研究課題/領域番号 |
23K20112
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補助金の研究課題番号 |
20H01337 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
内村 俊太 上智大学, 外国語学部, 教授 (90710848)
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研究分担者 |
立石 博高 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (00137027)
高澤 紀恵 法政大学, 国際日本学研究所, 研究員 (80187947)
宮崎 和夫 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40251318)
久木 正雄 法政大学, 国際文化学部, 准教授 (20846737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 複合君主政 / 複合国家 / 公共善 / 近世国家 / 民衆層 / 地域国家 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、16~17世紀のスペイン近世国家が中世以来の各地の法的・政治的な伝統と体制を維持した複合国家であったとの認識を出発点として、各地域固有の文脈に即した王権・特権身分層・民衆層によるコンフリクトを含む三者関係を分析することで、近世国家を成り立たせていたダイナミズムを研究する。 そのために、現在のスペイン各地だけでなく、ポルトガル、イタリア、アメリカ大陸の諸領も対象とし、かつフランス近世国家との異同を視座とすることで、近世固有の国家秩序のあり方とその解体プロセスを総合的に捉える。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実績としては、本研究組織の参加者が各分担におけるフィールドでの個別研究を進める一方で、出版物をつうじて本研究に関連する成果を公にした。 高澤紀恵(研究分担者)・竹下和亮(研究協力者)が編集・執筆・翻訳に関わった高澤紀恵、ギヨーム・カレ編『「身分」を交差させる―日本とフランスの近世』(東京大学出版会、2023年)の公刊によって、フランスと日本の近世国家・社会を成り立たせていた「身分」の具体的な意味内容の解明が進められ、近世のスペインとフランスを比較する本研究にとっても重要な知見が学界に共有された。 また立石博高(研究分担者)・竹下和亮(研究協力者)の共訳によるクリシャン・クマー『帝国―その世界史的考察』(岩波書店、2024年)では、歴史社会学の観点から古代から現代にかけての世界史の底流としての帝国の位置づけが示されることによって、帝国論・国民国家論を前提としてヨーロッパ近世国家としてのスペイン・フランスを分析する本研究にとって不可欠となるパースペクティブが共有された。 個別研究としては内村俊太(研究代表者)が、アメリカ植民地も含むスペイン近世国家にとっての政教関係を18世紀も視野に入れて研究ノートとして整理する一方で、スペインにおける現地史料調査(トレード大聖堂文書館等)を行って、カスティーリャ王国としての在地社会における公共善のあり方に関する実証研究の進展を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度までの本研究はおおむね順調に推移していると判断できる。 2023年度は前述のように高澤紀恵、ギヨーム・カレ編『「身分」を交差させる―日本とフランスの近世』とクリシャン・クマー(立石博高・竹下和亮訳)『帝国―その世界史的考察』が公刊されたことで、比較史的または巨視的な視点からの近世国家研究において学界に対する貢献がなされた。本研究は、ヨーロッパ近世史学における複合国家論・複合君主政論を前提とし、16、17世紀のスペイン近世国家を構成した諸地域における王権・特権身分層・民衆層が公共善をめぐって形成するダイナミズムを考察対象とするが、前記の『帝国』は歴史社会学的な視点から通時的に帝国論を再検討することで、近世的グローバル化のなかで広域支配を実現したスペイン近世国家の分析に大きく資する。また、近世の社会構成原理としての身分についてフランスと日本の事例に即して研究状況を深化させた『「身分」を交差させる』は、スペイン近世国家を構成する各地域それぞれに固有な身分のあり方、またそれを前提とする公共善のあり方を考察するためにも、重要な比較材料を提供する。 その一方で、本研究がスタートした2020年度から始まった新型コロナウイルスのパンデミックの影響が減衰したことで、現地での史料調査も本格的に再開することが可能になった。2022年度にも既に他予算を活用して内村俊太がスペインでの現地史料調査を再開していたが、2023年度も本科研費によってスペインでの調査(トレード大聖堂参事会文書館を中心とする)を続行した。トレードは、スペイン近世国家のなかで中心的な位置にあったカスティーリャ王国の在地社会のモデルケースであると同時に、最大の大司教座であるためカトリック君主国を統治する王権と教会権力の関係性を考察するために、聖堂参事会が作成した各種史料を調査することで具体的な知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は本研究の最終年度となる。したがって、一方では引き続き個別研究のための文献調査・史料調査を深めつつ、他方では研究組織の各メンバーの分担にもとづく個別研究の成果を研究組織としてとりまとめる段階に入る。 前述のように本研究は、16~17世紀のスペイン近世国家を複合国家論・複合君主政論にもとづいて近世ヨーロッパにおける複合国家の典型例として捉えることを出発点として、各地域において固有の法と政体を中世から形成してきた地域国家の特権身分層と、複合国家全体を統治するハプスブルク王権との関係性を軸の1つとして近世国家のメカニズムを考察する。さらにもう1つの軸として、複合国家論・複合君主政論では後景に退きがちであった各地域の民衆層の動向を公共善をめぐる緊張関係の観点から加味することで、王権・特権身分層・民衆層の三者関係によるダイナミズムを近世的複合国家を成り立たせていた、あるいはそれを解体させうる契機として考察する可能性を検討する。 そのために2024年度には複数回の定例研究会を実施しながら、研究組織メンバーによる個別研究の進展について共有したうえで、スペイン近世国家のメカニズム理解に資する研究成果の発表に向けての準備を加速する。
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