研究課題/領域番号 |
23K20201
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補助金の研究課題番号 |
20H01781 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
木村 英司 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (80214865)
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研究分担者 |
一川 誠 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (10294654)
溝上 陽子 千葉大学, 大学院情報学研究院, 教授 (40436340)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 実験系心理学 / 知覚 / 適応 / 順応 / 要約的処理 |
研究開始時の研究の概要 |
自然環境からの感覚情報は冗長で規則的なことが多く、ある対象の特徴が、周囲の、あるいは、先行する情報によって予測できることが多い。こうした環境で適応的に行動するためには、時空間的に情報を要約し活用することが重要となる。本研究では、時空間的な要約処理が、短・長期的な外界の変化の補正と知覚システムに遍在する様々な不整合の補正に活用されおり、これらの補正が適切に行われてはじめて、素早く適応的な外界認識が可能となると考える。こうした構想の下、①時空間的要約処理、②外界の知覚的安定性を維持する処理、③知覚の内的整合性を維持する処理を実験的に解明し、人の適応的知覚処理方略を体系的に理解することを目指す。
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研究実績の概要 |
知覚の内的整合性を維持する過程に関して、色欠損の見落とし現象に関して検討を進めた。この現象は、視野位置による視機能の不均一性にもかかわらず視野全体がカラフルに見えるという主観的印象と関わっており、情景画像の一部から色を取り除いても、短時間提示条件下では色欠損が頻繁に見落とされる現象を指す。情景画像の色と空間レイアウトを操作した実験の結果、情景画像を補色にすると色欠損の検出感度は低下するが、空間レイアウトを崩すと検出感度は上昇した。さらに、色欠損があるのにないと答えてしまうバイアスが、通常色でかつ空間レイアウトが崩れていない条件で一貫して確認され、情景画像で特異的に生じるバイアスがこの現象の生起に重要な役割を果たすことが確認された。 さらに、時間的再構成に関する研究を進め、オンセットとオフセットが弁別できる視聴覚刺激の開始と終了の非同期を主観的に縮小する時間的再較正は視聴覚刺激に時間的に重複する条件に限定的であること、主観的対応づけが視聴覚の時間的再較正に必要であることを見出した。直近の経験が時間長知覚に及ぼす影響について調べ、数百回程度の観察経験はその後の時間長知覚に影響しないこと、直前の判断とは逆の判断を行うという非学習的で順応的な判断傾向があることを見出した。 外界の知覚的安定性を維持する過程に関して、環境の彩度に対する順応効果を画像を用いて検証した結果、環境の色分布の偏りとテスト刺激の色の組み合わせにより彩度順応効果の大きさが異なる傾向を見出した。色コントラスト対比効果についても、周囲の色構成依存性が示された。また、分光分布が色知覚に与える影響は正常色覚より色覚異常の方が大きいことが示され、照明の配光や分光分布が物体の質感や顔の印象に対する様々な影響についても、より詳細な特性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、研究業績で述べたように、知覚の内的整合性を維持する過程に関する研究と外界の知覚的安定性を維持する過程に関する研究を進め、国内学会や国際学会における研究発表を行い、国際学術誌に論文を掲載することができた。研究業績欄の文字数制限により触れることができなかったが、時空間的な要約処理過程に関する研究に関しても、2022年度に開催したシンポジウムの講演原稿が国内学術誌に掲載されたほか、複数顔の平均表情判断に顔色が及ぼす効果に関する研究成果を国際学会にて発表することができた。以上から総合的に判断すると、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は本研究の最終年度であるが、これまでを振り返ると、本研究で課題として挙げた3つの課題、すなわち、①時空間的要約処理の解明、②外界の知覚的安定性を維持する過程(外界の短・長期的変化を効率よく検出し補正する処理とその基礎にある順応過程)の解明、③知覚の内的整合性を維持する過程(各感覚システム内に見られる不均一性や感覚様相間の不協応を補正する処理)の解明のそれぞれに関して、これまでおおむね順調に進展し、成果をあげることができている。2024年度は特に、記憶色と物体の色知覚に関する研究や環境の色分布に対する彩度順応の効果の検討、さらには、先行する感覚情報による異なる時間スケールでの履歴効果などに関して検討を進めるとともに、最終年度の課題として、これまでの研究成果の検討をさらに深め、学会および海外学術誌に発表していく予定である。
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