研究課題/領域番号 |
23K20203
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補助金の研究課題番号 |
20H01791 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 秀司 東京大学, 大学院数理科学研究科, 名誉教授 (50153804)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | モチーフ理論 / モチフィックコホモロジー / 相互層 |
研究開始時の研究の概要 |
モチーフ理論とは,モチーフの圏を定義し,そこからホモロジー代数的あるいはホモトピー代数的に代数多様体にたいする様々な不変量を生み出す力を持つ理論である.世界的に非常に活発な研究が為されている分野である。Voevodskyはモチーフ理論に大きな進展をもたらしその帰結としてBeilinson-Lichtenbaum予想を解決しフィールズ賞を授与されている. しかし,Voevodskyのモチーフ理論にはホモトピー不変性という本質的制約が課せられており完全に満足できるものではない.当該研究の目的は,Voevodskyのモチーフ理論を包含するより普遍的なモチーフ理論を構築することである.
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研究実績の概要 |
モチーフの理論は数論幾何学,代数幾何学における重要な研究対象である.これに大きな進展をもたらしたVoevodskyのモチーフ理論はアフィン直線にたいするホモトピー不変性が理論の前提になっている.しかし代数幾何学の様々な基本的な不変量(例えば微分形式の層のコホモロジー)はホモトピー不変性を満たさない.当該研究では,Voevodskyのモチーフ理論を拡張し,ホモトピー不変でない不変量をも包括する新たなモチーフの理論を構築するためにVoevodskyの理論で中核的役割をはたす「ホモトピー不変性層」を拡張する「相互層」を新たに導入した.一方, Voevodskyの理論を拡張する別のアプローチとして,Binda, Park, Ostvaerによる対数的モチーフの三角圏 lDM の構築がある.本年度の成果は,相互層のNisnevichコホモロジーが対数的モチーフの三角圏lDMにおいて表現可能であることを示し,相互層の理論と対数的モチーフ理論の関係を明らかにしたことである.これを詳しく説明する. lSmを体k上有限型な対数的に滑らかな対数的スキームの圏とし,Shv(lSm)をlSm上のtransfer構造を持つNisnevich層のなす圏とする.BindaとMerici はlDM上に自然なt-構造を定義し,そのheartがShv(lSm)のある充満部分圏lCIに一致することを証明した.本年度の成果は以下の定理である.RSCを相互層のなす圏とするとき充満忠実な完全関手 Log : RSC → lCI が存在する.さらに相互層Fとk上の滑らかなスキームXにたいし同型 H^i_{Nis} (X,F) = Hom_(lDM ) (M(X,triv),Log(F)[i]) が成立する.ここで左辺はXのNisnevichkホモロジーで,(X,triv)はXに自明な対数構造を与えた対数スキームである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
数論幾何学,代数幾何学における重要な研究対象であるモチーフの理論に大きな進展をもたらしたVoevodskyのモチーフ理論を拡張する二つの理論,相互層の理論および対数的モチーフの理論の関係を明らかにした.具体的には,相互層のなす圏から対数的モチーフの三角圏 への自然な関手を定義し,それを用いて相互層のNisnevichコホモロジーが対数的モチーフの三角圏において表現可能であることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
Voevodskyのモチーフ理論を精密化するモジュラス付きモチーフ理論を構築する.その中心的なアイデアは,滑らかな多様体をモジュラス対に置き換えVoevodskyのモチーフ理論を再構成することである.ここでモジュラス対とは,スキームXとX上の有効カルティエ因子Dとの対(X,D)でX-Dが滑らかであるようなものである.さらにホモトピー不変性の代替として,キューブ不変性を用いる.ここでキューブとは射影直線と無限遠点の対である.滑らかな多様体にたいする相互層Fは,適切な''分岐フィルトレーション''を与えることにより,モジュラス対にたいするキューブ不変層に拡張される.さらに,相互層のコホモロジーにたいして示した純粋性定理,射影束公式と滑らかなブローアップ公式およびGysin系列の存在定理はキューブ不変層のコホモロジーに格上げすることが期待される.さらに,キューブ不変層のNisnevichコホモロジーが,Kahn-Miyazaki-Saito-Yamazakiが導入したモジュラス付きモチーフの三角圏において表現可能であることを示すことが目標である.これはVoevodskyが示した「ホモトピー不変層のNisnevichコホモロジーが,Voevodskyが導入したモチーフの三角圏において表現可能である」という事実の一般化である.
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