
山田 満 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50279303)
高 賢来 関東学院大学, 経営学部, 講師 (60850493)
野尻 英一 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (30308233)
熊谷 奈緒子 青山学院大学, 地球社会共生学部, 教授 (10598668)
宮澤 尚里 早稲田大学, 社会科学総合学術院(先端社会科学研究所), 主任研究員 (80625476)
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研究期間 (年度) |
2023-11-17 – 2030-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
688,480千円 (直接経費: 529,600千円、間接経費: 158,880千円)
2029年度: 87,490千円 (直接経費: 67,300千円、間接経費: 20,190千円)
2028年度: 100,620千円 (直接経費: 77,400千円、間接経費: 23,220千円)
2027年度: 103,740千円 (直接経費: 79,800千円、間接経費: 23,940千円)
2026年度: 119,860千円 (直接経費: 92,200千円、間接経費: 27,660千円)
2025年度: 145,730千円 (直接経費: 112,100千円、間接経費: 33,630千円)
2024年度: 85,410千円 (直接経費: 65,700千円、間接経費: 19,710千円)
2023年度: 45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
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キーワード | 和解 / グローバルヒストリー / ナショナリズム / 集合的記憶 / 人権 / 安全保障 / 国際教育 / ジェンダー / 感情 |
研究開始時の研究の概要 |
本プロジェクトの中心となる問いは「いかにして集団間の和解は可能となるか」「集団が想像されているのと同じように、集団相互の和解が想像されるようになり得るような社会的環境や構造を探求していくこと」である。個の人権と、社会全体の発展という両極の価値の間で、記憶や感情が引き裂かれるという現象は、世界全体のポピュリズムの台頭や民主主義の劣化、そしてナショナリズムを動員した紛争の激化という今日の状況を考える際に極めて有効である。ウクライナ戦争や米中対立の激化は、そうした傾向にさらに追い打ちをかけている。世界を構造的に捉えるための知的インフラとそれを支える若手研究者・実務家グループを日本を拠点に養成する。
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研究実績の概要 |
海外の研究協力機関へ,2024年度に2人の派遣が具体化すると同時に、ドイツとアメリカの研究協力機関との間でサマープログラムの開催形式、時期、滞在に伴うビザ発給、オーバーヘッド費用の決定を行い、ほぼ具体的な枠組みが完成した。他方で、ドイツのイェナ大学との間で日本側の若手研究者の原則全員参加による2024年サマーキャンプ計画も決定された。ドイツとギリシャに滞在し、和解学の包括的な視座を、地中海地域の専門的な知見を交えて、東アジアとの比較を念頭に共に考えるにふさわしい企画となるであろう。今後の計画を建てることに専念したが、2023年度中に、すでに実現した活動としては以下のものがある。 プログラムのキックアウトの一環として2023年1月27・28日にイェナ大学のマーティン・レイナー教授と、イェナ和解学センターのローラ・ヴィラヌエバ研究員を招聘してワークショップを行った。プロジェクト参加の若手研究者がそれぞれの研究テーマを紹介しコメントを受領するとともに、上記両氏から和解学のコンセプトを報告・討論が行われた。2月8日にも、若手研究者5名の研究発表を行い、分担者と質疑応答におよんだ。専門分野の班としてグローバルヒストリー、哲学・心理、安全保障と人権、国際教育、ジェンダー・エスニシティの5つの班を設けて、5名の報告者がそれぞれの研究テーマと、上記5班の主題との関連、国際的な和解について発表した。 2023年度の夏も、準備の一環として英文ジャーナル投稿を目標として、本プロジェクトの採択を前提に合宿形式でワークショップを開催した。この延長に若手研究者コミュニティの育成に努め、その延長線上に若手の研究コミュニティーをスラック上に設けて活動中である。プロジェクト内に5つの専門班を設け、それぞれで輪読、研究発表を行いながら、全体会議と専門班の活動を有機的に連関させ、英語での発信力の育成に努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度中に全体会議を開催し、その直後から5専門班の活動を開始した。大学内で若手研究者派遣枠組み作りについて事務と打ち合わせ、プロジェクト参加者の所属、ID発行や図書館利用の手続きを進めた。早稲田大学大学院の博士課程在籍者やポスドクとで構成される37名のメンバーを、5つの専門班(2つの班にそれぞれ所属)に分け研究者コミュニティーとした。グローバルヒストリー班は、参加者それぞれの研究の視点を把握し、議論するために文献リストを作成した。たんに広い地域を研究対象とするという茫洋とした取り組みではなくて、検討対象への深く詳細な検討を通じ、その成果を広い文脈に置き議論するための理論的基礎の構築が目指されている。哲学・心理班は『和解学叢書』第2巻の理論的考察の文献を中心に輪読を進めつつ、この班主体のシンポジウムを開催した。安全保障と人権班は、人権概念の歴史的起源の考察、ならびに人権規範の拡散と権力政治や伝統的安全保障との衝突の考察に向け、担当の割り振りを行なった。同班の活動は、現実主義と理想主義との古典的な対立を既出の議論として軽視することなく、根源的な問いに立ち返り、この難問を正面から扱うものとなる。国際教育班は、2024年7月の国際和解学会への報告申請を積極的に行い複数名がアクセプトされた。また他班のメンバーに国際教育学を紹介することとあわせて、和解学の基礎的な研究を主に英文で収集している。ジェンダー・エスニシティ班は班名にある二つの主題それぞれの専門性に注意しながら、両者の交差性について議論を進め、月例で輪読会を開催している。移民の歴史や現在の国際紛争についての文献を講読し、歴史学と構成主義の理論との関係など、多様な専門分野から集まったメンバー間で学際的な議論を進めている。こうした活動を中心に、若手研究者が切磋琢磨していく形で本プログラムを始動することができた。
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今後の研究の推進方策 |
海外との恒常的な接触による啓発に向けて、以下の企画を計画している。まず、英語による国際共同研究に向けて、海外の研究者との出会いの場を設けていく。2024年6月末に、イェナ大学の和解学センター10周年のイベントに参加し、次いで7月1日からの国際和解学会(イタリア、アッシジ)でプロジェクトメンバーの若手研究者が10名程度報告する。8月18日から9月3日までイェナ大学を中心とするサマーキャンプをドイツ及び、ギリシャで開催する。アジアと欧州の現代的な紛争を扱う研究者が多い本プロジェクトであるが、この機会に東地中海地域における紛争と比較を念頭に、「国際」和解学の充実に向けて研究を推進していく。このサマーキャンプは、「歴史、記憶、和解の生態系」とのタイトルで、和解学に関する包括的な報告や、ドイツ、およびキプロスに関する研究発表が予定されている。ドイツ滞在時にはベルリンを中心に、東ドイツ博物館、あるいはナチ・ドイツ期のホロコーストを扱った博物館をめぐり、「歴史、記憶、和解」をめぐる研究と社会との接触面に身を置くことで、若手研究者の問題意識を触発するような企画を考えている。ギリシャのカバラへ移動し、そこで東地中海地域に関するワークショップを行い、さらにギリシャのイスラム教コミュニティ、およびキリスト教の使徒パウロに関わるものをはじめとして、アレクサンドロス大王やアリストテレスに由来する各種の遺跡を前にして、知識と問題関心のさらなる拡充を目指している。
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