研究課題/領域番号 |
23K20118
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補助金の研究課題番号 |
20H01351 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
三宅 俊彦 淑徳大学, 人文学部, 教授 (90424324)
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研究分担者 |
櫻木 晋一 朝日大学, 経営学部, 教授 (00259681)
小林 淳哉 一関工業高等専門学校, その他部局等, 校長 (30205463)
小田 寛貴 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (30293690)
菊池 百里子 (阿部百里子) 東京大学, 東洋文化研究所, 助教 (50445615)
古賀 康士 同志社大学, 経済学部, 准教授 (50552709)
松英 達也 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 教授 (60270352)
宮城 弘樹 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (70757418)
中村 和之 函館大学, 商学部, 教授 (80342434)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 貨幣考古学 / 東ユーラシア / 文化財科学 / 歴史学 / 博物館学 / 銭貨 / 出土銭貨 / 中近世 |
研究開始時の研究の概要 |
東ユーラシアにおける貨幣考古学の研究基盤を構築するため、学際的研究を進める。 東ユーラシアにおける出土銭の考古学研究は、共通の研究基盤が必ずしも確立されているとは言えず、統合された論理的枠組みと研究手法による「貨幣考古学」という研究分野の基盤構築が求められている。 本研究では上記目的のため、考古学分野から当該地域における出土銭の資料化と分析を進め、文化財科学では成分分析・年代測定・残留応力・クラスター分析・鋳造技術復元などによる分析手法の確立を目指す。また文献研究や博物館資料論などの視点も取り入れ、総合的な研究基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実績の概要は、以下の通りである。 考古学分野では、まず国内の出土銭の調査を広く実施した。沖縄では博物館等に収蔵されている鳩目銭を調査し、比較検討を行った。九州では福岡市博多遺跡群、熊本県砥川古銭の寛永通寳鉄銭の調査などを実施した。本州では前橋市総社村東03遺跡の一括出土銭の調査を行った。また北海道では市立函館博物館収蔵の志海苔古銭の調査を実施した。また涌元古銭の報告書の刊行準備のため、データの再調査もおこなっている。海外では台湾の調査を実施した。十三行遺跡および淇武蘭遺跡で出土した銭貨を実見し、基礎的データの収集を行った。 文化財科学分野では、まず青銅器の年代測定においては、加熱分解法では年代に有意な差異があることが判明した。低温加熱ほど資料の年代を正しく示している結果が得られたが、十分な炭素を抽出することが不可能である。そこで、従来法よりも少量で測定が可能なセメンタイト法の検討を開始した。機械学習による銭貨の写真データをクラスタリングする研究では、基本的なアルゴリズムを提案し、類似度を数値として出力できるようになった。X線回折に関して、今年度は昨年のデータベースに新たに23種のデータを加えた。さらに、岡山銭と呼称される古銭に対し、データベースがどの程度の有用性を示すか試行を行い、AIを活用した鑑定手法の方向性を見いだせた。また、鋳造による古銭の再現実験においては、特定の添加元素が結晶相の形成に大きな意味を持つ可能性を示すデータの収集ができた。 博物館学の分野では、前述の台湾における十三行遺跡博物館での調査を実施した。またデンマーク国立博物館の収蔵資料のカタログが刊行された。歴史学の文献研究では、近世期長崎における鋳銭関係史料の分析などを行った。 また分担研究者がそれぞれの研究に関して、内外で計10件の学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず考古学分野の研究であるが、新型コロナウイルスの影響により、予定していた海外調査が複数年にわたり実施できないなど、当初の計画を変更せざるを得ない状況があったが、2023年度は台湾において海外調査を実施できた。台湾では十三行遺跡の出土銭46枚、および淇武蘭遺跡で出土した銭貨236枚を実見し、基礎的データの収集を行った。また国内では多くの資料調査を実施した。九州では福岡市博多遺跡群の出土銭貨(第216次調査、243次調査など)、熊本県砥川古銭に含まれていた寛永通寳鉄銭798枚の古銭学的細分類などを実施した。本州では前橋市総社村東03遺跡18号土坑出土の10万枚を超える一括出土銭の調査を行った。また北海道では市立函館博物館収蔵の志海苔古銭のうち、洪武通寳と不明銭の調査を実施し、涌元古銭の報告書の刊行準備のためのデータの再調査も行っている。 文化財科学は、ほぼ予定通りに進んでいる。年代測定では、より少量の資料で年代測定を行える技術の開発を進めている。さらに機械学習によるクラスター分析の手法や鑑定手法、X線回折による鋳造技術からの分類手法の確立においても、一定の伸展をみた。 博物館学の分野では、デンマーク国立博物館の収蔵資料のカタログが刊行され、分担研究者の櫻木晋一が当該博物館より表彰されたほか、Royal Numismatic Society 2023年のメダルを日本人として初受賞している。歴史学の文献研究では、近世期長崎における鋳銭関係史料の分析や、中国・ベトナムの貨幣利用についても一定の成果を得ている。 前年に引き続き対面で研究会を実施し、情報共有ができた。分担研究者と研究協力者の研究進捗状況の報告のほか、琉球大学大学院において沖縄の出土銭研究を行っている中程祐輝氏を招き、研究発表も実施した。 上記の点から、おおむね順調に伸展していると評価できよう。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究課題の最終年度となる。そのため新たに取り組む研究は最小限にとどめ、研究成果の取りまとめを進める予定である。 考古学分野では国内外における調査研究の成果をまとめる。その際には必要に応じて、小規模な調査も実施する。国内では報告書作成および研究のさらなる発展課題を確認するため、北海道の市立函館博物館での銭貨収蔵資料の調査を実施する予定である。合わせて道南の一括出土銭資料の報告作成のための調査も、行いたい。国外では、モンゴルの出土銭、ベトナムの一括出土銭資料の調査成果を取りまとめる作業に取りかかる。今年度内に成果報告を行うことを目指す。 文化財科学分野においても、成果のとりまとめに入るが、必要に応じて調査研究も実施する。年代測定分野では、従来法よりも少量で測定が可能なセメンタイト法の検討を進める。また機械学習による研究では、基本的なアルゴリズムにより類似度を数値として出力できるようになったため、今年度はより多くの資料で確認作業を実施し、プログラムの修正によって識別精度を高める方向で研究を進める。 博物館学・歴史学の分野でも、これまでの成果をまとめる方向で研究を進める。前述のベトナム・ハティン省博物館収蔵の一括出土銭資料の調査成果について、研究報告を取りまとめる予定である。歴史学の文献研究においても、同様に研究成果のとりまとめを行う。 各分野の研究成果については、年度末に研究集会を開催し、それぞれの成果の情報共有を図る予定である。またその際に、発表を取りまとめた成果報告集を編集・刊行し、広く研究成果の公開に努めたいと考えている。そして今回得られた研究成果を土台とし、解明すべき新たな研究課題を抽出することで、当該分野の発展を目指した新しい研究プロジェクト構築の基礎としたい。
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