研究課題/領域番号 |
23K20150
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補助金の研究課題番号 |
20H01503 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
大木 良子 法政大学, 経営学部, 教授 (20612493)
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研究分担者 |
若森 直樹 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50770921)
石原 章史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80643668)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | プラットフォーム / マルチホーミング / 競争政策 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、プラットフォーム市場における消費者のマルチホーミング(=複数のプラットフォームに参加すること)を考慮に入れた理論研究および独自調査によるデータ構築により、理論、実態の両面からプラットフォーム市場の競争のメカニズムを明らかにすることを試みる。特に、消費者が利用するプラットフォームの組み合わせや利用割合などを市場横断的、時系列的に把握する新奇性の高いデータを構築し、理論研究を活かしたデータ分析によって市場の競争メカニズムを把握し、競争政策的示唆を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、プラットフォーム市場における消費者の利用実態を大規模なサーベイデータにより把握し、市場における競争のメカニズムを解明すること、またデータの分析結果を活かした理論分析と現実の事例とを組み合わせて、プラットフォーム企業に対する望ましい規制の考え方を整理することも目的としている。 2023年度も初年度以来継続している消費者への大規模調査を実施し、新たなデータを得ることができた。加えて、2020年度から蓄積された複数年のデータを用いて記述統計的分析を行うことができた。ここまでの分析の結果の一部として、決済手段に焦点をあて、石原・大木・若森での共著論文「決済プラットフォームの現状と展望」をとりまとめ2023年11月交通経済研究所発行の雑誌『運輸と経済』に掲載された。 加えて、本研究課題で入手できた独自データから得られた実態と、経済モデルによる理論分析の結果を融合し、新たな示唆を導出することができた。具体的には、音楽配信プラットフォームと動画配信プラットフォームでの消費者の複数利用(マルチホーミング)の程度が異なるという調査結果を説明する1つの理由として、プラットフォームと売り手であるコンテンツプロバイダーとの料金設計が異なることが挙げられる点を理論モデルにより解明した。この理論研究の成果は、2023年12月京都大学経済研究所ミクロ経済学・ゲーム理論研究会、2024年1月キヤノングローバル戦略研究所Workshop of Search and Platform、また2月には大木が委員として参加している経済産業省「プラットフォームエコノミクス研究会」において研究報告を行った。これらの報告の機会において、関心の近い研究者および政策立案者から、今後の研究や政策的示唆の導出に向けたインプットを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、独自調査によるデータの構築と、それを活かした理論研究の2つを大きな柱としている。それぞれ概ね計画どおりに進捗している。 データ構築の点では、2020年の研究課題開始以降、研究費のほとんどを投入することにより毎年大規模な消費者アンケートを実施することができている。また、並行してデータの記述統計分析を行うことにより、翌年の調査項目をアップデートしてきた結果、経年調査が必要な調査項目を固めることができた。また、本調査の意義を政策担当者や関心の近い研究者、またプラットフォームビジネスに関わる事業者にも広く伝える努力を続けており、一定の認知や理解を得られてきている。本研究が行っている調査は市場の理解のための基礎的な調査であると考えており、その継続そのものにも価値があると考えている。今年度も継続することにより計5年間のパネルデータを構築することができ、最低限の実証分析に足るデータになると予想している。またこれまでに本研究課題の共同研究者3名の間で、また3名それぞれがプロジェクト外の研究者と積み重ねてきた議論により分析の視点が整理されてきており、今後はそれらの視点の政策的示唆を導出する作業に取りかかれる。 理論研究の点では、データの記述統計分析により把握された実態を反映させた複数の新しい経済理論モデルを構築することにも取り組むことができており、その一部については、研究期間内の英文査読付き学術誌への投稿に向けて順調に作業を進めている。 以上から、当初の計画どおりおおむね順調に進められていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も消費者調査を継続し、この5年間の変化の追跡を可能にする。またこれまでに得られたデータの記述統計分析を行い研究書としてとりまとめることを目標に、これまで得られている分析結果と既存研究、理論分析の成果、各国規制の動きや事例を有機的に結びつけ、市場全体の理解に努める。 特に、本研究により構成されたデータによって初めて把握することができるようになった、同時に利用しているプラットフォームの組み合わせ(マルチホーミングのパターン)や、プラットフォームのスイッチ(乗り換え)について、その実態把握と要因の考察を行うことにより、競争が緩やかな消費者グループと厳しい消費者グループとが存在すること、またプラットフォームによるエコシステム形成の強弱がこのような消費者グループを形成することを予測している。このような仮説をデータ分析により明らかにすることで、市場の理解の助けとなり、競争政策的示唆を導出できる。 また研究書執筆の過程で、直近の国内外の競争政策の動向、また競争政策上問題とされた事例の把握も行う。消費者のマルチホーミングが競争にもたらす影響を中心に据え、データと経済理論、そして現実の競争政策の3つの視点から、市場を理解してきた本研究の集大成とすることを目指す。 さらに、消費者のマルチホーミングを考慮にいれた経済理論モデルの分析を行う。売り手企業―プラットフォーム-買い手(消費者)の3段階で構成される市場における、対プラットフォームの料金体系やプレイヤー間の交渉力の配分、スイッチングコストや参加に伴うコスト、製品差別化、エコシステム形成を考慮した理論モデルの構築に取りかかっている。売り手の対プラットフォームの料金体系と交渉力を考慮にいれたモデルについては2024年度の英文査読誌への投稿のめどが立っている。その他のモデルもまず研究書に向け基礎的な分析を行う。
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