研究課題/領域番号 |
23K20175
|
補助金の研究課題番号 |
20H01645 (2020-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
丸山 英樹 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (10353377)
|
研究分担者 |
永田 佳之 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (20280513)
米原 あき 東洋大学, 社会学部, 教授 (40633847)
見原 礼子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (70580786)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
|
キーワード | ESD / サステイナビリティ / 変容的学習 / ノンフォーマル教育 / 持続可能な未来 / Deep ESD / 経験学習 / 学際的アプローチ / システム思考 / スタディツアー / サステイナビリティ教育 / サステナビリティ / 大学教育 / システム変容 / PBL / 変容学習 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、4人の体制で5年の期間で、大学における「持続可能な開発のための教育(ESD)」プログラムの開発およびそのプログラムの実証的な検証を行うことである。3つの研究目的を達成するため、文献調査、国内外の訪問調査、プログラム実施のアクション・リサーチを行う。 本研究では3大学で、学習者と社会の変容を想定した「深いESD」プログラムを開発・実施し、その成果を個人および大学レベルで検証する。本研究は、社会システムの変容に必要な、21世紀の日本の教育(サブシステム)で扱うべき持続可能性を問い直し、研究成果を広く共有することで社会への波及効果が期待できるものである。
|
研究実績の概要 |
本研究は5年で大学におけるESDプログラムの開発と実証的な検証を行う。具体的には、1)すぐに役に立つか否かを問う知識と技能の道具的側面だけではなく、存在論も含めたサステイナビリティの深い問いかけを扱う教育プログラムの開発、2)学際的・経験的・浸透型という実施手法の3アプローチを検証、3)相互に関係する現実の中、小さな変化が大きな変化を生み出すことを把握できるシステム分析とプログラム評価の一部によって、個人と機関の変容を参加型評価で行う。それら目的達成のため文献調査、国内外の訪問調査、プログラム実施のアクション・リサーチを3大学で検証している。 当該年度の研究実績としては、1)開発した教育プログラムを4年にわたり実践し、中でも2)学際的アプローチと経験的アプローチについては実践の蓄積が見られた。特に、1年目に対象とした1年生が3年生となり、開発した両アプローチの実施が確立した。浸透型も進展が見られ、全機関型アプローチとして学内における連携がより見られるようになった。また3)評価は、4回のサイクル(各1年生に事前事後の質問紙調査を行う)ことと2回の長期的変容(1年生時の回答と同じ集団が3年生になった時の回答)を測定し、成果を整理している段階である。 用いる方法のうち、文献調査は着実に進んでおり、研究チーム内での密な共有がより重要となった。当該年度には、ユネスコの最新報告書を公式に翻訳することで、国際動向と日本のESDを接続させた上で、ESDの今後について理解を深めた。フィールドワークは昨年度と同様、コロナ禍下における行動制限がほぼ無くなったことで、再開した。国内外の学会などによる発表も重ねることができ、研究交流も再開された。 残されている課題は、アクション・リサーチとしての変化・変容の追求、最終報告としての知識コモンズの構築とそのプロセスの一部としての広い情報発信である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外における調査も再開され、研究協力者側もデジタルツール等に慣れた形で調査を補完できるようになった。また国際学会や研究会なども頻繁にオンライン参加が可能となり、情報収集が効率的に進んだ。本研究は存在論も扱うため、これまで同様、現地で学ぶことで見られる変容に関する調査が求められる。そのため、フィールドワークは重要であり続ける。 順調である最大の理由は、プロトタイプとしてのプログラムが過去2年で開発でき、それを確実なものとして学際的・横断的に実施することができているためである。しかも、関係者間における共有知識が蓄積されたことから、質保証の議論と検証をより追いかける方向性が支持されているためである。現地訪問を前提とする参加者主導のプログラムの開発は、コロナ禍を経た参加者同士がグローバルな共通認識を前提とできるようになり、訪問できた参加者の積極的な参画が極めてポジティブな動きを生んだ。対面式での経験をオンライン環境で継続させる、特にプログラム終了後でも内発的に持続する関係性が、各自のサステイナビリティ向上へとつながっていることが観察された。これは「オンラインでの学習環境は空間の次元が欠損しがち」という課題を克服するものであった。
|
今後の研究の推進方策 |
1)サステイナビリティの深い問いかけを扱う教育プログラムは、学際的・経験的・浸透型アプローチによって今後も運用継続する。パネル調査は困難であると思われるが、4サイクルの実践に参加した学習者に対して経年変化を追いかけることになる。第3サイクルにはシラバスを変更したため、それ以前との比較も行いたい。 2)実施アプローチについては、伝達型・参加型の展開を継続しながら、今後は浸透型・全機関型アプローチがさらに重視される。ただし、全機関型の実態を把握することは時間を要するため、最終年度のみでは把握できないリスクが残る。他方、既に関係者自身が持続可能となるウェルビーイングやケアといった心的側面と時空を扱う制度面での変化については、実践知が蓄積されていることから、教職員に焦点化した研究展開が残っている。これは当初から想定している、組織の変容を捉えることを指す。 3)参加型評価において半年に1回のサイクルに加えて、特に学際的プログラムにおいて最初の卒業生が生まれるタイミングであることから、参加学生の能力(例:サステナビリティ・ コンピテンシー)と生じた変容を把握する予定である。ただし、ESDの成果は先行研究が示すとおり高度に文脈化しているため、ナラティブを重視した整理を心がける。 4)以上のことを総括する形で、国内外の学会発表と出版物の刊行を通した情報共有を進める。挑戦的となるが、最終報告に向けてニューメディアや双方向性のある空間の活用も参加者とともに検討し、実施したいと考えている。
|