研究課題/領域番号 |
23K20155
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補助金の研究課題番号 |
20H01524 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
山崎 志郎 東京都立大学, 経営学研究科, 客員教授 (10202376)
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研究分担者 |
竹内 祐介 東京都立大学, 経営学研究科, 准教授 (30711238)
林 采成 立教大学, 経済学部, 教授 (40760228)
河村 徳士 城西大学, 経済学部, 准教授 (80726191)
見浪 知信 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (80824309)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 戦後経済復興 / 占領政策 / 物資需給計画 / 物資輸送計画 / 貿易政策 / 貿易再開 / 冷戦 / 米軍占領政策 / 韓国軍政庁 / 傾斜生産方式 / 機械工業 / 民間貿易再開 / 経済復興会議 / 配給公団 / 国家管理貿易 / 陸送転移 / 海送転移 / 自動車輸送事業 / 米国占領政策 / GHQ |
研究開始時の研究の概要 |
復興システムの根幹を担う物資需給計画、輸送計画については、山崎が毎年1年度計画ごとに計画の立案、実施過程を詳細に分析した。この結果、従来ほとんど知られていなかったGHQと経済安定本部との関係や政策の実態が解明された。また、戦時から復興期に物資、旅客輸送の根幹を担った国鉄の再建、輸送力増強計画、貿易再開と貿易商の動き、電気機械工業の復興、米軍占領政策の日韓比較など、多くの新事実を提供した。
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研究実績の概要 |
復興経済システムの全体像の解明に向けて、次の研究を進めた。 1.1948年度物資需給計画と陸上輸送・海上輸送計画を明らかにした。まず、日本と周辺アジアの復興に向けてEROA予算が組まれ、日本の鉱業原材料の輸入が拡大した。低迷を続けた鉄鋼生産が拡大し、機械設備の補修・生産が本格的に再開された。GHQは米国のアジア開発戦略の一環として、鉄鋼輸出の拡大、北米およびアジアからの1次産品輸入に協力した。重要物資の需給ギャップは48年度から縮小し、ドッジ・デフレによって需要の伸びが鈍化し、需給調整自体の必要性が下がったことを解明した。 2.終戦直後から構想されながら、鉄鋼等の資材割当不足で本格実施ができなかった鉄道輸送力の復興計画の策定過程と、運輸省の1次資料を利用して解明した。第1に当時の運輸省鉄道総局の立場を検討することで、同機関によって立案された鉄道復興計画の基本的性格(「輸送力」計画)を考察した。第2に、1945年~1948年にかけて立案された三度の復興計画の内容の変遷を確認し、その中で特に石炭節約策に着目することで、当時の運輸省鉄道総局による鉄道復興計画の持つ限界について考察した 3.1948年に民間貿易の本格的再開が始まり、多くの海外輸出商が来日し、日本側と商談を開始する経緯を、国別、取引物資別の動向を国会図書館所蔵資料などから検討し、政府間貿易に代わって民間業者が貿易の担い手になったことを明らかにした。 4.復興期の通信工業に関する資料調査を、東京大学経済学部図書館などを中心に進め、多くの企業史料を収集し、電波兵器産業から民需産業への転換を明らかにした。 5.韓国の国家記録院、国立中央図書館、国史編纂委員会、ソウル大学校図書館、延世大学校図書館を中心に資料調査を行い、戦後韓国経済に関する資料を収集するとともに、米軍政下の韓国経済の運営や戦後食料調達の実態について分析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個々の研究計画は概ね着実に進めた。日韓の占領期研究者の成果の交流を基に、2023年9月に韓国全羅南道順天大学校を会場に、韓国産業史研究会との共催でシンポジウムを開催した。このため、予稿集を作成した。 山崎は、①物資需給計画とその成果、②冷戦と戦後改革の相克、とりわけ独占禁止政策と配給統制厳格化の相反、③米本国の冷戦戦略と物資需給計画の対応関係が重要であること、④冷戦と対日賠償軽減が、復興に多大な影響を持ったこと、⑤1948年度EROA予算の審議が始まるころから重要資源輸入が急増し、ようやく経済復興が軌道に乗ったこと、⑥物資需給計画において進駐軍需要の重圧が経済復興を遅らせていたこと、⑦48年度からGHQ経済科学局が物資需給計画への介入を強めたことが、計画に混乱をもたらしたことなどを明らかにした。 林は、戦後冷戦下の韓国軍政下の中央経済委員会を中心に新たな経済行政が設置され、インフレと経済復興の推移を明らかにした。竹内は終戦直後から運輸省が鉄道輸送力の復興計画を立案していたが、資材確保がこんなため計画の具体化が大幅に遅れ、老朽化した設備を使い続けたことを明らかにした。見浪は戦後貿易制度の変遷に沿った貿易関係の拡大を検討し、戦後直後の政府間貿易が47年の制限付き民間貿易の開始、48年の全面的開始を受けて外国人バイヤーの受け入れを進め、戦後の貿易関係がアジアを中心とした戦前とは異なった点を解明した。河村は戦時の電波兵器産業であった通信工業が需要構造の劇的な変化に対応しながら、民需産業としてラジオ、電話機市場に拡大していくことを解明した。 研究協力者の呂は、戦後ミシン工業の発達を部品生産構造、輸出戦略と合わせて解明した。宣は、経済復興会議の下で労資協調が模索される過程を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降の研究予定は、以下の通りである。 ①2024年5月の社会経済史学会のパネル報告に向けて竹内、山崎、見浪、河村が準備を進めた。 ②2024年8月に第2回の日韓共同シンポジウムを開催し、研究成果の交流を図る。このため、本共同研究を各自取りまとめた原稿を持ち寄り、予稿集を作成する。 ③日韓で1次資料の発掘を基に、政策、物資輸送、貿易、主要産業の分析をさらに進め、2025年春に分担者と研究協力者の成果をまとめる。それを基に、2026年度科研費刊行助成金を申請して、26年度中に研究成果を刊行する。 ④新たな研究協力者として、丁振聲(韓国放送通信大学校)、柳尚潤(蔚山大学校)を加え、それぞれ日本の石炭鉱業の実態、米国の対韓国援助と機械設備の輸入について解明を進める。 ⑤研究代表者の山崎は、復興システムに関する論考を整理し、戦後経済の復興過程を概観する研究書を刊行すべく、2025年度科研費研究成果公開促進費に応募する。
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