研究課題/領域番号 |
23K20067
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補助金の研究課題番号 |
20H01200 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木下 千花 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60589612)
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研究分担者 |
谷 慶子 立命館大学, 映像学部, 准教授 (00870453)
鷲谷 花 一般財団法人大阪国際児童文学振興財団, その他部局等, 特別専門員 (10727100)
ワダ・マルシアーノ ミツヨ 京都大学, 文学研究科, 教授 (10796238)
菅野 優香 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (30623756)
斉藤 綾子 明治学院大学, 文学部, 教授 (90339573)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | ジェンダー / 映画産業 / 女性労働 / 日本映画史 / ポストコロニアリズム / ドキュメンタリー / フェミニズム / クィアスタディーズ / セクシュアリティ / クリエイティブ労働 / 映画産業史 / 女性史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、資料や聞き取り調査に基づき、日本の映画産業における女性たちの仕事の在り方と業績、その社会的・歴史的な文脈との関係を明らかにする。さらに、こうした歴史研究とジェンダー、セクシュアティと作家性をめぐる理論的な問題の関係を検討する。これまで個別の研究者によって行われてきたフェミニスト映画史研究を相互に接続するプラットフォームを構築し、関心を共有する海外の研究プロジェクトと連携し、英語による発信を行う。ウェブサイトや講演・上映会によって研究成果を社会に還元し、女性パイオニアに対する一般の関心に答えつつ、「座学」(歴史・理論・批評)と「現場」との連携を深める。
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研究実績の概要 |
本年度、「日本映画における女性パイオニア」プロジェクトのウェブサイト(https://wpjc.h.kyoto-u.ac.jp/)では、美術監督・村木忍についての冨田美香(研究協力者)のエントリーの編集を終え、公開を行った。スクリプター/脚本家・白鳥あかねについてのエントリーについて編集と図版の権利クリアを終えた。 10月に開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭と本プロジェクトの共催事業として女性映画作家でありポストコロニアリズムの理論家・作家であるトリン・T・ミンハ(カリフォルニア大学バークレー校教授)を招聘した。同映画祭に参加し、菅野優香(研究分担者)とともにトリン氏の作品『ホワット・アバウト・チャイナ』(2022年)についてインタヴューを行った。インタビューは文字起こし・編集を経て同映画祭ウェブサイトで公開される。10月14日に京都の出町座でも同作品を上映、菅野・木下に加え、中国文学研究者の津守陽氏をゲストに迎え、トリン氏とアフタートークを行って、歴史や記憶の問題、中国の美学的伝統と現在の政治状況などについて一般の観客も交えて議論した。 研究代表者は、原一男監督『極私的エロス 恋歌1974』におけるプロデューサーおよび出演者とウーマンリブ運動との関係、上映活動とリブ運動の文脈における受容について資料収集と分析を進め、京都大学人文学研究所「家族と愛」研究班で研究発表を行い、社会学や心理学など他領域の研究者から貴重なフィードバックを得た。2023年3月に開催されたSociety for Cinema and Media Studies年次大会に参加し、研究交流を行うとともに、同研究を発展させ、英語で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トリン・T・ミンハ氏の招聘が可能になるなど、当初は計画していなかった機会に恵まれたため、年度開始時に計画していた日本の女性映画人についての上映会・シンポジウムから変更し、トリン氏作品の上映およびトークを行った。そのため、研究費やエフォートをトリン氏との研究交流とアウトリーチに振り向ける結果となり、「日本映画における女性パイオニア」サイトにおけるエントリーの依頼、執筆、編集、公開の作業に遅れが出ている。本プロジェクトは実績を持ちと研究能力の高い分担者から成るため、独立して研究を進め、業績を上げ、学会やメディアでも関心を集めているが、プロジェクトとしての活動をさらに進める必要がある。 研究代表者の研究においては、『極私的エロス』についての研究を進めるなかでウーマンリブ運動における映画の上映と受容について資料的な発見があり、メディアと身体を結びつけるポール・B・プレシアドの理論を使って同作を論じることについても手応えを得るなど、大きな発展があった。コロナ禍収束後、初めて大規模な国際学会Society for Cinema and Media Studiesの年次大会に参加し、英語圏のフェミニスト映画史家たちとの研究交流を行ったことには大きな意義があった。 このように、全体的に見たとき、国際交流および発信、研究代表者の研究のうえでは順調な成果を上げているが、本プロジェクトの基盤となるウェブサイトにおける活動に遅れを生じさせる結果となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
5月中にメンバー全員と編集者で一度Zoomでミーティングを行い、現在の進捗状況と最終年度の計画を確認する。ウェブサイトでの女性パイオニア解説記事の出版は、昨年度、研究代表者のエフォート調整がうまくゆかずに進行に遅れが出てしまい、入稿済みであるにもかかわらず編集中の原稿が2本あるので、この2本を夏までに公開する。Zoom会議の結果に基づき、入江たか子、水の江瀧子、水木洋子、吉屋信子をはじめとしたパイオニアのエントリー記事を隔月でウェブサイトに公開するとともに、Xでの情報発信も継続する。また、谷慶子(研究分担者)と研究代表者で協力し、スクリプター脚本の整理と解読を行う。 9月までに論集の目次および企画書をまとめ、MLを通してメンバーの助言を得て、Zoomミーティングを開いて決定する。本プロジェクトは女性パイオニアの発掘という点ではウェブサイトを中心に広く関心を集め、成果も上がっているので、論集はウェブサイトのエントリーとはテーマ的には重なりつつも、映画学とジェンダー・セクシュアリティ研究への学術的貢献を目指す。本科研費を継続する形で別の競争的資金を獲得する。 2月に京都文化博物館と共催で成果発表の公開シンポジウム・上映会を2日に亘って開催する。研究メンバーが公開エントリーを補完する発表を行うとともに、外部のフェミニスト映画史家を招き、吉屋信子原作の作品を上映する。最後の共同討議では、この5年間のプロジェクトの総括と価を行う。 Society for Cinema and Media Studiesにおいて「日本映画における女性パイオニア」プロジェクトとしてパネル発表を行い、英語圏で活動するフェミニスト映画史家と交流し、フィードバックを得る。
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