研究課題/領域番号 |
23K20222
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補助金の研究課題番号 |
20H01814 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
溝口 紀子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00251570)
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研究分担者 |
中西 賢次 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (40322200)
高田 了 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (50713236)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | blowup / chemotaxis / 爆発 / Hamilton-Jacobi / 走化性方程式系 / Keller-Segel / 爆発現象 / Keller-Segel系 |
研究開始時の研究の概要 |
走化性方程式系は生物学におけるバクテリアの集中現象を定式化したものである。また、高次元で拡散項が退化している場合は宇宙物理学への応用がある。特異性が現れる現象は数学的には有限時間での解の爆発と定義される。本研究では、それらの方程式に対して爆発後の解の弱解としての延長について研究する。また、爆発する解のエネルギーは時間が爆発時刻に近づくときにどのように変化するかについて研究する。さらに解が有限時間で爆発するような特徴をもつ他の方程式との類似点や相違点を考察することにより解の爆発が起こるメカニズムを研究する。
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研究実績の概要 |
非線形放物型方程式において最初に爆発問題が研究された藤田方程式ではタイプIの爆発とタイプIIの爆発が共存し、タイプIの爆発の方が数学的な考察が容易である。しかしながら、2次元の走化性方程式系ではタイプIIの爆発しか起こらない。粘性をもHamilton-Jacobi方程式も走化性方程式系と同様に非線形項に勾配を含み、タイプIIの爆発しか起こらない。研究代表者は、この類似性の観点から、粘性をもつHamilton-Jacobi方程式の爆発解や爆発後に延長された弱解の挙動について研究した。空間次元が1次元の場合に、代数学や幾何学の概念である組み紐群を応用して爆発と境界条件回復のレイトを完全に分類し、分類された各々の場合に解の挙動を決定した。非常に長い論文になったのでプレプリントとしてArXivに投稿し(arXiv:2110.12934)、現在論文としての投稿方法を検討している。 研究分担者の中西賢次氏は、4次元のZakharov系について解の大域挙動を調べ、基底状態の成すポテンシャル井戸の内側エネルギー領域において解の大域存在を示した。消散性非線形Klein-Gordon方程式の解を調べ、反発性2ソリトンの近傍にある解の挙動を5通りに分類する不変多様体を構成した。Trudinger-Moser不等式の最大化元の存在・非存在の境界となる臨界増大度について調べ、以前の2次元の結果を一般次元に拡張した。 研究分担者の高田了氏は、3次元層状領域におけるCoriolis力付きNavier-Stokes方程式の初期値問題を考察し、スケール臨界なSobolev正則性をもつ初期速度場に対して、回転速度が十分大きい場合の時間大域的適切性を証明した。また回転速度を無限大とする特異極限において、同方程式の時間大域解が2次元Navier-Stokes方程式の時間大域解に収束することを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの感染状況はだんだん改善されて来てはいたが、変異株の出現などに合わせて海外への渡航や海外からの日本への入国規制がどのように変わるのか予想するのが難しく、長期的な視点で海外出張や海外からの招聘を予定組み込むことが困難となった。そのため、当初の計画方法に従って研究を進めることはできなかったのが、より個々の研究に注力することと、オンライン上でのツールを活用することによって当初目指していた結果はおおむね達成することができた。 走化性方程式系と類似した性質を有するviscous Hamilton-Jacobi方程式の解の爆発や境界条件回復について解の挙動を1次元の場合に詳細に研究しすべての挙動を完全に分類し特定した。これらは2次元以上における爆発解やその後に延長された弱解の挙動の研究の基盤になると考えられ、今後の研究に活かしたい。また、この結果を証明する過程では代数学や幾何学で用いられる組み紐群を応用したので、代数学や幾何学との関連においても期待される。全体的にみて、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2次元走化性方程式系やviscous Hamilton-Jacobi方程式ではタイプIIの爆発しか起こらない。非線形偏微分方程式では、非線形項の形が異なる場合や、非線形項の形は同じで方程式の型が異なる場合にもタイプIIの爆発が起こることが報告されている。一般的に、タイプIの爆発よりタイプIIの爆発の方が複雑なので数学的な扱いが難しく、研究の歴史もタイプIの方が古くタイプIIの爆発は比較的新しい。走化性方程式系に類似した性質をもつ放物型方程式との関連だけでなく視野を広げて、他の方程式や代数学、幾何学など数学の他の分野における理論や手法も取り込むことによって研究の進展を図る。本研究では、意図的に異なる方程式の研究者を研究分担者として研究組織を構成しているが、研究組織内での共同研究だけでなく、結果の予測やモデルのシミュレーションが必要になれば数値解析の専門家にも協力してもらう。また、走化性方程式系やviscous Hamilton-Jacobi方程式は、生物学、宇宙物理学、金融工学などへの応用も期待される研究対象なので、応用分野の研究者との交流も試みる。
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