研究課題/領域番号 |
23K20145
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補助金の研究課題番号 |
20H01477 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀井 亮 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90324855)
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研究分担者 |
生藤 昌子 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 教授 (60452380)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 経済成長 / 定常成長 / ナイフエッジ性 / 技術進歩 |
研究開始時の研究の概要 |
定常成長経路(Balanced Growth Path: BGP)と呼ばれる定常成長経路を理論的に導出するために、既存の経済成長モデルは2つの強い制約が成り立つと仮定して組み立てられている。一つは、技術進歩は労働増加的であるということ、もう一つは技術進歩の背景にある外部性が特定の弾力性を持つという制約である。しかし、そのような制約は実証的に支持されていない。これらの制約を克服する理論を構築することを目指すのが本研究の概要である。
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研究実績の概要 |
研究代表者堀井は、資本財の生産性が上昇しているというデータと、現在のマクロ経済学モデルの設定(すべての生産性上昇が労働生産性上昇により説明される)の齟齬の解決するため、従来知られている「Uzawa Growth Theorem」を拡張し、よりロバストな設定においても定常成長を導けることを示した。トップジャーナルであるJournal of Political Economyに投稿したところ、新しい専門ジャーナルであるJournal of Political Economy Macroeconomicsにトランスファーされ、Revise and Resubmitのリクエストを得た。 また、内生的経済成長理論における、外部性の条件に注目した研究も行っており、Non-Exponential Growthという新しい成長理論のプロトタイプを開発している。複数の大学の研究会において中間成果を口頭報告した。 日本において経済成長を復活させるための条件について、理論的解説を日本経済新聞で連載した。また、円高と日本の経済成長の低迷の関係について、テレビ番組でも解説することで、一般への経済成長理論の理解を高めるための貢献を行った。 分担者である生藤と共同して、データから観察された先進国と途上国におけるGDPとCO2排出と異なる関係について理論モデルの構築可能性を検討した。経済成長が停滞していながら環境負荷が下がっていない日本と、成長しつつ環境負荷が減少している欧州の実情をデータで分析し、環境省に於ける審議会でも報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な成果の一つである論文が、Journal of Political Economy MacroeconomicsでRevise and Resubmitのリクエストを得るなど、順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
既存の成長モデルは、下記のような技術と生産の関係についての制約を課している。「集計的生産関数がCobb-Douglas型である場合を除き、長期的な技術進歩はすべて「労働増加的」でなければならない。」通称、宇沢の定理と呼ばれる。(Uzawa 1961 RES)。しかし、マクロ生産関数の資本・労働の代替弾力性の推定値は1以下であり、Cobb-Douglas型生産関数は当てはまらない。一方、コンピュータ等情報機器の品質調整済み価格データは急速に下落しており、同じ実質投資額でより多くの処理能力が得られる「資本増加的技術進歩」が起こっていることを示している。そこで、実証結果と整合的かつ、長期成長を説明する理論を構築した。この論文は改訂請求を受けており、さらに完成度を高めるつもりである。
内生的経済成長理論における、外部性の条件に注目した研究も進めている。既存のほぼすべての内生的経済成長理論では、過去の研究・技術開発から、将来の技術に対して、何らかの形の外部性があることを必要としているが、その外部性の弾力性は特定の値をとらなければ定常成長は実現しない。その制約を緩和し、よりロバストな設定での成長を可能にする方法について研究を進めている。
また、研究分担者の生藤と共同で、環境面を考慮した長期の成長持続性についても研究を進める予定である。経済成長が停滞していながら環境負荷が下がっていない日本と、成長しつつ環境負荷が減少している欧州の実情を統合的に説明するモデルを検討している。具体的には、環境に関係のない財の付加価値を上げるイノベーションと環境負荷を下げるイノベーションを導入することを考えている。その状況における環境政策が、成長や汚染排出に与える影響を分析したい。
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