研究課題/領域番号 |
23K20090
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補助金の研究課題番号 |
20H01256 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
澤田 英夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (60282779)
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研究分担者 |
加藤 昌彦 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 教授 (30290927)
倉部 慶太 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (80767682)
新谷 忠彦 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90114800)
大塚 行誠 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 准教授 (90612937)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | ビルマ(ミャンマー) / チベット=ビルマ系言語 / 音韻変化 / 文法化 / 言語類型論 / ビルマ(ミャンマー) / チベット=ビルマ系言語 |
研究開始時の研究の概要 |
言語学的にみてビルマは,民族移動やその結果としての言語接触に起因する驚くべき言語多様性を示す地域であるが,その言語多様性が保たれる期間は長くはない。本研究課題は,科研費基盤(B)「ビルマの危機言語に関する緊急調査研究」(研究代表者:倉部慶,2017‐2019年度)の発展形として,少数民族言語の基礎資料の蓄積をさらに推し進め,併せてこれまでに成された言語現象の記述や解釈に関するアップデートも行い,それらデータの蓄積を支えとして,音声・音韻,文法,語彙の各分野において,系統的・類型的に関連付けられる言語群のなす体系や,言語群相互の類型論的位置づけに関する俯瞰像を与えることを目標とする。
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研究実績の概要 |
(1)現地調査:分担者大塚は、9月と2月の2回各1週間程度ミャンマーに渡航し(別経費による)、ヤンゴンでタウンダー語の基礎語彙調査、アショー・チン語の文法調査などを行った(謝金を支給)。また、本学大学院博士後期課程に在学する張元宗氏を研究協力者として、氏の研究対象であるビルマ系言語ポラ語の調査のため、氏の母国で調査に制約のない中国の雲南省芒市に約2ヶ月派遣した。 (2)国内に居住する、研究対象言語あるいはそれと系統の近い言語の話者を対象にしたZoomによる対面調査:代表者澤田が行った、日本在住の話者に対するラチッ語・ロンウォー語の語彙・用例調査、分担者加藤が行った、日本在住の話者に対する東部ポー・カレン語とスゴー・カレン語の適用構文マーカーについての調査がこれに当たる。 (3)動画・音声ファイルの音声書き起こし: 分担者加藤は、東部ポー=カレン語による仏教法話、食文化や伝統行事の紹介、長編ドラマ、寸劇、ニュース、漫談、ライブ放送、教養番組など、様々な内容の動画の音声書き起こしを母語話者の協力を得て引き続き行った。また、代表者澤田は、過去の現地調査で収録した語りや会話のうち未分析のものについて、母語話者の協力を得て書き起こしと注釈を行った。 (4)データの整備:分担者倉部は、ジンポー語話者の協力を得て、過去の現地調査で収集したカチン民話の英訳を新たに108話分行い、言語アーカイブParadisec上に公開した。分担者大塚は、現地調査で収集した言語資料のデータ入力を行った。 (5)本科研の今年度までの調査や、先行科研「ビルマ危機言語科研」による調査で得たデータ・研究成果を、国内外の学会やワークショップなどの口頭発表、論文執筆や、分担者新谷による2冊の語彙集出版などの形で公開した。 (6)年度末にZoomで会合を持ち、今年度の総括と来年度の展望、特に成果公開の様々な手段について話し合った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミャンマー国内の治安状況により、対象言語発話地域における現地調査が実質不可能な状況の下、ヤンゴンにおける短期現地調査や、調査可能な隣接地域での現地調査(研究協力者による)を行う一方、昨年度までのオンラインインタビュー調査や各種オンラインリソースの利活用も引き続き行い、データの蓄積や整備とそれに基づく研究を継続している。 例を挙げると、代表者澤田は、以前の現地調査で収集したロンウォー語の音声データを詳細に再確認することで、ロンウォー語の音節弱化に第1段階(母音が変化しない)と第2段階(母音が変化する)の2段階があることを導き出し、より弱化の度合の低い第1段階の音節弱化が、これまで一般に弱化が起こらない環境とみなされてきた語末や句末にも頻繁に起こることを発見し、国際学会でその現象について報告した。 分担者大塚は、ティディム・チン語の適用態についてのデータを拡充する調査を継続して行っているが、分担者加藤もポー・カレン語に少なくとも10の適用態標識があることを調査によって明らかにした。同じチベット・ビルマ系に属していながら基本語順が正反対であるこの2つの言語に似通った現象があることは興味深いことであり、これらの研究が相互に影響を与えることで類型論的に興味深い知見がもたらされることが期待される。 現地調査が困難な状況においても、各分担者がそれぞれの研究対象言語について基礎的な資料の蓄積と整備を着実に行ってきたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ミャンマー国内、特に地方の治安状況は残念ながら悪化している。ヤンゴンやマンダレーといった大都市の治安も楽観はできない状況であり、これら大都市域での調査を行う場合にも最大限の注意を要する。加えてミャンマーのインターネット事情も良好とは言えず、インターネット電話を介したインタビュー調査にも制約が生じてきている。ゆえにオンラインインタビュー調査は日本在住の話者対象、ミャンマー在住の話者に対してはテキストベースの調査、という形をメインとせざるを得ない。音声データ入手と分析、録音およびオンライン上の動画からの書き起こしによる電子化テキスト(録音に基づく場合はその音声も)の拡充も継続して行う。本科研で行ってきた調査や過去の現地調査で得たデータ・研究成果の公開も、口頭発表や学術雑誌への投稿、語彙集の刊行などの形で引き続き行っていく。最新の現地情報や研究動向の共有も、Zoomを利用した打ち合わせによって行う。
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